Click Here
【Click Here!】
知っておきたいコンピューターウイルスの知識


【第1回】

コンピューターウイルスの歴史
被害は身近な場所で起きている

(98/11/27)

 最近、テレビや新聞などでもコンピューターウイルスの話題が扱われるようになり、「コンピューターウイルス」という言葉を耳にする機会が増えた。目に見えないだけに信じられないという人も多いが、パソコンを利用していればいつ被害にあっても不思議ではない。報道やデマなどに惑わされず情報収集と冷静な対処が必要とされる。

 第1回目では、コンピューターウイルス被害の歴史的な実例について紹介する。

ネットワーク経由で被害が拡大

 約10年前、現在のインターネットの基となったアーパネットで、「ネットワークワーム」と呼ばれるネットワークを徘徊するコンピューターウイルスが、日本を含む世界中のUNIXマシン約6,000台に被害を与えた。アーパネットは大学や研究所など信用された組織で接続されていたことから、セキュリティ対策が遅れ、セキュリティホールを悪用された。この事件からセキュリティの危険性への関心が高まり、セキュリティホールが発見されると常にその対策方法が伝えられるようになり、現在では「ネットワークワーム」が発生しても当時のような被害がおきることはない。

 日本で最初にコンピューターウイルスが騒がれたのは'88年のことで、大手パソコン通信を介して広まった。これが一番最初に新聞に取り上げられた事件と言われている。当時はWindowsはなく一般的に使われていたMS-DOSのシステムファイルを書き換えるプログラムをメールで送るという方法で被害が広がっていった。書き換えられたMS-DOS上でパソコン通信を行うとIDとパスワードが盗まれるという仕組みで、犯人は盗んだIDとパスワードを利用して再びコンピューターウイルスを配布していた。

雑誌添付のフロッピーからも感染事例が

 店頭のパソコンや書籍、雑誌にコンピューターウイルスが混入していればたちまち被害は広がる。実際に書籍や雑誌添付のフロッピーやパソコンにコンピューターウイルスが混入している状態で販売されたことがあった。

 '92年7月と'93年8月に、書店に並べられた書籍・雑誌の付録フロッピーがコンピューターウイルスに感染していた例がある。これらは別々の出版社のものであるが、どちらも編集部の中で感染したことが調査の結果でわかっている。'92年の事件では、出版社は被害を防ごうと新聞や雑誌などで告知をしたが、興味本意で雑誌を買う人によって逆効果を招いてしまった。'93年の事件では前例を元に店頭の雑誌を回収後、新聞や雑誌で告知を行ったため大きな被害になることはなかった。

 また、'94年7月には大手パソコンメーカーが出荷したパソコンにコンピューターウイルスが感染していたという事件が起きた。調査の結果、工場で約3週間製造した291台のパソコンが感染していたことが判明し、駆除サービスとリコールを行い被害はそれほど大きくならずに済んだ。

被害は身近な場所で起きている

 ウイルス被害届出の受付機関である情報処理振興事業協会(IPA)の届出統計資料を調べると被害の感染経路の割合がわかる。'96年、'97年、'98年の10月までの順に、フロッピーなどの媒体による感染はそれぞれ389件、783件、563件。ネットワークによる感染はそれぞれ60件、826件、780件となっている。'96年から'98年にかけてLANやインターネットの普及によりネットワークによる感染が増え、フロッピーなどの媒体の利用が減少してきているのにもかかわらず被害は決して減っているとはいえない。

 現在、パソコンメーカーや出版社などは店頭だけでなくインターネットでソフトを配布、販売するようになってきた。物流やネットワークによる感染は被害が広範囲に拡大するため細心の注意を払っており混入したまま配布、販売されることは少なくなってきている。また、もし感染していたとしてもすぐに告知が行われる。

 そのような大きな被害についてはテレビや新聞でも報道されることがあるのですぐに気づくが、数多く起きているのにも関わらず、フロッピーや電子メールなどでの個人的なやりとりによる小さな感染はあまり報道されない。被害の一部だけを大きく取り上げる興味本位な報道やデマも多く見受けられ、本当に起こりうる身近な被害に関してはあまり情報が伝わってこないというのが現状だ。それゆえに、パソコンユーザーは情報に惑わされず冷静に対処をする必要性に迫られているといえる。

□Information-technology SEcurity Center, IPA
http://www.ipa.go.jp/SECURITY/index-j.html

(山崎 真裕)

トップページへ
知っておきたいコンピューターウイルスの知識 INDEX


Copyright(C), 1996-1998 Impress Corporation.
編集部への連絡は mado-no-mori-info@impress.co.jp まで