【第32回】
「IPSX」
ダイヤルアップ接続のPCをWebサーバーに！ 時間限定公開運営もラクチン！
（99/04/26）
ダイヤルアップと常時接続環境で何が一番違うかといえば、WebやFTPのサーバーを自前で用意できないことがあげられるだろう。プロバイダーの提供しているサーバーを利用してもいいのだが、CGIや容量の制限などであまり自由度がない。また公開したいファイルをいちいちサーバーにアップロードしなければならない。最近ではフリーやシェアウェアのWebサーバーソフトもいくつかあるが、ダイヤルアップ接続ではIPアドレスやホスト名が接続のたびに異なり、外からアクセスしてもらうには接続のたびにIPアドレスやマシン名を公開しなければならない。それを手で書いて毎回公開するのはさすがに限度がある。
ダイヤルアップでも自分が今使っているPCをサーバーにして、ディスク容量制限を気にすることなく、CGIやSSIも自由に使ってみたい…。今回はそんな願いをかなえてくれるソフトを紹介しよう。
IPアドレス情報を自動でWeb公開してくれるソフト
「Internet Protocol Status Transfer（IPSX）」はダイヤルアップ環境でWebサーバーを提供できるようにする、Windows 95/98およびNT 4.0用のソフトだ。といってもプロバイダー提供のWebサーバーがまったく必要でないわけではない。プロバイダーのWebサーバー上に入口となるページを置いておき、ダイヤルアップ接続のたびにIPアドレス情報の書き込まれたHTMLを自動で（または手動で）FTP転送する。入口ページ経由でダイヤルアップ接続されたPCにアクセスさせるという仕掛けだ。アクセスする方はサーバー側のIPアドレス変更を何も気にする必要はない。またダイヤルアップ接続していない時間帯には、「テレホタイムにお越し下さい」といったお断りメッセージを入口ページに表示させることも簡単にできる。
このソフトは接続を仲介するだけなので、別途Webサーバーソフトを自分のPCに常駐させておく必要がある。窓の杜のライブラリにもいくつか掲載されているし、Microsoftの「パーソナルWebサーバー」を用意してもいいだろう。OSR2以降のWindows 95やWindows 98ならすでにシステムに装備されているので、ネットワークのプロパティで「パーソナルWebサーバー」というサービスを追加するだけだ。「パーソナルWebサーバー」の設定はインストール後にコントロールパネルから行う。
この「IPSX」のいいところは、最初に設定してしまえばあとはほとんどメンテ要らずという点だろう。30秒など任意の時間間隔でRASを監視して、接続されていれば入口ページを自動的に転送し、外部からのアクセスを可能にしてくれる。「IPSX」をスタートアップに入れておけば、普段は何も気にしなくていいわけだ。ヘルプがよくできていて、設定も難しくはない。けっこうアッサリと、拍子抜けするくらい簡単に自分のマシンをWebサーバーとして公開できてしまう。
ダイヤルアップ用だからこそ問題となるその用途
発想は十分に面白く、完成度もなかなかの「IPSX」なのだが、最大の問題は逆にダイヤルアップ環境のためのソフトだということかもしれない。
ダイヤルアップ接続の場合、現状では回線速度が限られている。せいぜいISDNのMP接続128Kbが上限だろう。ほとんどのユーザーは33.6～64Kbpsだと思われる。そんな回線条件で、容量無制限のディスクスペースを必要とするような巨大なファイル群をWebに公開するのは、かなり無謀とも言える。たとえばこのソフトを使って64Kbpsで接続されたマシンを公開すれば、たった2人の33.6Kbpsモデムユーザーからの同時アクセスを受けるだけで、回線帯域をほぼ食われてしまう計算になる（転送速度が落ちるだけで、実際はもっと多数の同時接続が可能）。
したがって、この「IPSX」は個人ホームページのメインスペース用に使うよりは、あまりアクセスが期待できないわりに容量のかさばるファイルを公開するためとか、一般には非公開のURLなどから仲間内にだけファイルを公開したいような場合に使う程度が良さそうだ。つまりこのソフトはそのコンセプト、使用目的そのものが鍵と言えるだろう。
【著作権者】麻衣里沙織 /Circle CRT 氏
【ソフト種別】フリーソフト（要メール）
【バージョン】1.00.195 Release 1（99/04/10）
□ARTiCE - アルティス -
http://www.freedom.jp.org/artice/
□窓の杜 - ダイヤルアップ支援
http://www.forest.impress.co.jp/dialup.html#ipsx
（ひぐち たかし）
