【第18回】

当たるもソフト当たらぬもソフト
~占い系ソフトに期待したいこと~

(01/07/09)

実は占い好きでして…

 世紀末や社会不安になると占いが流行するという説を昔聞いたことがある。21世紀が明けてすでに半年、確かに去年までの占いブームはやや落ち着いてきたように見えるけれど、一方で景気は徐々に悪化しているからなのか、占い好きの人はぼくの周りにもまだまだ多い。

 かくいうぼくも占い好きだった母の影響からか、雑誌の占いページは必ず読むほうだし、テレビでは“人は占いを信じて旅をすれば幸せになれるか?”というテーマで世界中の占い師を渡り歩きながら旅を続ける女の子をレポートするコーナーがある番組を、毎週楽しみに見ている。もちろん占い系のオンラインソフトも、新しいものを見つけるととりあえず試したくなるほうだ。ただしぼくの場合は、占い結果を鵜呑みに信じるというよりは、むしろ当たり外れを検証して楽しむといった感じ。これは何事も自分で確かめてみないと気が済まない理系人間だから?

 そこで今回は、そんな占い関連のソフトについて日頃思っていることを、あれこれと書いてみようと思う。肩肘張らずに、ちょっとした息抜きにでも読んでもらえれば幸いだ。

奇妙な取り合わせ?

 さて、占いのように不確定な、いわば“オカルト”に近いものと、計算づくで正確を期するべきコンピューターとを結びつけるというのは、なにか奇妙な取り合わせだと感じている人はいないだろうか。“占いソフト”と書くよりも、“コンピューター占い”と書いたほうが、言わんとしているイメージにピンと来るかもしれない。その昔、学園祭やゲームセンターなどで見かけた1回数百円の“コンピューター占い”。あれを初めて見たとき、名前の響きにどことなくうさん臭いものを感じながらも、『コンピューターで占うんだからきっとよく当たるはず』と試してみた覚えがあるのは、ぼくだけではないだろう。

 そのときの占い結果は、まぁ皆さんが経験した通り。『さすがコンピューター! ものすごく当たってる! スゴイ!』などということは全然なくて、少なくともぼくの経験では『そう言われればそうかも?』といった程度の印象にとどまった。むしろ拍子抜けだったように思う。ではいったい、正確な計算結果を出すコンピューターを使って不確定な未来を予言する占いソフトとは、どういう原理になっているのだろうか。

占いの基本原理

 コンピューターを使うか使わないかによらず、占いには大きく分けて3つの系統があるようだ。それは、乱数など偶発的なものをもとにする“偶然系”の占い、天文学などにもとづく計算や統計処理を行う“計算系”の占い、そして心理学をもとにした“心理系”の占いの3つだ。

 “偶然系”の占いとは、サイコロを振るときのように、占う人が偶発的に起こした事象や選択した事柄を、運命として解釈するというもの。さらに統計的な分析や直感(インスピレーション)を加えることも多い。これに属する占いには、おみくじや易、トランプやタロットといったカード占いなどが挙げられる。あらかじめ文章や意味ある絵を描いた多数の紙片等を混ぜた中から1つ、ないしは複数を選んで、その組み合わせで占うというのが基本だ。コンピューターを使う場合は、乱数を利用して札やカードを選び出すことになる。そのため、同じ占いを繰り返しても全く同じ結果にはならないのがポイントで、星座のようなグループ分けは通常行わず、100人いれば100通りの占い結果が出る。

 一方、占う人物の生年月日や出生時間などから、惑星や星座の位置など天体の正確な配置を天文学に準じる計算で求め、現在や将来の天体配置と比較して吉凶を占うのが“計算系”に属する占いだ。これには西洋占星術や四柱推命が含まれる。昨年ブームになった動物占いや、根強い人気の六星占術、最近では0学占いなどもこの中に入る。周期的なパターンで人間をグループ分けし、統計による共通点を見つけて判断するのが特徴で、姓名判断や血液型占いもこの“計算系”に含めていいだろう。出生日時や名前の画数といった不変のものをもとにするため、同じ事を何度占っても同じ結果になるのがポイント。ただし解釈の仕方が占い師やソフトによって異なるため、たとえば同じ西洋占星術でも、載っている雑誌によって全然違う内容が書いてあるといったことはしばしばあるようだ。

 そして最後に“心理系”の占いは、ある状況に置かれた場合にとる行動や、提示された選択肢の選択順序によって、心理学や行動学の見地からその人の性格や将来とりやすい行動などを判断するというもの。これに属するのは、いわゆる心理テストの類や○○度チェック、エゴグラムやエニアグラム、そして回転寿司占いなどがある。“心理系”の占いは、同じ人物が同じ占いを行っても、機嫌のいいときと悪いときなど本人の精神状態によって結果が大きく変化する場合もあるのがポイントだ。

占いにおけるパソコンの役割は?

 こうしてみると、コンピューターがその占いのどの部分にどれだけ関わっているのかという“貢献度”によって、占いソフトの価値も変わってくるのではないかと思えてくる。たとえばサイコロを振って最初に1の目が出ればその日はラッキー、という占いがあるとしよう。このとき、「サイコロを振る」という部分をわざわざコンピュータープログラムにしたとしても、それだけでこのプログラムを“コンピューター占い”と称していいものかどうか。なにもコンピューターでやらなくても、その辺にあるサイコロを手で放り投げたほうがよっぽど簡単、というのではコンピューターを使う意義があまりない。

 “偶然系”の占いソフトの場合、原理はサイコロと同じようなものなのだから、コンピューターが貢献する“メインエンジン”は、一見そのランダム性の提供にほかならないように思える。しかし、おみくじにしろ易にしろタロットにしろ、おみくじならその札を、易ならその卦を、タロットならそのスプレッドを選ぶのが、まったくの偶然性によるものではなく、“運命”によって人間の“潜在意識”や“第六感”が必然的にそれを選ばせたと考えるのが、この系統の占いで最もオカルト的で重要な部分になるのだろう。したがって、そういった“潜在意識”をユーザーから効果的に引き出すような、おどろおどろしい神秘的な演出なども、この手の占いソフトには必要かつ重要な要素ではないかと思う。

 一方“計算系”の占いソフトでは、まさに計算することがコンピューターの仕事だ。人間の頭で行えば多大な時間と労力が必要な計算を、コンピューターがなりかわって行うのだから、“コンピューター占い”には最も適しているように思える。しかし、最近の高速なCPUを積んだパソコンを使えば、そういった高度な計算が一瞬で終わってしまい、結果表示はあっけないものになりがちだ。特に、計算が複雑になればなるほど、ソフトの作者は計算ロジックに力を入れすぎるあまり、占いらしい雰囲気を感じさせる演出の部分まで手が回っていないようなソフトが現実に多いように思う。それではせっかくの占いも、ありがたみが半減してしまう。計算系の占いにも、その結果を効果的に見せるという面でパソコンソフトとしての役割は大きいはずだろう。

 “心理系”ソフトの場合、ランダム性や緻密な計算などはほとんど必要がない。占いエンジンというべき部分は別途確立された心理学であり、コンピューターが行っているのは単に適切な選択肢をユーザーに提示して、条件分岐によってグループ化しているに過ぎない。もちろん質問項目の回答に点数をつけて、点数の合計で判断するような場合もあるが、それもせいぜい単純な四則計算でしかない。そのため“コンピューター占い”という言葉とは最も程遠い系統の占いソフトと言っていいだろう。凝るとすれば、やはり結果までの導き方、見せ方ということになるだろうか。

凝った演出がカギ

 従っていずれの占い系統にせよ、占いソフトを使ってみてユーザーが面白く感じるのは、その占いの本質である的中率もさることながら、占い結果を出すまでの過程や、結果の見せ方に十分な演出を行うということが、不可欠なのではないかと思うのだ。

 占い好きのぼくはこれまで数多くのいろんな占い系オンラインソフトを試してきたけれど、オカルトっぽいおどろおどろしさや、占いらしい雰囲気、そうした演出を含めて『これはスゴイ!』と思ったソフトは、実は皆無といっていいほど出会ったことがない。高価な市販のパッケージソフトには若干あるのだけれど、オンラインソフトでは意外と演出がおろそかにされているというか、『あららら』と思ってしまうものがほとんどなのは残念に思っている。

 例えば雑誌の占いページなどを見ても、随所にそれっぽいイラストが描いてあるものだし、タロット占いの解説本などでも、タロット占いではインスピレーションが命だからか、表紙や挿絵などでかなり重厚厳粛な雰囲気をかもしだすものが使われている。オンラインソフトにおいても、そうした占いらしい雰囲気を盛り上げる演出というのがもっと重要視されていいと思うのだが…。

占いはエンターテインメント!?

 まぁ、占いを信じるか信じないかは人それぞれであって、“当たるも八卦当たらぬも八卦”という古い諺もある。当たったり当たらなかったりするからこそ占いは面白いのであって、これがもし100パーセント的中するような占いがあったとしたら、ぼくは逆に怖くて気軽にできなくなってしまうだろう。そういう意味でも、占いは一種の国民的な娯楽、エンターテインメントであって、これからの占いソフトには的中率よりも、もっとエンターテインメント性が盛り込まれてほしいと思う今日この頃のぼくだったりする。

 といったところで今回のよもやま話は終わることにしよう。

(ひぐち たかし)

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