【第143回】
SFアドベンチャー「Anachronox」
退廃した未来社会で繰り広げられるサスペンス
(01/08/08)
映画『ブレードランナー』が描いた未来は衝撃的だった。P.K.ディックの原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』があればこその作品だが、しかしあの映像は小説以上に強い衝撃を与えたと思う。暗くよどんだ空。しとしとと振り続ける酸性雨。科学技術はたしかに進歩しているのだが、社会は退廃し、濃い絶望感がただよい、他のSFが描く明るい未来とは全然違っていた。今回紹介する「Anachronox」の世界観も、どことなく『プレードランナー』に似ている。たしかに科学は進んでいるのだが、人々はあまり幸せではない。科学の進歩はよいことばかりではなく、新しい犯罪や社会不安を産む。光があれば、また影も生まれるのだ。
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難易度は3段階。謎解き中心で楽しみたいのなら“Realy Easy”でもよい |
ホログラムアシスタントの“Fatima”。ここでは操作方法を教えてくれる |
“Whitendon”での定宿“Feirweather Inn”。ここを拠点に冒険を始めよう |
未来都市を舞台に繰り広げられるアドベンチャー
「Anachronox(アナクロノックス)」というタイトルは、「anachronism(アナクロニズム=時代錯誤)」を元にした造語のようだ。どのような意図がこめられているのかは、プレイを続けるうちに見えてくるに違いない。ゲームの舞台となるのは、遥か未来。人類は未知のエイリアンが残した超技術“ミステック”を発見し、それを使って宇宙を自由に移動できるようになった。その移動の中心となっているのが、「Anachronox」と呼ばれる空中浮遊都市。しかしここは移動の中心であるととともに、犯罪や社会的災厄の中心でもあった。私立探偵を営む主人公“Sylvester Boots”はこのすさんだ世界で犯罪者を追い、また失踪した恋人を追って冒険を続ける。
背景設定や情況についてはイマイチはっきりとしないところもあるのだが、とにかく主人公は私立探偵で、依頼された仕事を解決していくうちに、自分自身の目的に近づくことができるらしい。ともかくプレイを始めてみよう。
選べる難易度は3段階
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市長と会談。尋ねられたことには正直に応えよう。ちょっとプーチン氏に似てる!? |
デモ版を起動すると、メインメニューが表示される。最初に起動した際はローレゾ(640×480ドット)のウィンドウ表示なので、まずオプション設定で好みの表示に切り替えよう。臨場感たっぷりでプレイしたいのなら、やはりハイレゾ(1,280×1,024ドット)フルスクリーンがオススメだ。変更後、ゲームを再起動すると設定が有効になる。
続いて難易度を選ぶ。“Realy Easy”“Normal”“Way Too Hard”の3レベルが用意されているが、これは戦闘の厳しさを変えるもので、謎解きには直接関係がない。“Normal”がよいと思うが、戦闘を避け謎解きに集中したいのなら、“Realy Easy”でもいいだろう。難易度を指定すると自動的にプレイが始まる。ホログラムアシスタント“Fatima”によるガイダンスが表示されるので、最後までひととおり確認してもらいたい。ちなみに、操作方法は下記のとおりだ。
移動 | カーソルキー |
視点・移動方向の変更 | マウス |
ジャンプ | [Q]キー |
付近の調査 | [L]キー |
会話 | 話したい相手をクリック |
ピッキング | [Ctrl]キー |
目的の確認 | [F1]キー |
所持品一覧 | [F5]キー |
ピッキングについては後でくわしく説明する。プレイ中、次に何をすればいいかわからなくなってしまった場合は、[F1]キーを押すと課題の一覧が表示される。成すべきこと、行くべき場所について、細かくチェックするようにしよう。
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ピッキングで扉を開ける。35秒以内に3つのピンを合わせなければならない
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誘拐事件の真相を暴け!!
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“Ring-Dwellers”というのは惑星の軌道上に浮かぶ「Anachronox」のことなのか? |
ここでのミッションは、まず街の中を探索し、ここ“Whitendon”での定宿となる“Feirweather Inn”を探すこと。続いて、街のどこかにある市長の執務室を訪れて、市長の“Bennings”と面会しよう。素性やポリシーについていくつか質問されるが、訊かれたことには正直に答えたほうがいい。自分が探偵であることを説明すると、市長から「誘拐された子供を助け出してほしい」と仕事を頼まれるはずだ。市民と会話して情報を集めたのち、誘拐された子供の父親“Howard”の家を訪ねる。ここでは、その後重要になる戦闘用のスキルが手に入るので、見逃さないように。
“Whitendon”はあまり広くはないが、上下に道がある立体構造になっている。街というより、中世ヨーロッパの城塞都市のような場所だ。あちこちに通路や路地、扉があるので、迷わないよう注意しよう。また表示されるメッセージの中には、1度しか表示されないものもある。重要な情報を見逃してしまわないよう、メッセージにも注意してほしい。
ピッキングを使ってカギをこじ開ける
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息子を誘拐されたHoward夫妻。いったいなぜ幼い子供がさらわれたのだろう? |
このゲームの、文字どおり“カギ”になるピッキングについて説明しておこう。主人公は私立探偵という設定なので、カギをこじ開ける技術、いわゆるピッキングのスキルを持っている。マップの中には何カ所かカギが掛かった扉やチェストが用意されていて、先へ進むためにはそれらをこじ開けなくてはならない。扉を開けようとしたときに「Seems interesting.」というメッセージが表示されたら、[Ctrl]キーを押しながら扉をクリックする。
ピッキングモードでは、シリンダー内部の反応を確かめながら、1本ずつピンをあわせていく。ピンの部分をクリックすると“手ごたえ”が棒グラフで表示されるので、それを身ながら数字を合わせていく。ピンは3~5本もあるため、30秒そこそこの制限時間ですべてのピンを合わせるのは大変だ。しかもやり直すたびにピンの組み合わせは変わってしまうので、前回トライしたときの数字を覚えていても役に立たない。運もあるが、何度か繰り返すうちに自然にカンがつかめるようになるので、あきらめずに練習してみよう。
アドベンチャーゲームとしては一級なのだが…
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子供部屋を調べる。壁に貼られた絵が痛々しい |
評価が難しい作品だ。このデモ版を試した範囲では、ゲーム全体のスケールやバックストーリーがピンと来なかった。たしかにSF的なテイストはあるものの、デモ版の舞台となっている惑星は2~3世紀前のヨーロッパのようだし、「誘拐された子供を探す」というミッションもあまりSF的ではない。これはこれで楽しめそうだが、宇宙を又にかけた壮大な設定が、いまひとつ肌で感じられなかったのは残念だ。しかし映像や音響はすばらしく、街や建物の内部も丁寧に造られている。アドベンチャーゲームとしては、文句なく一級の仕上がりだろう。延々と続く英語のメッセージがつらいが、映像や視点の変化を楽しむためだけにプレイするのもアリかもしれない。
宇宙を旅しながら孤独な冒険は続く
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[F5]キーで装備を確認。自動的に最適な装備にしてくれる |
デモ版では、極寒の街“Whitendon”でのシナリオをプレイすることができる。しかしここでの出来事は、「Anachronox」全体のほんの一部で、本編のストーリーにはあまり関係がないようだ。映像と操作性を見せるために用意された、文字どおり、デモンストレーション用のシナリオなのだろう。製品版では、プレイヤーは私立探偵シルヴェスター・ブーツとして様々な街や惑星を旅しながら、失踪した恋人や犯罪者を追って冒険を続けることになる。またミニゲームもいくつか用意されていて、本編の流れとは別に楽しめるようだ。
製品版は現在すでに米国で発売されているが、日本国内での販売や移植についてはアナウンスされていない。
(bacteriademo2.zip、57.4MB、ゲームデモ)
□「Anachronox」のホームページ
http://www.eidosinteractive.com/games/info.html?gmid=6
□「Anachronox」のダウンロードページ
http://www.3dfiles.com/games/anachronox.shtml
(駒沢 丈治)
Copyright Eidos Interactive Ltd 2000.