ワールドピース＆ピース

　魔女と人間が対立する世界を舞台にした長編RPG。確率制御による連続行動が肝となる独自性の高いコマンドバトル“プログレッションバトル”をはじめ3つの戦闘システムを備えているのが特徴。また、公称プレイ時間は約35～50時間とされており、主人公の魔女トレスをはじめ、二十名を越える登場人物達による重厚なドラマも見所となっている。

　メインの戦闘システムとなるプログレッションバトルは、味方と敵が交互に行動するコマンド選択型。ポイントは、さまざまな条件によって“プログレッション”と呼ばれる連続行動が発生し、1ターンに最大5回まで追加で行動できることだ。

　1回の行動は、トレスほか3人のパーティメンバーから行動するキャラクターを選び、通常攻撃やキャラクターごとの魔法・特技、防御といったコマンドを選択して行う（道具の使用などキャラクターを選ばない行動もある）。このとき選択した行動に応じた確率でプログレッションの発動判定が行われ、発動すれば改めてキャラクターを選んで再行動が可能。さらにこの際、連続行動の回数に応じてステータスにプラス補正が付く。

　プログレッションの発動率は連続行動の回数を重ねるたびに落ちていくため徐々に発動しにくくなるが、これを覆す仕組みが“イレギュラー”。1回の行動ごとに、“通常攻撃をすると発動率が40％プラス”といった条件がランダムに提示され、これに沿ったコマンドを選択することでプログレッションが発動しやすくなる。

　イレギュラーは敵を倒すと経験値とは別に手に入るポイントを消費して提示されるものを増やしたり、その最大確率を10％→20％→40％……などと上げていくことが可能。ほかにもプログレッションの段階に応じてより強力な魔法が使えるようになっていくなど、さまざまな要素により戦術性の高いバトルを楽しめる。イレギュラーの存在により、たとえ同じ敵であっても全く同じシチュエーションにはならず、一手ごとにめまぐるしく判断し続けていくのが本作の戦闘の醍醐味だ。

　本作の残りの戦闘システムである“シミュレーションバトル”と“アクションバトル”は、物語が進むとイベントとして発生。シミュレーションバトルでは、一般的な交互ターン制のシミュレーションRPGに近い形で数人のキャラクターを操作して戦う。行動力に相当する“AP”を消費して移動や攻撃などを行ったり、キャラクターごとに異なる特殊行動があったりなど、内容は本格的なものとなっている。

　アクションバトルでは、さまざまなダンジョンへ突入して剣を振るい、敵を倒しながら先へと進んでいく。HPの他に攻撃で消費する体力（スタミナ）の要素があり、攻撃範囲が広い“斬り”、正面しか攻撃できないが威力の高い“突き”、体力を消費しないが数に限りがある飛び道具“ナイフ”の使い分けがポイント。仕掛けやトラップなども多く、こちらもかなりの本格派だ。

　長尺のイベントシーンなどで描かれるストーリーも大きな見所。トレスのパートナーである意志をもつ箒“ホウキ”や、ある事情から“カラス”を名乗る蝙蝠、魔女社会の支配者で人間の王都への襲撃を企てる“ブルハリスタ”、王都に住む真面目な青年“フランツ”など、立場や思惑の異なるさまざまなキャラクターが登場し、多面的に物語が紡がれていく。

　王都に住む親友を訪ねるために始まったトレスの旅は、ある事件を経て長い流浪の旅へと繋がっていく。時を同じくして魔女と人間の戦乱が勃発し、世界の行く末と翻弄されるトレスの心、そんな重く重苦しい展開の中で生まれる僅かな希望などが存分なボリュームで描かれる。舞台劇のような言い回しや例え話などを豊富に盛り込んだテキスト、幻想的でダークな世界観も本作独特の魅力に繋がっている。

　戦闘の難易度も歯応えのあるものとなっており、終盤はシステムを最大限に活用してもなお一筋縄ではいかないボス戦なども多い。とはいえプレイ中も難易度変更が可能なため、どうしてもボスを倒せない場合や、ストーリーを中心に楽しみたい場合などは難易度を下げてプレイすることも可能。逆に難易度を変えない場合、クリアにかかる時間は公称プレイ時間を大きく上回る印象だ。ダンジョン探索にも仕掛けが凝らされているなどシステム・シナリオともに充実しており、圧倒的なボリュームを堪能できる大作に仕上がっている。