窓の杜ふるれびう

akira32Gold


評価時: Ver3.15i (11/13/97)





エディタで電子メールできる 「akira32Gold

 元々は、エディタとして開発されていた「 akira 」であったが、 32 ビット版の「 akira32 」から電子メールの送受信機能が搭載された。現在では、電子メール機能を搭載しない「 akira32II 」と搭載した「 akira32Gold 」に分かれている。また、 Ver2.65 からは telnet を介した NIFTY SERVE のメールの送受信、 Ver2.69 から NIFTY SERVE の会議室の巡回も可能になるなど、エディタとしてだけでなく、インターネットやパソコン通信の分野への展開を見せている「 akira32Gold 」。その豊富な機能をさぐってみよう。



[ はじめにエディタありき ]


HTML 化キットでのHTML編集
HTML 化キットでのHTML編集
 エディタとして長年にわたって開発されてきただけあって、エディタ部分は精練されている。通常のエディタに搭載されている検索・置換機能の他、正規表現を用いた検索も可能だ。正規表現をもちいれば「ヴァージョン」「バージョン」などの似た者同士の文字列も検索・置換できる。また、長い文章を書いていくのに構成を補助してくれるアウトライン機能英文スペルチェック機能なども搭載している。読み込める漢字コードは、 Shift-JIS 、 EUC 、 JIS 、Unicode と何でもこいである。この漢字コードは、ファイルを開くときに自動判断してくれる。

 ただし、初期設定の操作キーだと、 Windows 3.1 準拠の操作キーとなるために、初めて akira32Gold を触る人はちょっと戸惑うかもしれない。これは、 akira が Windows3.1 時代から開発されており、当初の操作キーを踏襲してきたあらわれである。現在のバージョンでは、現在の Windows にそった操作キーの 設定がなされつつあるが、まだ完全ではない。したがって、一番最初に操作キーの登録をすることをお薦めする。

 その際のカスタマイズ機能は万全。すべての機能が操作キーへ登録可能で、現在の Windows 標準操作キーにすることや、他のエディタから乗り換えた場合など、前のエディタそっくりの操作キーにすることもできる。ただし、これは非常に手間のかかる作業になる。著名なエディタ互換の操作キー定義ファイルが標準添付されていると、カスタマイズにかける時間も削減されるだろう。

 この他のカスタマイズポイントとして、画面の色・テキストのフォントなどの変更ができ、これは拡張子別に設定することができる。さらにキーワードの色付け機能もあるので、 HTML ファイルを編集しているときなどは、タグを色付けして見やすくすることが可能だ。

 また、 akira32Gold に搭載されているマクロ言語「 Script-A 」を用いれば、文書全体をいっぺんにインデントすることや選択した部分を定型の書式で別ファイルに書き出すなど、手作業でやると非常に手間のかかることを自動化することが可能だ。このマクロでは、 akira32Gold 自体を操作することはもちろんのこと、 akira32Gold にはない機能でも、 Windows や他のソフトと連携して処理するなど高度なことも可能である。

作者のホームページにいけば、ひらがな←→カタカナ変換マクロ、スクラップマクロなどユーザーが作成した多数のマクロがダウンロードできる。


そして、見逃せないのが HTML 化キットの存在だ。 HTML 化キットはその名のとおり、 akira で HTML を編集するためのキットである。 HTML 化キットを開くと、左側に HTML のタグメニューが表示される。そして、そのタグを挿入したい語句を選択し、タグを選べばそこにタグが挿入されるというものである。テキストエディタベースなので、 WYSING とまではいかないが、 HTML3.0 に準拠したタグはすべて挿入が可能。プラグインや JAVA アプレットのタグ挿入も可能である。 HTML3.2 に対応した HTML 化キット拡張キットは、ユーザーの手によって作成され、 akira32Gold のホームページに掲載されている。



[NIFTY SERVE のメールや会議室も送受信できる電子メール機能搭載 ]


  Akira32Gold にはエディタという側面の裏側に高機能メールソフトという側面もある。 メールソフトとしては、複数アカウントに対応している。複数登録したアカウントは、メールボックスを切り替えることによって、切り替えることができる。一種の振り分けの応用である。ただし、送信の際にどのメールボックスから新規メールを作っても、デフォルトの送信サーバーが選ばれるので、差出人などの設定がデフォルトの設定になってしまう。別のアカウントでメールを出そうと思ったら、メール作成画面上部の SMTP ボックスで差出人の設定を変更しなければならない。せっかく、受信メールボックスはアカウントごとに切り替えることができるのだから、受信メールボックスに設定したとこ ろで新規メールを作成する場合は、そのメールボックスに対応した設定をデフォルトで選択して欲しい。また、受信箱になるメールボックスの他、自由にメールボックスを作成することが可能なので、用途ごとにメールボックスを作ることが可能である。なお、この akira ではメールボックスという概念の他にフォルダという概念がある。フォルダは複数のメールボックスをくくっておくために存在する。このフォルダの中へはメールを保存することができない。

 メールボックス内のメールの表示は到着順の表示の他、スレッド表示機能を備えている。スレッド表示とは、メールについているヘッダーを読み取り、到着したメールがどのメールと関連があるかを枝上に表示してくれる便利な機能だ。
NIFTY SERVEも巡回できるメーラーにもなる
NIFTY SERVEも巡回できるメーラーにもなる
 特殊な機能として、 telnet を介した NIFTY SERVE の電子メールの送受信が可能なことだ。 NIFTY SERVE では、インターネット用メールソフトで電子メールを読む手段が提供されていないのと NIFTY SERVE に来た電子メールをインターネットのアドレスへ自動回送することができないので、メールソフトと NIFTY SERVE のメールとの別管理をしなければならなかったが、 akira では telnet を介して、 NIFTY SERVE にログインし、オートパイロットによって電子メールの送受信を実現している。また、受信したメールは自動的に @niftyserve.or.jp のドメインが付加されて保存されるので、そのままインターネットによる電子メールの送信に用いることができる。ただし、バイナリメー ルを受信することはできない。バイナリメールが届いた場合は、それを通知する機能があるので、通知されたら別の通信ソフトで NIFTY SERVE から直接ダウンロードしなければならない。せっかく、「インターネットも NIFTY もメールはこれ一本で」が売りなのだから、 BPlus にも対応し、バイナリメールのやり取 りも可能になって欲しい。

 そして、 NIFTY SERVE の巡回機能もついている。こちらも、 telnet でNIFTY SERVE にログインし、オートパイロットによって会議室を巡回する。会議室名が一定の規則で電子メールアドレスに変換され受信箱に届くので、適宜振り分けをしてやらないと受信箱が会議室メッセージですぐに埋まることになるだろう。また、電子メールのヘッダーを利用して、レス元のメッセージがわかるので、スレッド表示にするとメッセージのつながりを確認することができる。

 最近では、「 PetitPost 」のように、 NIFTY SERVE とメールソフトの間に立って、メールをやりとりするソフトも出現してきた。これはメールソフト側の POP アドレスを PetitPost の指定するアドレスにあわせて設定すれば、NIFTY SERVE のメールを読みこみ、メールソフトに届いたメールとして返してくれる。これは、自 分の好きなメールソフトを選択できるようになる反面、二重に設定しなければならない。その点 akira32Gold であれば、すべての役割を akira32Gold がになっているので、設定が簡単だ。

 また、振り分け機能には正規表現が利用でき、より細かな振り分け条件の設定が可能になっている。この振り分けに、さらに振り分けた文字列によって動的に振り分けフォルダを作る機能がついていればなおよい。エディタ部分で動的に文字列の置換をすることが可能なので、それを用いて実現が可能ではないだろうか。

 送受信に関しては、エディタ部分で漢字コードの自動識別が可能なことは述べたが、この電子メール部分にも十分に活かされている。また、クリッカブルURL & E-MAIL にも対応している。また、メール内もキーワードによって色付けができるなど、エディタで培われた機能が存分に用いられている。添付ファイルは BASE64 と uuencode/uudecode をサポートしている。なお、 BinHex に関しては、作者が仕様が不明であるということで永久にサポートしないそうだ。これは、 Macintosh とのファイル交換をする点において、致命的な部分といえよう。「 Becky! 」「 WinBiff 」など他の Windows メールソフトは軒並みBinHex をサポートしていることを考えると、仕様が不明であるという理由だけでは片付けられない。

 電子メール作成画面・参照画面上でも、他の文章と同様にマクロ言語「 Script-A 」が利用できる。これを用いれば、単純な返信文書だけでなく、メールの内容によって他のソフトを動かし、そのデータファイルを返信メールに貼り付けるといったことを自動的に行うことができるようになる。


[ さらに今後の発展に期待する ]


  akira32Gold は現在でも十分に高速、高機能なエディタであり電子メールソフトである。しかしながら、気になった点がないわけではない。本文中でも述べたが
 
○初期の操作キーが他のソフトと違う点があるために戸惑ってしまうことがある  
○ NIFTY SERVE のバイナリメールに対応していない  
○電子メールの添付形式に BinHex がサポートされていないために、 Macintosh とのデータ互換性に不安がある
の3点である。


 なお、 Ver. 3.05 から Macintosh のファイルにも対応し、不具合なく変換できるようになったが、これは BinHex への対応ではなく、バイナリファイル変換後の MacBinary のカットなど、今までうまく変換できていなかったものへの対応のようだ。

 エディタとしても高機能だったものに電子メール機能がつき、さらに NIFTY SERVE 巡回機能がつき、だんだんとエディタ以外の分野も発展を遂げている。また、周辺ソフトとして、プログラマブル FTP の「 Roxas 」や開発中のニュースリーダーなどが脇を固めている。今後は、 akira32Gold を中心とした、これらファミリーの連携が鍵を握るであろう。インターネットでのコミュニケーション統合ファミリーと言えるような、展開を期待したい。



作者連絡先:綾の明 <khf07113@mail.wind.co.jp>


(Reported by 柳樂 育男 )

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