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ポイントキャストネットワーク日本版


評価時: 2.0 Beta 1 (10/17/97)


本格プッシュ型情報サービス、いよいよ日本版登場

PointCastビューア
PointCastビューア
 海外で高い評価を受けてきたプッシュ型インターネット情報サービス「PointCast Network」が1997年10月16日15:00、ついに日本版をリリースした。

 プッシュ型とは、予めサーバから一定の時間毎に配信される情報を、ユーザが閲覧するものだ。これを TV のチャンネルを選ぶように見ることができる。放っておいても画面上の情報は一定時間毎に更新されていく。すでにリリースされている2大WWWブラウザ、Internet Explorer 4.0 や Netscape Communicator 4.0 が採用し注目されているプッシュ技術だが、もともとはこの「PointCast Network」や「Marimba」が元祖と言っていいだろう。これまで日本語コンテンツがなかったばかりに日本ではあまり知られていなかった「PointCast Network」なのだが、ついに満を持しての日本版登場となった。

[その特長]
 PointCast の大きな特長はその優れたユーザーインターフェース(UI)と情報収集性だろう。UI は WWW とよく似ているが、きびきびと動作し、起動時以外は待たされる感じが少ない。バックグラウンドで自動的に行われるデータ配信も圧縮して送られており、通常の WWW よりかなり速いそうだ。画面左のチャンネルを選ぶと画面上部のタブと見出しが現れ、そのチャンネルの最新情報詳細がウィンドウ中央に表示される。いくつかある見出しを選んで次々と読みたいニュースを読んでいくことができるのだ。またパソコン画面(デスクトップ)の下部(上部にも設定可能)に常時文字テロップによるニュース見出しが表示され、メインウィンドウを最小化して何か別の作業をしているときでも、目に留まった見出しをダブルクリックすれば、即ニュースの詳細が表示できる。この文字テロップはマウスドラッグにより3段階に速度調節が可能で、表示内容も左右自由に動かせる。画面から流れてしまったニュースを読み直したり、先をざっと斜め読みすることも簡単だ。こういった UI はさすがに世界を舞台に育ってきたソフトならではと言えるだろう。

スマートスクリーン(スクリーンセーバ)
スマートスクリーン(スクリーンセーバ)
[スクリーンセーバとして]
 一方でパソコンを操作しないときは「スマートスクリーン」と呼ばれるスクリーンセーバとして、 動きのある画面でニュースを魅せてくれる。情報はバックグラウンドで自動的に配信され更新されていくので、 操作する人のいないマシンのモニターがいつも新鮮なニュースを表示する電光掲示板となってくれるのだ。こちらも気になるニュースの上でマウスをクリックすれば、メインウィンドウに切り替わってそのニュースの詳細が読める仕掛けだ。

[活用したいコンテンツ]
 またそのコンテンツにも注目したい。朝日新聞・共同通信・日刊工業新聞・日興リサーチセンター・日刊スポーツ、さらに海外からは CNN を含め、すでに11社がコンテンツプロバイダとしてチャンネルを提供している。朝日新聞は米国ポイントキャスト社に100万ドルの出資をしたというだけあって、単独チャンネルで総合・社会・政治・経済・国際・スポーツ・天気などの情報を流し、asahi.com の Web とはひと味違った読みやすさを実現している。特に経済動向に敏感なビジネスマンには、企業情報と産業情報のチャンネルがおすすめだ。東証一部・二部の銘柄(企業名)を任意に25社まで同時に選ぶことができ、それらの株価・出来高情報(チャート表示)、企業情報を見ることが可能。さらにその企業に関連したニュースやリリースも新しい順にクリッピングしてくれるのが嬉しい。企業別のほか産業別でも同様のことができる。
 一方で株価なんて興味ないよという人にも、野球・サッカー・大相撲・競馬といったスポーツニュースや、国内外の芸能・社会ニュースなど、スポーツ新聞を読む感覚で情報収集ができるので、やっぱりおすすめなのだ。学生なら就職活動に向けて、気になる企業のニュースを常にチェックしておくのもいいだろうし、芸能ニュースでアイドルのニュースレポートを仕入れれば、クラスの話題に取り残されないですむぞ。

 オフライン対応なので、サブノートパソコンで夜のうちに情報を収集させておけば、忙しい朝も会社や学校に着いてからゆっくり読むことができる。また最新情報は [すべて更新] ボタンでいつでもまとめて、またはチャンネル毎に更新できる。しかも圧縮して配信されるから、接続時間が気になるモバイル派にもおすすめだ。活用法はアナタ次第なのだ。

[広告はテレビ風]
 ウィンドウ右上には動画の比較的大きな広告画面が、まるでテレビ CM のように30秒ずつ途切れなく表示されている。普通の WWW と違って、ニュースコンテンツを次々読んでいる時でも、大きなGIFアニメ広告の表示に待たされるイライラ感がほとんど無い。これをぼーっと眺めているだけでもナカナカ面白い。もちろん広告画面をクリックすれば、その広告に関連したウェブページがWWWブラウザで表示される。ちょうどテレビを点けっぱなしにして新聞を読んでいるような感覚だが、邪魔にならない気にならない程度に常に視野に入ってくるため、見落としが少ない。またその先の情報に簡単にアクセスできるため、テレビよりもっと可能性は広がったと言えるだろう。

メニューの選択
メニューの選択
[インストールしよう]
 さて、さっそくアナタも試してみたくなっただろうか。配布ファイルサイズは約2.8MB。インストールは簡単で、指示通りにマウスをクリックし、個人データを入力すればいいだけだ。なおこの個人データはユーザーニーズに応えた改善のために使用され、他には流されないそうなので、安心して入力よいだろう。初回起動時にはまずウィンドウ左下の「すべて更新」ボタンを押そう。これによってサーバからデータを収集してくれる。でないと「データがありません」と表示されてしまうだけなので、慌てないように。またアンインストーラもあるので、もし気に入らなくなったらコントロールパネルの「アプリケーションの追加と削除」から安全にアンインストールが可能だ。

[設定するには]
 各種設定はウィンドウ左下のメニューから行う。「カスタマイズ」「ビュー」「印刷」「ヘルプ」などがあるが、通常の Windows95 用のアプリのメニュー位置とは違う。またチャンネルごとの更新やカスタマイズは、チャンネルボタンの右端を再度クリックして行うので、最初は迷うかもしれない。ダイヤルアップでいつも接続している人は、「カスタマイズ - アプリケーションの設定 - 更新」で更新時間のスケジュールを設定しておこう。かなり細かく設定できるのも嬉しい。なお Proxy にも対応しているので、Firewall の中からでも安心だ。ただし、 Proxy を設定した後、一旦終了してから再度実行するとよい、という報告をユーザからいただいた。Firewall 環境によって必ずしも有効とは限らないが、もし Proxy 設定が効かないような場合、慌てず試してみる価値はあるだろう。

更新時間の設定
更新時間の設定
[気になる問題点と将来性]
 コンテンツプロバイダとして日経新聞や帝国データバンクなどの「その道の大手」がまだ参入していないことや、内蔵 Webブラウザが Internet Explorer の旧バージョン Ver3.02 であることは少々気になる(*)。またスポーツや芸能など、チャンネルによってはニュースが古いまま(17日正午現在、更新しても15日午前の記事だったりする)なのは、まだβ版リリースされたばかりだからだろうか。将来確実に急増するであろうユーザに対し、情報提供サーバの混雑やトラフィック対策もカギとなりそうだ。しかし発表によれば、北米では現在120万人のアクティブユーザを抱えており、日本でも配信サーバはすでに複数台のマシンが用意され、20万人ユーザに耐えられるという。管理者サイドへもサーバプロダクツとして今後、いくつかのソフトの提供が予定されているそうだ。特に「PointCast Caching Manager」による上流へのトラフィック軽減は公称80%ということで、企業ユーザだけでなく、場合によってはISPにも望まれるものかもしれない。ユーザが順調に増えればコンテンツもますます充実し、更新頻度も上がってゆくだろう。ちなみに日経BP社やインプレス社も、年内に「ブランドチャンネル」と呼ばれる独自チャンネルを開設予定とのこと。このように将来性も十分期待が持てるということを付け加えておく。

 Webブラウザとはひと味違う選択肢として提示されたこのポイントキャストは、日本のインターネット業界における台風の目とさえなり得る魅力を秘めているようだ。


(Reported by ひぐちたかし / 小林 哲雄)

※記述内容に誤りを見つけたらお知らせ下さい



(*) お詫びと訂正:この説明には正確でない表現がありました。正しくは下記の通りです。

誤: 内蔵 Webブラウザが Internet Explorer の旧バージョン Ver3.02 であることは少々気になる。
正: 内蔵 Web ブラウザのツールバーの外見が Internet Explorer の旧バージョン Ver3.02 と ほとんど同じであることは少々気になる(しかし MS-IE Ver4.0 がインストールされていて 使用するブラウザ設定で「Microsoftインターネットエクスプローラ」が選択されていれば、 ツールバーの外見は変わらなくとも MS-IE Ver4.0 の HTML 解釈エンジンが使われる)。

ポイントキャスト社からご指摘をいただきました。お詫びして訂正させていただきます。

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