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ひぐちたかしの新作ソフト紹介


【第9回】

「王羲之」v1.0
特徴を残したまま手書き文字を美しい行/草/隷書風の毛筆体にしてくれる

(98/10/20)

 比較的リリースが新しく、これからの成長も楽しみなオンラインソフトにスポットを当て、その魅力などを紹介しよう。

 パソコンが普及したおかげで、ペンや筆を持つ機会が減ったという人も多いことだろう。年賀状も毛筆フォントを使って印刷されることが当たり前のようになってきている時代だ。しかし人間が手書きで書いた文字だからこそ、毛筆の美しさは引き立つのではないだろうか。今回は手書き入力した文字を、その人の字の特徴や癖を残したまま美しい毛筆体に変換してくれるという面白いソフトを紹介しよう。

手書きの文字を美しく整形してくれる

「王羲之 Ver1.0」  「王羲之」(おう・ぎし)はマウスを使って入力した手書き文字を、書き手の特徴(癖)を残したまま美しい毛筆文字に変換してくれる、一種のお絵描きソフトだ。文字は行書風、草書風、隷書風の書体にすることができ、崩しや流れ、連綿、太さ、抑揚などは自由に調節できる。そこそこ整った文字ならさらに美しく流暢に、たとえ 'へたくそ' な文字でもかなり芸術的な毛筆文字になるから驚きだ。

 また、描いた文字には輪郭抽出やぼかし、毛羽立て、白抜き、影付けなど12種類の特殊効果をほどこすことができる。年賀状の裏書きなど、毛筆文字をアートとしてさらに加工したい場合にはうれしい機能だ。

 操作も簡単だ。左から2番目の書込ウィンドウにマウスやタブレットで文字を書き、一番左側の設定スクロールバーを動かすだけ。書いた文字はリアルタイムに変化するので、自分の好みの形になったところで編集ウィンドウへコピーし、必要に応じて範囲を指定してから特殊効果をほどこす。ドット単位の微修正がしたい場合は一番右側の拡大ウィンドウで行う。 できあがったらBMPファイルとして保存、またはそのまま印刷も可能だ。印刷はプレビューもできる。

 ただし使ってみた限り、難点もないわけではない。まずその操作性に戸惑うことだ。慣れてしまえばあまり気にならないとはいえ、書込ウィンドウで書いた文字を編集ウィンドウに移してから効果をつけるといった操作性は直感的に使えるとは言い難い。また毛筆文字加工ソフトといえど、黒以外の色でも書けるとありがたい。さらに市販タブレットで標準的な筆圧感応にも対応して、かすれや輪郭のにじみなども自然に再現できるようになってほしいところだ。これらは今後のバージョンアップに期待したい。

デジタルで形作る毛筆文字のアナログな美しさ

 こんな下手な文字がこんなに美しくなるのかと、思わず楽しくなってくる「王羲之」だが、素早く期待した書体に変換するにはけっこうコツがいる。たとえば文字の崩し方や流れ方は、文字の見た目の丁寧さよりも入力時のマウスを動かす速度によって変わってくる。素早く書くほど変換の際によく崩せるわけだ。詳しくはヘルプに書かれているので参照してほしいが、見方を変えれば、文字の入力速度もデータとして記録しているということだろう。なかなか奥は深いようだ。

 筆や鉛筆の代わりにキーボードで文章を書くことが多くなり、難しい漢字が書けなくなったり文字が下手になったという人は筆者の周囲にも少なくない。しかし日本には「書道」という素晴らしい文化があり、冠婚葬祭など日本古来の儀式の際には必ず毛筆が使われていることも忘れてはならない。このソフトはそういった毛筆文字のアナログ的な美しさを、パソコンというデジタルなツールを使って誰もが再現できるように試みた、非常に面白いアプローチをしたソフトだと言えよう。筆者も今さら書道を一から習おうとは思わないが、「王羲之」を使って少しは見栄えのする手書き風の年賀状を書きたくなった。ちなみに王羲之とは、書聖とも呼ばれる中国の有名な書家の名前である。

【著作権者】大場 幹浩 氏
【ソフト種別】シェアウェア \1,000
【バージョン】1.0(98/09/30)

□書体生成ソフト 王羲之
http://hp.vector.co.jp/authors/VA014963/

(ひぐち たかし)

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