【第16回】
「WinProxy」v1.31
1台のPPP接続をLANで共有、メール/Webサーバーにもなるフリーソフト
(98/12/15)
比較的リリースが新しく、これからの成長も楽しみなオンラインソフトにスポット
を当て、その魅力などを紹介しよう。
買い換えているうちに2台、3台と増えたパソコンをLANでつないで有効利用してい
る家庭や企業も多いことだろう。しかし台数が増えたからといって、インターネット
に接続するための電話回線はそうそう増やせるものではない。また、経済的な理由な
どから一つのメールアドレスを夫婦や家族で共有している人もいるようだ。そんな小
規模LAN環境に非常に便利なサーバーソフトを今回は紹介しよう。
1台のマシンのPPP接続をLANで共有するプロキシーサーバー
「WinProxy」はプロキシーサーバー、Webサーバー、およびメールサーバーの機能
を備えたフリーなサーバーソフトだ。Windows 95/98の環境で動作する。
プロキシーサーバーは、インターネットへのダイヤルアップ接続を、LANで共有す
ることができる。つまり電話回線1本とダイヤルアップ可能なマシンが1台あれば、
LANでつながったすべてのパソコンからインターネットへアクセスできるようになる
のだ。クライアントはTCP/IPで接続されていればよく、Windows、Macintosh、UNIX等
のOSを問わない。対応しているのはWeb(HTTP/SSL)、メール(POP3/SMTP)、ニュー
ス(NNTP)、FTP、TELNET、およびIRCなどのTCP/IP固定ポート。これらのクライアン
トから「WinProxy」の稼働しているパソコンをプロキシーサーバーとして指定すれば、
アクセス時に「WinProxy」が自動でダイヤルアップ接続し、インターネットを利用で
きるようになる。テレホーダイや、無通信時間監視による自動切断にも対応している。
またイントラネット用のWebサーバーとしても手軽に運用することができる。CGIや
SSIに対応しており、Windows 95/98で動作するプログラム(EXE/COM)、およびPerl
の使用が可能だ(別途Perlをインストールしておく必要がある)。さすがにSSLには
対応していないものの、IPアドレスを指定することでサーバー利用者を制限するセキ
ュリティ機能もついている。
面白いのはメールサーバー機能だろう。JPNICから正しくドメイン名を割り当てら
れていれば、通常のメールサーバーとして運用できるのはもちろんだが、仮想的に好
きなドメイン名を指定して、インターネット用メールソフトを使ったイントラネット
内だけのメール運用が可能となる。別名指定(エイリアス)機能を使えばイントラネ
ット内でのML運営もできる。さらにこのメールサーバー機能を応用し、インターネッ
トのプロバイダと契約しているメールアドレス1つを、イントラネット内で共有する
ことも可能だ。これは現在夫婦や家族で1つのメールアドレスを使っている人たちが、
それぞれのメールをやはり別々に受け取りたいという時に便利な機能だ。
メールアドレス共有(インターネット転送機能)の仕組みは意外と単純だ。通常
「From:」や「To:」のメールヘッダー行にはフルネームを「" "」でくくって書くこ
とができる。メールアドレス共有ではこのフルネームの所に仮想ドメイン名によるイ
ントラネット用のメールアドレスを併記する。イントラネット内からインターネット
へ送る場合は「WinProxy」が「From:」行にイントラネット用のメールアドレスを自
動で併記してくれるので、普段は気にしなくてよい。相手も一般的なメールソフトを
使っていれば、普通に返事を書くだけで「To:」行にイントラネット用メールアドレ
スが併記されることになる。共有メールアドレスのメールボックスに届いたメールは
「WinProxy」が定期的に取り込み、「To:」に併記されたイントラネット用メールア
ドレスに従って各ユーザーのメールボックスに振り分けてくれる。ユーザーはメール
ソフトで「WinProxy」サーバーにアクセスすれば、各自宛のメールだけを読み出せる
というわけだ。お手軽でなかなか面白い機能だが、その仕組み上メールアドレスを名
刺などに書く際に困るため、会社で使う目的には向いていないとも言える。
パーソナルユースにぴったりだが、ある程度の知識も要求される
モデムを共有するプロキシーソフトはいくつかあるが、これだけの機能を備えたも
のがフリーで登場したことは驚きだ。惜しむらくはHTMLで書かれた説明書の内容が不
十分なことだろうか。特に用語解説や、どうすればどういったことができるのかとい
うプレゼンテーションの面で、説明がかなり不足している印象が強い。筆者もそれぞ
れの機能を理解して試すまでに結構苦労を要した。サーバーソフトに初めて触れる人
だと手こずるかもしれない。機能の充実もさることながら、ユーザーの宝の持ち腐れ
になってはもったいないソフトなので、今後は説明の工夫に力を入れてほしいところ
だ。いずれにせよパーソナルユースに適しており、最近家庭内LANを組んでいろいろ
試したいと思っている人には特にオススメのソフトだろう。
なおホームページの「サポートルーム」ではインストーラーなどのついていない最
新版差分モジュールが公開されている(v1.44 - 98/12/12)。数々の不具合修正と機
能向上が図られているので、現在の正式公開版v1.31のインストールが終わったあと
に試してみていただきたい。
【著作権者】SapporoWorks
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.31(98/10/31)
□SapporoWorks
http://www.asahi-net.or.jp/~gm7s-hruc/
(ひぐち たかし)