後藤智博のダンスミュージックStudio


【第2回】

「Music Studio Standard」でグルーブ感のあるリズムを作ろう

(00/01/14)

 ダンスミュージック、ダンスミュージックって言うけど、じゃあダンスミュージッ クってなに? なんて聞かれたら、困る人はたくさんいるんじゃないかな。その定義 や歴史を語りだしたらきりがないけど、近年ハヤリなのはヒップホップ、ハウス、テ クノとか? うん、たしかに色々あるけど、ボクはダンスミュージックのジャンル分 けなんてナンセンスなものだと思ってる。リズムのノリが良くて、思わず身体が動い てしまう…それに尽きるんじゃないかな。

 さて今回からは、本格派MIDIシーケンサー「Music Studio Standard」を使って、 前回よりもより突っ込んだ曲作りをしていきたいと思う。サウンドも盛りだくさんで 進めていくから、Webで見ている人もメール版で読んでいる人も、Web上のサウンドア イコン()をクリックして、サウンドをチェックしながら感じをつかんでほしい。

 ところで、市販のMIDIシーケンサーソフトって、いくらくらいするか知ってる? 2万円程度の機能限定廉価版みたいなソフトもあるけど、プロ仕様のものでは10万円 を越えるものがチラホラ。手軽に出せる値段じゃないよね。もちろんそういったソフ トは、ユーザーインターフェイスを含めて非常に練り込まれているし機能も豊富。だ けど、基本性能はオンラインソフトだって負けちゃいない。特殊な音楽機材を使わな ければならないなどの特別な理由がなければ、まずはオンラインソフトから入ってみ るのをおススメする。

 そんなお得なオンラインソフトなんだけれども、今回から使用する「Music Studio Standard」は、数万円クラスのMIDIシーケンサーソフトにひけをとらない、高機能な MIDIシーケンサーソフト。その豊富な機能で、より突っ込んだ曲制作ができることう けあいだ。

本格派シーケンサー「Music Studio Standard」の使ってみよう

 「Music Studio Standard」を起動すると、再生ボタンやテンポなどの様々な情報 を表示する「メインウィンドウ」と、現在の曲の小節の情報を表示する「トラックウ インドウ」が現れる。「Music Studio Standard」では、256個の「トラック」を作る ことができる。もともと“1トラック=1楽器”を表しているんだけど、楽器が256個 あるというよりは、曲を作るための受け皿が256個ある、と考えてほしい。普通に曲 を作っていて256個の楽器を鳴らすことはまずないと思うけど、例えば曲中に同じ音 色の違うフレーズを使いたければ、別のトラックに分けて作曲するほうが、ぱっと見 で曲の構成を把握しやすくなると思う。曲を作りこんでいくと、とかく曲の構成につ いて混乱しがちだから、なるべく自分にとって解りやすい作業手順を身につけていこ う。

 まずは基本的な設定をやっちゃおう。[セットアップ]-[インストゥルメントマップ の設定]で、デバイス1-16までが「GM」になっていることを確認しよう。あ、1-10は リズムトラックなので「GM ドラムセット」になっていればOK。それから[セットアッ プ]-[MIDI環境の設定]で、デフォルトデバイスを内蔵のMIDI音源に。とりあえずは、 これで終了。

 次に、音が鳴るかどうかのチェックをしよう。[ファイル]-[開く]で前回作成した 曲か、「Music Studio Standard」のサンプルMIDIファイルを開く。トラックウイン ドウに曲のデータが表示されたら、メインウィンドウにある緑色の再生ボタンを押 す。曲が鳴らなかったら、設定をチェックしなおそう。

実際に曲を作ってみよう

 [ファイル]-[新規作成]を選び、すべてのトラックを白紙の状態に戻す。トラック ウィンドウが開いてない場合は[ウィンドウ]-[トラック]で再表示されるので、あわ てずにね。次にメインウィンドウの“T=120”をクリックしてテンポを設定。今回は 人間が楽器を叩いたような雰囲気のリズムを作りたいので少し遅めに、BPM=100でいっ てみようか。

 さて、お決まりのリズムトラックからの制作。ボクは上ものフレーズの切り替わり と共にハイハットが派手な音色にチェンジして盛り上がるような曲の展開が好きなの で、後で編集しやすいようにバスドラム&スネアドラムで1トラック、ハイハット専 用に1トラックを用意しようと思う。トラック001の“Track Name”をクリックすると 文字入力できるので、わかりやすい名前をつけておく。「Kick+snare」でいいかな。 “Device Name”と“Ch”には自動的に値が設定されるけど、リズムトラックなので “Ch”を10にしよう。この調子で002を「hihat」というトラックにした。

 トラック番号001をダブルクリックすると「ピアノロール(トラック1)」というウ インドウが開くので、上段にあるエンピツに音符が重なったような形のボタンを押し て入力モードに。この状態で音符を表すバーを置いていくんだけど、作業の簡略化の ためにバーの長さを先に決めちゃおう。複雑なリズムでなければ16分音符くらいが適 当だと思うから、上段の“Dul:”の右側にある音符マークをクリックして「音符の指 定」、これは実際の音符の長さね。ついでに、左のほうにある音符マークをクリック して「編集単位の指定」、これは音符をドラッグして横方向にずらしたりするときに どれくらいの量ずつ動くかということ。こちらも今回は音符の長さと同じ方が楽そう なので、それぞれ16分音符に。16分音符はヒゲ2つね! そうそう、シーケンサー専 用ハードやソフト、サンプラーなどの音楽専用機の世界では、専門用語を英語のまま カタカナで表記することが多い。パソコンでもよくあるけど。例えば、発音される音 符そのものや音符を現すバーのことは「ノート」なんて呼ぶ。それに習って以降は 「ノート」と呼ぼうか。メモしてね、メモメモ。

 ピアノロールウィンドウ左端の鍵盤部分をクリックするとリズムの音が鳴るので、 どの鍵盤がどんな音なのか確かめながらノートを置いていく。実際にノートを置くに は、ピアノロールウィンドウ上段にあるエンピツに音符が重なったような形のボタン を押した状態にして、ウィンドウ上をクリック。間違えた場合はノートをクリックす ると白色に変わるから、その状態で[Delete]キーを押そう。ざっと組んでみてこんな 感じ。

キック+スネア&ハイハット♪

「グルーブクオンタイズ」で人間ぽいノリを

 上のサンプルはハイハットをベタに16分音符で連打しているだけなんだけど、これ じゃあちょっと味気ない。そんな時に便利なのが「グルーブクオンタイズ」。正確に 並んだ音符を微妙にズラすことで“タメ”や“ツッコミ”などの人間的なノリを出そ うっていう機能だ。本当はかなり厳密に設定すべきなんだけど、ノリを出すための機 能なのでノリでイジっちゃおう。

 まずハイハット用に作ったトラックを開きノートをすべて選択する。[ctrl]-[Q]を 押すと「クオンタイズ-イベント」というダイアログが出るので、「グルーブ」と書 いてあるタブをクリックしてみて。

 右端の“Pos”と書いてあるのは「ポジション」。実際にノートを元の発音タイミン グからどの程度ズラすかを各小節ごとに指定する。“Vel”は「ベロシティ」といって、 キーが押し込まれる速さ、すなわち音量を表す。“Dul”は「デュレーション」、ノー トの長さのこと。今回はあまりデュレーションの長い音色は使ってないので“Dul” は放っておいて、“Pos”と“Vel”だけを変更しよう。左のグラフでズレ具合を変更 していくんだけど、あんまり派手にズラすと、意図的なズレというよりただズレてい るだけだと思われちゃうので注意ね。気に入ったグルーブができたら、「リコール」 に名前を入れて設定を保存しとこう。失敗した場合は、クオンタイズの「ノーマル」 タブで元に戻す。ノーマルのクオンタイズでバーを元の位置に戻す場合は、「タイミン グ」から音符を240、16分音符にしておくことを忘れないで。

 ハイハットにグルーブクオンタイズをかけたら、こんな感じになった。どう? 少 しはメカっぽさが消えたでしょ?

ハイハットをグルーブクオンタイズ♪

「Music Studio Standard」のココがいい

 「Music Studio Standard」での曲作り、今回はここまで。まだほんの少しの機能 しか使ってないけど、このソフトのスゴさは感じてもらえたかな。グルーブクオンタ イズなんて、数年前は一部の高額なシーケンサーにしか搭載されてなくて、グルーブ クオンタイズを使いたいためだけにそのシーケンサーを買う、なんて人もいたくらい。 まだまだ「Music Studio Standard」の奥深い機能は紹介しきれてないから、次回も じっくりと触ってみたいと思う。そうそう「Music Studio Standard」で書き出した MIDIファイルはそのままではWebブラウザーなどで聴くことができないから注意して ね。書き出し方法の説明は少し長くなっちゃうから、それも次回以降のお楽しみとい うことで!

【ソフト名】Music Studio Standard
【著作権者】Frieve 氏
【ソフト種別】シェアウェア 2,000円
【バージョン】2.40(1999/12/28)

□Frieve Home Page
http://www.yk.rim.or.jp/~frieve-a/

 思っていたより簡単で、だけど奥深いMIDIの世界。ソフトをじっくりと使い込んで いろんな機能を覚えるのと同時に、世界中の様々な音楽を聴いて耳を肥えさせること もすごく重要だと思う。また逆に、世界の人に曲を聴いてもらいたいなら、雅楽とか 演歌からインスピレーションを得るのもいいだろう。ヨーロッパではオリエンタルな 曲調を非常に好むダンスミュージック・リスナーも、たくさんいるんだよ。 では、Keep on music!

後藤 智博


 記事中の楽曲は後藤 智博氏によるものです。著作権は、後藤 智博氏に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページにリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
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