後藤智博のダンスミュージックStudio


【第3回】

「Music Studio Standard」のコツ、教えちゃおう!

(00/01/21)

 データ容量が小さくて、いろいろなソフトで聴くことのできるMIDIファイル。とても便利だけど、注意しなければいけない点をひとつ。第1回で「MIDIのデータの中に、音符の情報は入っているけど音色は含まれていない」と書いた。実はそれはMIDIの強みであると同時に、最大の弱点でもある。つまりMIDIのファイルは、音符の情報は同じだけど、それを鳴らす音源が違えば、再生するパソコン環境によって全然違う音に聞こえちゃうってこと。繊細な楽器が聞こえにくいと、曲作りにも影響する。サウンドカードや外部のMIDI音源を買うのもいいし、ソフトウェアMIDI音源をインストールしてみるのもいいかも。

 さて、オンラインソフトでダンスミュージックを作ってしまおうというこの連載、今回も「Music Studio Standard」を使って、より効率的な作曲方法を紹介する。サウンドも盛りだくさんで進めていくから、Webで見ている人もメール版で読んでいる人も、Web上のサウンドアイコン()をクリックして、サウンドをチェックしながら感じをつかんでほしい。

「Music Studio Standard」でポイントを押さえた曲作り

 手軽で高機能な「Music Studio Standard」、みんなイジってる? 今回も前回同様、リズムトラックから制作していこう。トラック001を「kick+snare」、トラック002を「hihat」にして、ばーっとリズムを作ってみる。解らない部分があったら、本連載の第2回に戻りながら、焦らずにやってみよう。

基本リズム♪

 次にトラック003を「bass」にしてみた。MIDIチャンネルは1でいいかな。さて、前回はリズムトラックしか作らなかったけど、リズムトラック以外での音色の割り当てはどこでするかというと、トラックウィンドウの上段、一番右側のボタンに、ちょっと小さい文字なんだけど「Patch/Vol/Pan」って書いてあるよね? それを押した状態にする。するとトラックの部分に新しい項目が表示されるので、トラック003の「Patch」をクリックしてから音色の設定だ。

 ベースに限らず、音色の決定ってかなり悩むとこだよね。そんな時に使いたい便利な機能を紹介しよう。メインウィンドウ右よりに、矢印マークのボタンが3つあるでしょ? 「0001:01:000」て書いてあるトコ。これは上から、再生時に何小節目からスタートするか、何小節目からループ再生を始めるか、何小節目でループを終えるかの設定をするボタン。作っているループが4小節だったら、上から2番目を「0001:01:000」一番下を「0005:01:000」にして、それぞれのボタンの右側のチェックボックスをチェックするといい。この状態で再生すると、再生時間が5小節目のアタマに来た瞬間に1小節目に戻る。つまり、延々と4小節を繰り返し演奏してくれるワケ。この機能を利用すれば、同じフレーズで音色が変わればどうなるかとか、フレーズのこの部分をこう変えればどういう感じになるとか、聴きながら編集することができる。便利便利。この機能を使いながらベースを入れてみた。

リズム+ベース♪

 そのまま勢いにのって、もう少し音色数を増やしてみよう。トラック004を「conga」という名前にして、ココココッ、とコンガの音を入れる。トラック005は「shake」。タンバリン音色で16小節連打にしてみた。だんだんまとまってきたかな。

コンガとタンバリンを追加♪

 トラック005、全然シェイクしてないって? そうそう。最後にトラック005にグルーブクオンタイズをかけちゃおう。音量を波打つように変えて緩急をつけたいので、今回のグルーブクオンタイズは「Vel」のみ。ちょっとハデめに変えてみた。

タンバリンをシェイク♪

配布用のMIDIファイルを書き出そう

 さて、曲が完成したら、念願のMIDIファイルで保存しよう。前回も軽く触れたけど「Music Studio Standard」でデフォルトのまま保存したMIDIファイルは直接Webブラウザーなどで聴くことができない。Webブラウザーやメディアプレーヤーで聴くためには、すべてのシーケンサーで標準になっている「SMF」の規格にのっとって音色や音量、音源の初期化情報などをMIDIファイルの最初に埋め込んであげないといけないからだ。なお「SMF」について詳しく知りたい人は、ヤマハのホームページに詳しく載っているのでチェックしてみよう。

□参考:「XG Reading Page」
http://www.yamaha.co.jp/xg/read/read.html

 配布用MIDIファイルの保存手順はちょっと面倒だけど、すぐに慣れちゃうと思うので手順を追ってやってみよう。まずは、初期化情報を入れるために曲のアタマに2小節くらい空白を作る。それから、作った空白部分に各トラックの初期化情報を入れる。テンポその他、音楽としての情報も打ち込んで、最後に曲の一番アタマにMIDI音源の初期化情報を入れる。それをSMFとして保存すればOK。うーん、もっとゆっくり説明するね。

 ファイルの頭に音源の初期化情報を入れたいので、全てのトラックの頭に空白の小節を入れよう。まずはトラックを右クリックして[全て選択]すると、全部のトラック番号の左に四角が表示されるハズだ。この状態で小節の部分をドラッグ。2小節分が黒く選択されたら、右クリックで[時間挿入-小節]。全てのトラックが2小節ずつ、右にずれたでしょ? 今回聴いてもらったサウンドの頭に空白があるのはこういうワケ。

 それからトラックの初期化情報を入れる。全部のトラックが選択されている状態で、今度は[実行]-[トラック初期化情報の挿入]。曲の一番アタマにはさらに別の情報を入れなければいけないので、挿入位置は[2 1 0]。2小節目のアタマい入れとこう。他の設定はこのままでイイので、OKを押す。

 そうそう、テンポその他の情報も入れとこう。「Tempo Track」が白く選択されている状態で、トラックを右クリックして[イベントリスト]を選ぶと「イベントウィンドウ」が開くので、左上のエンピツボタンを押して[イベント]。「イベントエディット」というダイアログが出たら「テンポ」に注目。ここに作っていたテンポと同じものを入れておく。今回は150に。同じ要領で「Meter Track」は「分子:4、分母:4」、「Key Track」は「長調」で「C」にしておく。

 最後に、MIDI音源の初期化情報を打ち込む。適当なトラックが白く選択されている状態で、さっきと同じ要領で「イベントウィンドウ」の「イベントエディット」。今回は[種類]-[スペシャル]を選ぶ。そして[選択]。「スペシャルの編集」というダイアログが出るハズ。大丈夫? ついてきてる? さらに、今度は[プリセットエクスクルーシブ]から[GM ON]を読み込もう。「イベントエディット」ダイアログで「GM ON」になってることを確認したら、設定は全部おしまい。お疲れさま。

 MIDIファイルの保存は、[ファイル]-[名前を付けて保存]で拡張子を「.mid」にすればOK。ダイアログが出るけど、デフォルトのままで大丈夫だ。そうそう、「Music Studio Standard」を終了してからじゃないと、他のソフトで音を確認できないこともあるので注意。一回終了してからチェックしてみて。完成したMIDIファイルを、自分のWebページに埋め込むなり、メールに添付するなりして友達に聴いてもらおう。まあ、いきなり添付メールを出したら怒る人もいるだろうから、はやる気持ちは押さえてまず確認を取ってみるとかね。

【ソフト名】Music Studio Standard
【著作権者】Frieve 氏
【ソフト種別】シェアウェア 2,000円
【バージョン】2.40(1999/12/28)

□Frieve Home Page
http://www.yk.rim.or.jp/~frieve-a/

 さあ、次回はいよいよMIDI編の最終回。今回紹介しきれなかった「ミキサー機能」による面白いテクニックを紹介する。だんだん曲作りに慣れてきたかな? 作曲するときのポイントは、ひたすら時間をかけること。そして完成したモノを他人に聴いてもらって感想を聞くこと。もしも厳しいことを言われたってメゲないで。作りこんだ作品の反省点を明確にすれば、次の曲では自分がまたひとつカベを越えていることに気付くはず。素晴らしい曲が作れることを祈ってるよ。では、Keep on music!

後藤 智博


 記事中の楽曲は後藤 智博氏によるものです。著作権は、後藤 智博氏に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページにリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
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