後藤智博のダンスミュージックStudio


【第6回】

「Beam2002」を使って素材作りに命をかけろ!

(00/02/25)

 自分の好きなサンプリング音色を使って作曲をすることができるMODフォーマット。その実力のほどは前回で少しは判ってもらえたかな。自由にサンプリング音色を用意できるということは、逆に音色を用意していないと作曲が始められない、ということでもある。今回から2回にわたって、音色=“ネタ”の制作を進めていこうと思う。

 さて、パソコン以外の音楽機材の中でも、特に人気の高いのがアナログシンセ。その暖かみのある音色が第一の特徴だけど、もうひとつ重要なポイントとして、ツマミを回すだけで音が変わるため直感的な音作りができること、が挙げられると思う。まずは今後の音作りのために、少しだけアナログシンセのしくみについて書こう。専門用語がちょっと出てくるけど、知ってると今後の作業が進めやすくなると思うので、頑張ってついてきて。

電子音楽ブームはここからはじまった? アナログシンセのしくみ

アナログシンセの構造  アナログシンセは、大きく分けてオシレーター、フィルター、アンプの3つで構成されている。オシレーター、つまり発振器で作ったブザーのような音をフィルターで特徴のある音に変化させ、最後にアンプで音量を増幅させるってしくみ。実際に音を作る場合は、オシレーターで「ベースとなる波形」や「音高」を決めてから、アンプで増幅する「音量」を調節して、最後にいろんなフィルターをかけて自分の求める「音色」を探していくっていう感じ。

 オシレーターが出す波形にはいくつか種類があって、代表的なものでは「ポー」という音の出る“矩形波”や「ビー」という音の出る“ノコギリ波”なんかがある。その音をフィルターで削ったりふるわせたりして変化させる。中でも高音部分を切り捨てる“カットオフ・フィルター”と、カットオフ・フィルターで切り捨てられたポイント付近の周波数を強調する“レゾナンス・フィルター”の組み合わせによる独特のビコビコ音は特徴的。前回mp3ファイルで聴いてもらったよね。

 あ、アナログシンセでは音の調節を電圧の変化によって制御しているから、それぞれ“Voltage Controlled”を頭に付けてVCO、VCF、VCAなんて呼ぶことが多い。さらに“Envelope Generator”(EG)っていう音の出方に時間的変化を与える回路を使うと、いろんな音を作り出すことができる。たとえばVCAにEGをカマすと、ピアノのように「ポーン」とはじめに強く鳴って徐々に音量が下がっていく音や、バスドラムのように「ドン」といきなり始まってすぐに消える破裂系の短い音などを作り出すことができる。

 ちなみに、こうしてオシレーターで生成した波形をフィルターで削っていくような方法は「減算方式」といって、ロバート・ムーグ博士の発明によるもの。博士が産みだしたMoogシンセサイザーは、ディズニーランドの“エレクトリカル・パレード”で流れる曲の作者、ペリー&キングスレイが愛用していたことでも有名。Moogシンセサイザーは大ブームになって、以降のシンセサイザーに多大な影響を与えたってわけ。じゃあさっそく制作に入って、耳で確かめながら覚えていこう。

「Beam2002」でアナログシンセライクな素材制作

「Beam2002」  「Beam2002」は、アナログシンセ的な方法でWAVEファイルを作ることができるソフトウェアシンセサイザー。MODファイル制作のための素材作りには、コレが一本あるだけでかなり重宝する。マウスひとつで手軽に好きな音色を作れるし、しくみはアナログシンセと変わらないので、「Beam2002」をマスターすれば本物のアナログシンセも自在に操れるようになると思うよ。

 「Beam2002」を起動するとスライダーがたくさんある画面が表示される。画面を大まかに見て左上が[Generator]、つまりこのソフトで言うオシレーターのこと。ブザーの部分ね。右側半分がフィルター。ここで音をエディットしていく。そして、下段の真ん中と左側がアンプ。ここには“EG”設定用の折れ線グラフみたいなモノもある。

 このソフトでは2つのジェネレーターを合成して音を作ることができるんだけど、とりあえず[Generator2]-[Volume]を左端のゼロの部分まで動かして、左下の[PreView]を押して[Generator1]のみの音をチェック。[Generator1]のプルダウンから色々な波形が選べるので、ひととおり聴いてみよう。それぞれの音の特徴、なんとなくわかった?

 さて、まずはバスドラムの音色作りに挑戦しよう。[Generator1]の波形を「Sine」に、[Pitch]を-30あたりまでドラッグする。[Generator2]-[Volume]はオフね。低めで柔らかい音になった。

低めの柔らかい音♪

アンプで直角三角形をつくる  このままでは全然バスドラムに聴こえないので、[Amp]をいじってみよう。下段真ん中あたりにある、折れ線グラフに白い丸がついたようなものが[Amp]の設定だ。左から2番目の白い丸を左上端までドラッグ、3番目と4番目を下にピッタリとくっつけて、直角三角形のような形になるように変更する。いきなり音が出て、サッと消えてしまうような雰囲気かな。“EG”はアナログシンセの機能の中でも視覚的にわかりやすいもののひとつだから、直感でいろいろといじってみて。ついでに、ちょっと堅めの音色に変化させるために[Filter1]-[HptFilter]のチェックボックスにチェックを入れ、[HPF]を右から1/3、[Reso]を真ん中あたりにドラッグする。軽くレゾナンスフィルターをかけてみたワケ。Roland社の名機、TR-808みたいな暖かみのあるバスドラム音色ができた。気に入ったら、[WaveOut]でWAVEファイルとして書き出しておこう。

暖かみのあるバスドラム♪

ハイハットの制作  次にハイハット音の制作。ハイハットのような金属音を作りたい場合は、ノイズを使うとソレっぽく聴こえる。[Generator1]のプルダウンを「Noise」、[Generator2]のプルダウンを「Square」に。それぞれの音色を調節してみると、なかなかハイハットらしくなった。[Amp]-[Long(sec)]で音色の長さを変化させて、オープンハイハットとクローズハイハットの2音色作る。[Amp]のEGはバスドラムと同じままでOK。

オープンハイハット♪
クローズハイハット♪

 それから、ベース音。[Generator1]のプルダウンを「Triangle」、[Pitch]は-30。[Amp]は左上角が直角で右上角は鈍角に。いきなり音が出てしばらく続いた後、スッと消えるイメージで。[Filter]は高さの低い台形のような形にしてみる。少し微妙なので、難しかったらWebの画像を参考にしてみて。

ベース音♪

フィルターをいじり続けよう  あとはもう、ただただフィルターをいじり続けて面白い音が出るまで[Preview]を繰り返しててみよう。構造を理解すれば好きな音が出せるようになるけど、ひたすら感覚的に面白い音を追求できるのもアナログシンセの良いところ。こんな音ができた。

フィルターで調節♪

 以上の音を使って軽くMODファイルを組んでみると、こんな感じ。MODトラッカーの説明はもう少し後の回でやるからね。自分で釣った魚を焼いて食べると格別美味しく感じるように、音色からなにからすべて自分が作って気に入ったモノを使っているってことが、一番の楽しみだよね。

MODトラッカーでMIX♪

【ソフト名】Beam2002
【著作権者】KeNji 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】β0.9999(00/02/09)

□★DreamN-Hit Studio ~やすらぎの音楽~
http://www2u.biglobe.ne.jp/~dreamn/

 アナログシンセで自在に音色を作るには、トライ&エラーを繰り返しながら操作を身体で覚えていくことが重要。ぜひとも「Beam2002」をこってりといじって、狙った音色を作れるようになってほしい。はやくトラッカーでMODファイルの曲を作曲したいよ、って人も多いかも知れないけど、音色=“ネタ”の用意は、料理に例えれば下ごしらえのようなもの。一生懸命作りこむほど、曲の完成度も格段にグレードアップするはず。次回は好きなCDなどから音色をゲットする“フレーズ・サンプリング”のテクニックについて紹介する。では、Keep on music!

後藤 智博


 記事中の楽曲は後藤 智博氏によるものです。著作権は、後藤 智博氏に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページにリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
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