【第72回】「TrEdit」
全文翻訳するための翻訳機能付きエディター
（00/03/06）たとえば英文をざっと読むだけなら、マウスカーソルをあわせるだけで訳語を表示する辞書ソフトを始め、便利なソフトは多々ある。しかし、自分が翻訳したものを誰かに読ませたり広く公開したいとなると、ただの辞書ソフトでは役不足になることもある。学生の頃にやった英文和訳では、多くの人が単語の意味を辞書で調べるだけではなく、単語のすぐ脇に書き出しておいて、全体を眺めながら全文翻訳を行ったのではないだろうか。今回とりあげるのは、そういった“紙とペンで行う全文翻訳”に似た感覚で翻訳作業を行うために開発された、ユニークなソフトだ。
どんなソフト？……翻訳文を書くための辞書引き機能付きエディター
「TrEdit」は、一言で言えば“辞書引き機能付きのテキストエディター”だ。英文和訳や和文英訳といった全文翻訳に適しており、まず元になる原文中のわからない単語のすぐ後ろにその意味をカッコ書きで挿入し、それを見ながら全体を翻訳文に直していくというスタイルで翻訳作業を進めていく。そのため後からでも原文と訳文を参照比較して眺めやすく、文脈の通った訳文を完成しやすいのが特長だ。
「TrEdit」のメインウィンドウは、上下に2分割表示されたテキストエディターの右側に辞書ソフトが貼り付いたような感じになっており、エディター部は上に原文、下に訳文というように独立して使用できる。ドラッグ＆ドロップなどで読み込んだ原文の単語をダブルクリックすると、辞書画面に訳語一覧が現れ、適切と思われる訳語を一つ選んでクリックすればその訳語が原文の単語のすぐ後ろにカッコ付きで挿入される。同様にしてわからない単語すべてに訳語をつけていき、それを見ながら下のウィンドウ内に翻訳全文を作成していく、というのが基本的な使い方になる。
「TrEdit」のスゴイ点は、翻訳作業をいかにスムーズに行えるか、ということにな るだろうか。単語をダブルクリックするだけで訳語候補リストが辞書画面に表示され、 クリックひとつで適切な候補を原文中に挿入でき、その原文を読みながら自然な訳文 全体を仕上げていく。そういった作業の流れを十分に意識して作り込まれているのだ。 まさに翻訳のために作られた“翻訳エディター”と言っていいだろう。
また「TrEdit」では、ボタン一つでエディター画面または辞書画面のいずれかを隠 したり、上下分割されたエディター画面の一方を隠すといったウィンドウレイアウト が可能になっているのも面白い点だ。つまり、単なるエディターとしても単なる辞書 ソフトとしても使えるし、翻訳作業中は翻訳文の体裁が整ってきたところで訳文画面 だけにして校正に集中する、といった使い方ができるわけだ。エディター部はリッチ テキスト対応で、単語ごとに色を付けたりフォントサイズを変え、RTFファイルに保 存してワードパッドや市販の日本語ワープロソフトに読み込ませるといったことも可 能になっている。
「TrEdit」が本領を発揮するのはやはり翻訳作業だ。学生の語学学習はもとより、 英文のメールやWebのニュースリリースなどを正確に全文翻訳する必要があるビジネ スマン、翻訳を職業としている人も要チェックだろう。翻訳というとやや特殊な分野 になってしまうが、単体のエディターとして、また辞書ソフトとしても十分使えるの で、リッチテキスト対応の軽快なテキストエディターが欲しかった人や、海外Webサ イトの巡回用に辞書が欲しかった人にもオススメしておく。フリーソフトなのでまず は気軽にダウンロードしてみよう。
「TrEdit」が対応している“英辞郎”形式の辞書ファイルは無圧縮テキストなので、 ハードディスクを圧迫することには注意しておこう。利用する辞書ファイルは1つし か指定できないため、さまざまな辞書を使い分けたいときはいちいち辞書のパスを設 定しなおすか、複数の辞書を合成して使わなければならない。また、まだリリースか ら間もないためか環境によってはエラー表示して落ちてしまうこともしばしばあるよ うだ。その場合、翻訳中の文章は消えてしまうので、ファイル保存はこまめにする必 要がありそうだ。このあたりの不安定さや翻訳対象による辞書の組み合せ利用、辞書 圧縮については今後のバージョンアップに期待したい。
【著作権者】よしの（Y.Saito） 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.31（00/02/24）□作者: Y.Saito
http://www.vector.co.jp/vpack/browse/person/an005843.html
□NIFTY:英辞郎:INDEX
http://www.nifty.ne.jp/eijiro/
（ひぐち たかし）
