ひぐちたかしの新作ソフト紹介


【第73回】

「i-BRO artchips」

iモード用サイトの表示やゲーム、音楽に対応したコンパクトなWebブラウザー

(00/03/13)

 NTTドコモの携帯端末“iモード”用のWebページは、Compact HTML(CHTML)というHTML言語のサブセットで書かれている。これをパソコンの普通のWebブラウザーで表示すると、小さな画像や文字情報ばかりとなりシンプルすぎて素っ気ない感じを受けるものだ。しかしそれは見方を変えれば、普通のWebブラウザーがCHTMLを前提にして作られていないから、と言うこともできるだろう。CHTMLのサイトを見るにはCHTML専用に作られたWebブラウザーを使い、さらにPCならではの機能も楽しめるものがいい…今回はそんなWebブラウザーを取り上げよう。

どんなソフト?……CHTMLを表示するコンパクトなWebブラウザー

「i-BRO artchips」v1.0.0  「i-BRO artchips」(アイブロー・アートチップス、以下「i-BRO」と略)は、CHTMLを表示するコンパクトなWebブラウザーだ。フリーソフトでWindows版以外にMac版も公開されている。ウィンドウはiモード端末の画面に似て小さく、CHTMLを違和感なく表示する。さらにHTMLに「i-BRO」用の独自タグを記述すれば、Shockwave FlashやQuickTimeによるアニメーションやゲーム、音楽、JPEGカラー画像などを再生できるのが特長。これら「i-BRO」用に付加されるマルチメディアコンテンツ用の独自タグは、iモード端末では無視されるため、同じURLの同じWebページでもiモード端末ならテキストのみ、パソコンで「i-BRO」を使えばマルチメディア情報が付加されて楽しめるようにできるわけだ。

 「i-BRO」では文字と画像を分けて左右に並べて表示する独自のウィンドウ構成になっている。したがってiモード用に書かれたCHTMLをiモード端末と全く同じように表示するわけではない。インラインイメージはウィンドウ右側の画像表示部に表示され、複数の画像がある場合は最初の1枚のみ読み込まれる。Shockwave FlashやQuickTimeによるアニメーション、ゲーム、音楽、またJPEG画像などもウィンドウ右側に表示される。「i-BRO」ではこれらのマルチメディアオブジェクトを「アートチップ」と呼び、[CHIP IT!]ボタンを押すことで保存してオフラインでいつでも呼び出せるようになっている。

 なお独自タグによるアートチップの埋め込みは、基本的にHTMLのコメントアウトタグを使って行う。「i-BRO」用ページの作成方法についてはまだ詳しい情報が公開されていないが、作者によると近いうちに「i-BRO」のホームページにて解説されるそうだ。

ここがスゴイ!……Shockwave FlashやQuickTimeでゲームや音楽を楽しめる

ゲーム・音楽・動画なども楽しめる  「i-BRO」のスゴイところは、CHTML用Webブラウザーでありながらアニメーションやゲームや音楽を楽しめるということになるだろう。しかしここでは、同じWebページをiモードとPCでそれぞれに楽しめるという点を強調しておきたい。Shockwave FlashやQuickTimeムービーなどは、もちろんIEやNNといった普通のWebブラウザーで再生可能だが、一般にそういったマルチメディアサイトは(当然ながら)iモードでの閲覧を考えて作られていないものだ。かといってiモード専用にCHTMLを書くのは二度手間となる。しかし「i-BRO」での閲覧を前提に作られたサイトであれば、iモード端末でそのまま閲覧でき、PC上からは「i-BRO」によって付加的にマルチメディア情報を楽しんでもらうということが可能になるのだ。すなわち「i-BRO」は、携帯端末表示に必要なシンプルなCHTMLと、パソコンらしいマルチメディア性とをうまく組み合わせた新しい発想のWebブラウザーと言うことができるだろう。

こんな場合に便利……iモードとPCの両方で楽しめるページ作り

「i-BRO」用の掲示板なら書き込みが可能  家や職場など、iモード端末を使わなくてもいい環境でiモード用サイトを見るときに便利なソフトであることは確かだ。また既に自分のホームページをiモード対応にしている人にも、「i-BRO」対応をオススメしたい。iモード用ページに追加する形でマルチメディアコンテンツを用意するだけで、iモード端末で見ればテキスト情報が、パソコンで見れば動画や音楽が楽しめるという“一粒で二度おいしい”サイトを簡単に構築できるだろう。フリーソフトでWindowsとMacの両対応なので、これからの普及も期待できそうだ。

 また「i-BRO」のブラウザーエンジンにはIE4/5のコンポーネントを使っていないため、例えばフレームを使ったページを表示しようとすれば、iモード端末で表示する場合と同様にFRAMEタグは完全に無視されてNOFRAMEタグ以下が参照される。フレームを使ってiモード用ページと通常ページを振り分けているようなサイトの閲覧には、IEやNNを使うよりもかえって都合がいいだろう。

使用上の注意は?……URL入力とFORMによる書き込みに注意

 さて、実際に使ってみると不便に感じる点がいくつかあった。最も気になったのはURLの入力欄にコピーやペーストが使えないことだ。右クリックメニューは出ないし[Ctrl]+[C]キー、[Ctrl]+[V]キーのようなショートカットキーも使えないため、URLはその都度手入力しなければならない。また仕様上の制限として、通常のFORMタグを使ったページ(BBSなど)では書き込みができない。「i-BRO」用の独自タグを使ったページであれば書き込みも可能ということだが、やはりiモード用サイトを閲覧するためのソフトとしてはキビシイ仕様だ。ぜひ将来の改善を望みたい。

【著作権者】木内 達也 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.0.0(99/12/18)

□i-BRO 公式ページ
http://superwww.com/i-bro/info/

(ひぐち たかし)

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