後藤智博のダンスミュージックStudio


【最終回】

今後が気になるMODトラッカーを2本紹介

(00/03/31)

 “テクノ”と聞いて思い浮かべる曲調は、三十代を境にガラリと変わると思う。誤解を恐れず言い切れば、三十代より上の世代が思うのは80年代、当時としては先進的で非常に高価だった機材を惜しげもなく使い、未来的なイメージで曲を作った「クラフトワーク」「YMO」などを代表とするテクノポップ・サウンド。思うに当時の“テクノ”が目指していたのはロックへの反逆精神の表明であり、アートっぽいパフォーマンスであり…言いかえれば、現代音楽? つまり、ダンスミュージック以外の何かだった。対して、若い世代が思い浮かべるのは90年代、あまり裕福でない若者が自宅に安い中古機材を買い込みアイデア勝負で産みだした、「デリック・メイ」「ホアン・アトキンス」などによるミニマルな“ダンスミュージックとしてのテクノ”だ。彼らはサウンドからすべての無駄なものを省いていくことによって「ループ」の気持ちよさを発見した。

 その似て非なる音楽の境目には、80年代後半から90年代初頭にかけてイギリスで大流行した野外パーティ“レイヴ”があるってよく言われる。クラブに入りきれなくなった観客がいつの間にか街へとあふれ出して始まった“レイヴ・パーティ”。そこでかかった音楽、90年代のテクノは、ただ人々を突き動かす感覚的でエレクトリックなダンス・ミュージックとして、気持ちのよい音色をひたすら追求しながら今も発展している。その姿勢はダンスミュージックの世界を飛び越え、今や世界中のポピュラー・ミュージックにまで伝播してる。やっぱ音楽は感覚勝負!

 そう、その“レイヴ”ムーブメントとほぼ同時期に、AMIGAっていうパソコンはイギリスでも大流行したんだけど、MODのファン層と80年代、90年代以降のテクノ好きの人がカブるのは、この辺の事情も関係してるんじゃないかな。ということで、今回は“レイヴ”発祥の地・イギリス産のトラッカーと、テクノレーベルの中ではかなり長く続いている名門“R&Sレーベル”があるほどテクノ人気の高いベルギー産のトラッカーを紹介したいと思う。MODの世界は、今も進化し続けているんだよ!

イギリス産まれの「MED Soundstudio」

「MED Soundstudio」  「MED Soundstudio」は、AMIGA上では古くから知られるMODトラッカー「OctaMED」のWindows版。もともとは8つのトラックをもつことから8を表す“Octa”がアタマについていたんだけど、Windows版はその制限もなくなり「MED Soundstudio」という名称になった。MOD、S3M、XMのほか、独自形式のMEDファイルに対応し、ステレオ16bitの豪華なサンプリング音色や、超強力なフィルターを使いまくることができる。

 また、この「MED Soundstudio」は、パソコンのキーを叩けばシンセサイザーのようにサウンドを確かめられる。それに、曲を再生しながらキーを叩けばノートが追加録音される“オーバー・ダブ”のような機能や、まるで簡易版「GoldWave」のような感じでサンプリングしたデータの波形編集ができる機能もある。「もっと直感的に作曲したいよ」って人には、ぜひオススメ!

【著作権者】RBF Software
【ソフト種別】デモ版
【バージョン】1.1(00/03/25)

□WELCOME To MEDSoundStudio.co.uk
http://www.octamed.co.uk/

質実剛健、強力なフィルター「MadTracker」

「MadTracker」  「MadTracker」は、ベルギーで産まれたWindows版MODトラッカー。「Modplug Tracker」で使える“レゾナンスフィルター”や“ハイパス・ローパスフィルター”などはもちろん、音をノイズっぽくする“Distortion”、左右にパンしながらのディレイ効果“Stereo Delay”などの独特なフィルターも備えている。そのため、「MadTracker」では“MT2”と呼ばれる強力な表現力をもった、独自のファイルフォーマットを採用している。インターフェイスを英語とフランス語に切り替え可能で、ショートカットキーなどはDOS版で人気のトラッカー「FastTracker2」互換となっており、「FastTracker2」に慣れた人には特に使いやすい。

 読み込み可能なMODフォーマットは、MOD、S3M、XM、IT、MT2。書き出しはXMとMT2でのみ可能。フィルターの効きも強力なので、ぜひ一度試してみてほしい。ただひとつ難を言えば、“MT2”は現段階では「MadTracker」上のみでしかきちんと再生できない。「MadTracker」の次回バージョンのリリース時に、再生用のDLLが同時リリースされるそうなので、他のプレイヤーで再生できるようになるかもしれない。今後の展開を期待しよう。

【著作権者】Yannick Delwiche 氏
【ソフト種別】シェアウェア 20ドル
【バージョン】2.0.5

□MadTracker
http://users.skynet.be/madhouse/madtracker/

 さあ、10回続いたこの連載も、今回でおしまい。今まで読んでくれた人、どうもありがとう。80年代後半にイギリスから世界へ爆発的にその人気を広めたエレクトロ・ダンス・ミュージックは、アイデアと安い機材さえあれば誰だって音楽に挑戦できるってことを教えてくれた。そこには、ミュージシャンとリスナーの境はなかった。そう、音楽はとても身近なもの。誰にだってできるんだから! この連載を通して僕は何度も何度も主張しているつもりだけど、大事なことはトラッカーやシーケンサーの使い方の細かいテクニックではなく、音楽を愛する心、そして作った曲を人に楽しんでもらいたいという気持ち。それからなにより、自分が楽しんでしまうこと! これが一番重要なんだと思う。ソフトの使い方がわからなくなっても、頑張れば必ず習得できるはず。音楽を楽しむ気持ちだけはいつも忘れないでいて。それでは、このへんで… Chill out or die!

後藤 智博

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