【第94回】
「International Cricket Captain 2000」
ゲームで学ぶ、初めてのクリケット
(00/08/09)
「クリケット」。名前は耳にしたことがあっても、実際にそれがどんなスポーツなのかを知っている人は少ないと思う。イギリスをはじめとする英連邦諸国の国技ということだが、いかんせん、日本国内での知名度は低い。実は筆者も、「野球の原形となったスポーツ」という程度の知識しかない。…というわけで、なんかかなり無謀な気もするのだが、今回はぶっつけ本番でクリケットシミュレーション「International Cricket Captain 2000」のデモ版にトライしてみよう。満足な観戦経験すらないのに、はたして本当にプレイを楽しむことができるのだろうか?
クリケットってどんなスポーツ?
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メインメニューから“Single Player Career”をクリック
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ゲームを始める前に、クリケットがどんなスポーツなのか、軽く勉強しておきたい。クリケット関係のホームページからゲットした情報によると、おおむね以下のようになる。
クリケットは、13世紀にイギリスで生まれた球技だ。もともとは羊飼いが始めたゲームだったようだが、18世紀初頭にスポーツとして確立。その後大英帝国の植民地拡大に伴って世界中に広まり、現在はオーストラリアやニュージーランド、インドなど主に英連邦諸国を中心に親しまれている。意外にも、競技人口ではサッカーに次ぐ世界第二のメジャースポーツとのことだ。日本にも明治時代に伝えられたが、普及することなくいったん消滅した。しかし1980年頃から再びプレイされるようになり、現在は大学を中心に多くのクリケットクラブが設立されているという。なるほど。
クリケットのルールを学ぶ
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イギリス国内のチームからひとつを選ぶ。★マークの数を参考にしよう
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続いて、ルールを調べてみた。野球の原形になったといわれるだけあって、ルールたしかに似ている。1チームの人数は11人。まず“ボーラー”と呼ばれる投手が、“ウィケット”という棒にめがけてボールを投げる。ウィケットにボールが当たって倒れれば、1アウト。打者“バッツマン”はウィケットが倒されないよう、…つまりアウトを取られないよう、バットでボールを弾き返す。打つというより、むしろウィケットを守るのが目的だ。弾き返したボールを野手が追いかけている間に、自分の反対側にあるもうひとつのウィケットまでランニングできれば1点。往復できれば2点。野球と同様に、打った球をノーバウンドでキャッチされたり、野手からの返球がランニングより早くウィケットに到達すれば、それも1アウトとしてカウントされる。10アウトを1イニングとして交互にプレイし、得点の多い方が勝ち。現在は1イニング制が一般的とのこと。
野球と異なる点を挙げると、まず第一に、打者がフィールド上に2人いるという点。実際にボールを打つのは1人だが、もう1人は反対側のウィケットに待機し、走者の役割を果たす。また、ボーラーは6投球ごと(これを1オーバーと数える)に交代が義務付けられ、2オーバー以上続けて投げることはできない。打者はフィールド上のどこに向けて打っても構わないので、野手は打者を取り囲むように守備をする。したがってフィールドは扇形ではなく、直径140mの円形になっている。
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2人のバッツマンに打撃スタイルを指示
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デモ版の起動から試合開始まで
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出場する11名を選ぶ。よくわからなければ、初期設定のままでいい
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どうも、いまひとつピンとこないのだが、このまま調べるだけではらちが明かない。あとはゲームをしながら学ぶことにして、とりあえず遊んでみることにした。デモ版のファイルは、「International Cricket Captain 2000」のホームページからダウンロードできる。公開されている2つのアーカイブのうち“2KDemo.zip”のほうがデモ版の本体で、“Commentary.zip”はゲームで使われるサウンドファイルだ。“2KDemo.zip”だけでも楽しめるが、できれば両方ダウンしよう。2つとも同じフォルダに解凍し、“Cric2000”というアイコンをダブルクリックするとデモ版が起動する。
メインメニューが表示されたら、“Single Player Career”をクリック。続いて“Full game”をクリックし、一覧の中から好みのチームを選ぶ。画面の右側に“Batting(打撃)”と“Bowling(投球)”のスキルが★マークの数で表示されるので、それを参考にするといいだろう。ざっと見たところ、ヨークシャーチームが強いようだ。プレイヤー名とスキルレベルを決めたら、“Start Game”をクリック2000の4月1日からリーグが開幕し、以後スケジュールに従って他のチームとの試合を続けていく。
「International Cricket Captain 2000」はシーズンを通して戦うペナントレース形式のゲームなので、選手のコンディションや起用がとても重要なのだが、いまはまだそこまで考える必要はない。初期設定のままでOK。相手チームとの試合が決まったら“Play Match”をクリックして、いよいよプレイにはいる。
監督として指示を与える
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アウトか得点した場合のみ、プレイシーンが表示される
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このゲームにおけるプレイヤーの役割は、チームを指揮する監督だ。状況を見ながら指示を与え、必要があれば選手を交代させる。したがって、操作そのものはそれほど難しくない。こちらが攻撃の場合は2人のバッツマンを指名し、それぞれに打撃スタイルを指示する。守備的な打撃に徹するか、それとも積極的に打って出るかを決めるわけだ。選手の顔写真の下にある赤いゲージで打撃スタイルを変更することができるが、とくにこだわりがなければ初期設定のままでいいだろう。画面右下に、“NextOver”と“Ball”という2つのボタンがあるので、これをクリックして試合を進める。“Next Over”をクリックすると6球ぶん、つまり1オーバーまとめて進み、“Ball”をクリックすると1球ずつ試合の経過を見ることができる。アウト、もしくは得点した場合のみ、プレイシーンが表示される仕組みだ。
逆にこちらが守備の場合はボーラーを指名し、ボールを投げる強さとコース、バウンドさせる位置、そして守備のフォーメーションを決める。ただし、これは相当クリケットに詳しくないと理解できないはずだ。とりあえずこれも、初期設定のままで行こう。あとは攻撃のときと同じように、画面右下にある“Next Over”と“Ball”のボタンをクリックして、試合を進めるだけ。リーグ戦の場合は50オーバー、計300球で得点を競う。
世界最強のクリケットチームを育てる
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野手がボールを追いかけている間に、バッツマンが走って得点を稼ぐ
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こんな具合にプレイヤーは監督として試合を眺め、必要なときにだけ指示を与えればいいので、アクション性は皆無。国産ゲームでいえばアートディンクの高校野球シミュレーション「栄冠は君に」、もしくはパリティビットの野球ゲーム「ベストプレープロ野球」に近い作品だ。監督がしなければならないのは、選手の起用方法や守備フォーメーションの研究、チームのコンディション維持であって、個々の試合はその結果に過ぎない。「International Cricket Captain 2000」は極めて戦略的なゲームで、そのぶん奥も深そうだ。
しかし、だからといって「おもしろいか?」と問われると返答に困る。なんせ、ほとんどルールがわからないまま手探りで始めたのだし、登場するチームや選手にもまるで馴染みがない。ゲーム全体にメリハリが乏しく、どちらかというと画面のデザインも地味だ。プレイを続けるのが精一杯で、とても楽しめるところまでは至らなかった。クリケットに詳しい人ならそれなりに満足できる内容に違いないが、いきなりのプレイではこのあたりが限界だろう。
だが、思わぬ収穫もあった。いままでは全く興味がなかったクリケットが、ほんの少しだけ身近に感じるようになったのだ。大雑把ではあるがルールを覚えることができたし、何度か試合をしているうちに、そのおもしろさを垣間見ることもできた。スピード感では野球に及ばないが、クリケットにはクリケットならではの魅力がある。試合の流れが落ちついているぶんのんびり楽しめそうだし、実際、女性や高齢者の愛好家も多いと聞く。野球がアメリカのスポーツであるのに対して、クリケットは、なるほど、たしかに英国的なスポーツなのかもしれない。
デモ版でもたっぷり楽しめる
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こちらが守備の場合は、ボーラーに投球を指示。フォーメーションも変えられる
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「International Cricket Captain 2000」のデモ版は、かなり制限が緩い。シングルプレイならイギリス国内のリーグ戦を存分にプレイすることができるし、対戦プレイならオーストラリアやニュージーランドの代表チームを含めた国際戦を楽しむこともできる。デモ版とは思えないほど充実した内容だ。製品版では、シングルプレイでも国際戦が楽しめるほか、ネットワークを経由した対戦プレイも可能とのこと。ただし、というか当然というか、日本国内での販売や日本語版への移植は今のところ予定されていない。
発売元 | Empire Interactive |
価格 | 24.99ポンド |
発売日 | 発売中 |
(2KDemo.zip、16.4MB、ゲームデモ)
□「International Cricket Captain 2000」のホームページ
http://www.cricketcaptain.com/
(駒沢 丈治)
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