ひぐちたかしの新作ソフト紹介


【第92回】

「YutoAPスタジオ」

日本語でWindowsプログラミング! アプリケーションとして配布も可能

(00/08/14)

 パソコンの操作が簡単になったと言われるWindowsでも、プログラミングはまだまだ初心者にとって敷居が高い。フリーで入手できて比較的とっつきやすいと言われるPerlスクリプトなどでも、難しい構文や英単語の羅列のような関数が出てきて、わけがわからず頭を抱えてしまう筆者のような人も多いことだろう。そこで今回は、わかりやすい日本語でスクリプトを書いていくだけでWindowsプログラムを作れるというソフトを紹介しよう。

どんなソフト?……わかりやすい日本語のスクリプト言語を使ってプログラミング

「YutoAPスタジオ」v3.3  「YutoAPスタジオ」は、日本語を使った作者オリジナルのスクリプト言語「テクノロジーターミナルスクリプト」(TTS)を使ってWindowsのプログラムを作成できる開発ソフト。TTSは「ウィンドウを表示」「ウィンドウのはばを400へかえろ」といったようにわかりやすい日本語を使うスクリプト言語で、MIDIやアニメーションを再生したり、絵を描いたり、ファイルの保存や印刷などが簡単にできる。作成したスクリプトは「YutoAPスタジオ」で開いて実行できるほか、専用ランタイムとセットにして独立したアプリケーションのように実行したり配布できるようになっている。

 TTSでは個々のコマンド(命令)が「終了」「さくじょ」「くりかえせ」のようにすべて日本語でできており、さらに「○○を××しろ」「△△は□□にかえろ」といった日本語の自然な語順で記述することができる。また語順や助詞が多少変わっても日本語として同じ意味になるなら問題なく実行されるため安心だ。もちろん、スクリプトを組んでいくのに一定のルールはあるが、スクリプトが自然な語順の日本語で記述できるので、コマンドやプログラムの組み立てを文法面でも考えやすく、プログラミングの経験がない人にとっても取り組みやすいといえるだろう。

 「YutoAPスタジオ」でプログラムを作るには、白紙の状態からスクリプトを書き始めるか、またはウィザードに従ってあらかじめ用意されているテンプレートを選び、スクリプト全体をざっと組んでから細かいスクリプトを手直ししていくという2種類の方法がある。

 白紙の状態からスクリプトを書き始める場合は、編集画面に実行したいコマンドを上の行から順番に入力していく。せっかくWindows用のプログラムを作成するのだから、まずは“ウィンドウを表示”といった命令で、プログラムを実行するためのウィンドウを作成しよう。その後、“ボタンを作れ”などの命令で、プログラムに必要なオブジェクトをウィンドウに配置する。オブジェクトを配置する命令はいちいち手で入力しなくても、ツールメニューの[オブジェクトの挿入]でオブジェクトの種類を選択するだけで、スクリプト中に貼り付けることができる。

 ウィンドウを作成する部分のスクリプトを記述したら、続けてプログラムの本体部分のスクリプトを記述する。「再生」「さくじょ」などさまざまな命令があるので、ヘルプのコマンドガイドを参照しながら入力するとよいだろう。なお、MIDIファイルを再生したり、今日の曜日を表示するなど、複数のコマンドを組み合わせた小さなスクリプトが“チッププログラム”として用意されており、ツールメニューの[チッププログラムの挿入]で、スクリプト本体に挿入できるようになっている。

 このほかTTSでは、三角形を描くスクリプトなどの小さなスクリプトを、“てじゅん”として定義することができる。1つの“てじゅん”ごとに別々の名称をつけることができ、スクリプトに“てじゅん”の名称を記述するだけで定義した内容が実行できるというものだ。“てじゅん”は、自分で自由に定義することができ、「YutoAPスタジオ」のツールメニューの[てじゅんの挿入]で、“てじゅん”を定義するためのひな形が挿入できるようになっている。

 最初にテンプレートを選んでからスクリプトを作成する場合は、オブジェクトや“てじゅん”のひな型、“チッププログラム”を必要な分だけ先に選択して貼り付けておき、それらを並び替えたり書き換えてスクリプトの全体を作っていくことになる。テンプレートには[ウィンドウズアプリケーション]、[スクリーンセーバー]、[メニューのあるウィンドウ]、[ロゴ]、[固定ウィンドウ]の5種類が用意されている。

 作成途中のスクリプトは、「YutoAPスタジオ」上でいつでも実行して試してみることができ、エラーになる場合はどんな問題があるのか簡単なメッセージが表示される。スクリプト中の一部分だけ取り出して実行することはできないが、ツールメニューから[命令ウィンドウ]を開けば入力したコマンドを1つずつ実行させることができるので、バグ探しに利用するとよいだろう。

 作者のホームページでは、TTSのさまざまなサンプルスクリプトが配布されているので、これらを「YutoAPスタジオ」で読み込んで参考にするといい。サンプルスクリプトのコメント行を読みながら自分で少しずつ改造してみると、TTSの理解が早いだろう。

ここがスゴイ!……スクリプトは専用ランタイムで独立に実行、配布も可能

ウィザードでチッププログラムを選択  「YutoAPスタジオ」のスゴイところは、やはり日本語スクリプトのわかりやすさ、とっつきやすさに尽きる。しかし作成したスクリプトにランタイムをつけて直接実行したり、他人に配布することができる点も見逃せない。作者により別途公開されているTTS実行用の「TTSランタイム」を入手し、自分で作成したスクリプトと同名のEXEファイルにリネームしよう。このEXEファイルとスクリプトを同じフォルダに置いてEXEファイルをダブルクリックすれば、スクリプトがすぐに実行される。ちょうど独立したアプリケーションソフトのように、EXEファイルのダブルクリックだけでスクリプトを実行できるわけだ。自分で満足のいくスクリプトができれば、スクリプトとリネームした「TTSランタイム」をセットにして友達にあげたり、ホームページで公開することも自由に行って構わないそうだ。

こんな場合に便利……簡単なプログラム開発に、学習教材に

命令ウィンドウを開いてコマンドを1つずつ実行  ちょっとしたことなのに市販のソフトや入手できるオンラインソフトでは自分の望む処理が行えないようなとき、この「YutoAPスタジオ」を使ってプログラムを自作してみるといいだろう。複雑で本格的なプログラミングには向いていないが、画像を表示させながら音楽を再生するとか、動作のシンプルなスクリーンセーバー程度なら数行のスクリプトを書くだけで簡単に作成できる。また、小中学校の学習教材に使うのもよさそうだ。

使用上の注意は?……困ったときはヘルプとサンプルを参考に

 ただ、実際にプログラミングに挑戦してみると、簡単なスクリプトでもうまく動かない場合はあるようだ。筆者はプログラミングについてはほとんど素人で、せいぜいエディターや通信ソフトのマクロを組んだことがある程度なのだが、ヘルプファイルに書かれた通りにスクリプトを書いてもうまく動かず、最初からいきなり30分くらい悩んでしまった。原因はちょっとした勘違いだったのだが、ヘルプの記述ミスらしき面もあったようだ。まだリリースから間がなくスクリプトの仕様が固まっていないのかもしれない。とにかく最初のうちは、ヘルプをよく読んでサンプルのスクリプトを積極的に参考にするようにしたい。

【著作権者】馬場 祐人 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】3.3(00/08/14)

□ゆうとのホームページ 「アット ゆうと」
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-SanJose/7471/

(ひぐち たかし)

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