ひぐちたかしの新作ソフト紹介


【第94回】

「DoggyPaint」

2Dのイラスト描きに! マスク/レイヤー対応のフルカラーペイントソフト

(00/08/28)

 「大は小を兼ねる」とはいえ、ちょっとしたイラストを描くために数万円もする市販の巨大なグラフィックソフトを使うと、多機能すぎて必要なメニューを探しにくかったりリソース消費が大きいなど、かえって不便なことがある。サッと起動してサクサク描いて、ちょちょいと直してポイッと保存できるような、小回りの利くペイントソフトがほしいところだ。しかし、いくらサッと使えるといってもWindows標準の「ペイント」ではあまりにも機能が足りなすぎる。イラストを描くなら、やはり背景と人物を組み合わせるためにレイヤーくらいは使いたいし、下絵から主線を起こしやすい機能があるとうれしい。そこで今回は、特に2Dのイラストを描くのに適した、フリーのペイントソフトを紹介しよう。

どんなソフト?……2Dのイラスト描画に適したフルカラーペイントソフト

「DoggyPaint」v1.05  「DoggyPaint」は、特に2Dのイラスト描画に適したフルカラーペイントソフトだ。レイヤーやマスクに対応しており、画像の合成や透明化、下絵起こしが簡単にできる。またマスクにさまざまな効果をかけられるため、背景に濃淡のグラデーションがかかっているような凝った画像も容易に描くことができるのが特長。Windows 95/98で動作するフリーソフトで、フルカラーのグラフィック環境が必要だ。

 「DoggyPaint」の外見は、メインウィンドウからサブウィンドウが独立して開くSDI形式。起動するとまず、ファイル操作やコピー/貼り付けなどの編集操作、サブウィンドウの表示/非表示を行う[メインウィンドウ]と、実際に絵を描く白いキャンバスが表示された[ペイントウィンドウ]、およびペン先などを選ぶ[ツールウィンドウ]の3つのウィンドウが現れる。メインウィンドウからはペンの色を決める[カラーウィンドウ]など新たなウィンドウも表示できる。ウィンドウの数が多くなるとごちゃっとした印象も受けるが、基本はツールウィンドウからペンを選んでペイントウィンドウ上に絵を描き、メインウィンドウからファイルに保存するという流れだ。各々のウィンドウは画面上の好きな場所に置いたり、不要なら閉じておけるため、操作の邪魔にはならない。

 ツールウィンドウにはズームの他、アンドゥボタン、ペン/消しゴム、範囲指定、図形ツールなどのボタン類が並ぶ。例えば赤い曲線を描きたいなら、ツールウィンドウのペンボタンを押してウィンドウ下方に表示されるスライドバーからペンの太さを選択し、カラーウィンドウで色と透明度を決めて、ペイントウィンドウの白いキャンバスに描く。またペン先はほかにも、ブラシ、スプレー、ぼかしブラシ、ペンキ缶など、ペイントソフトとして基本的なものは揃っている。

 このソフトの特徴的な機能のひとつにマスク処理があげられる。マスク処理は画像の一部を保護するもので、マスクした領域は線を描くなどの変更ができなくなる。マスク用の領域を定める画像を描くには、ツールウィンドウにあるマスクボタンを押し、ペイントウィンドウをペイントモードからマスク編集モードに切り替えて行う。マスク編集モードでは基本的に白黒のグレースケールでマスク画像を描くが、黒く塗った部分はマスクされ、白く残した部分はマスクされないことになる。

 マスクは領域保護のほか、半透明化に使うこともできる。すなわち、マスクウィンドウの[描画強度]をスライドバーで変更するとグレーのマスクを描くことができ、ペイントモードに戻って新たに線を描くと、グレーのマスクをかけた領域では薄い半透明の線になる。グレーが濃いほどマスクは強くなるので、ペイントモードでマスク領域に上書きする線は薄くなり、真っ黒のマスクなら線が描けなくなる。逆にグレーが薄いほどマスクは弱くなり、マスク領域上に描く線は濃くなるわけだ。

 また、マスクウィンドウの[マスク効果]ボタンを押すと、[マスク効果ウィンドウ]が現れてマスク領域を定めるマスク画像にさまざまなエフェクトをかけられる。マスク画像が溶けたような感じになる[メルト]、マスクの濃い部分がにじんだ感じになる[後光]、グラデーションのマスクを作成する[グラデーション]など6種類のエフェクトが用意されており、リストから簡単に選んでエフェクトをかけられる。マスクにエフェクトをかけることで、ペイントモードに戻ったときに画像が淡くにじんだ感じになったり、半透明のグラデーションになるなど、凝った描写ができるわけだ。

 一方、レイヤー機能では最大30枚までのレイヤーを扱うことができる。各レイヤーは[レイヤウィンドウ]にサムネイルとして表示され、それぞれ一時的に表示/非表示を切り替えられる。レイヤーを合成して新たなレイヤーを作るには、それぞれのレイヤーにマスクをかけ、合成方法を[マスクブレンド]にすることで行える。すなわち、上位のレイヤーにマスクをかけ、[マスクブレンド]によってマスク領域を透明にすれば、その領域に下位のレイヤーが透けて表示されることになる。また、明度を任意に指定し、その明度よりも暗い領域を透明にして下位のレイヤーを透けて表示させたり、逆にその明度よりも明るい領域を透明にして下位のレイヤーを透けて表示させることもできる。この辺りのレイヤーとマスクの組み合わせによる合成処理は、一般的なペイントソフトのレイヤー機能と違ってクセがあるため、操作には慣れが必要かもしれない。

 できあがった画像はメインウィンドウのファイルメニューから保存する。BMPとJPEG形式での読み書きができ、JPEGでは圧縮率も設定できる。[フォルダ保存]を選べば最近保存したフォルダがヒストリーとして表示され、選択しやすくなっている。

ここがスゴイ!……“ペン入れ”や“定規”など、かゆいところに手が届く

[マスク効果]でマスクをライト風に  「DoggyPaint」のスゴイところは、その使い勝手だろう。決して目新しい機能が盛りだくさんの派手なペイントソフトではないのだが、かゆいところに手が届くような工夫が随所にみられるなど、“いぶし銀”の渋さがあってなかなかユニークだ。

 たとえば“ペン入れ”機能がそのひとつ。下書きとして描いたラフな絵に“ペン入れ”をして主線を描くというのはイラストなどを描くときによく行われることだが、このソフトには“ペン入れ”を支援する機能がある。[ペン入れ]ボタンを押し、下書きで描いた線の上から新たな線を描こうとすると、下書き線に沿って描けるのだ。ペン先が暗い色に反応するため、マウスカーソルが多少ずれても下書き線のない白い部分にはみ出さずに濃い主線を描ける。また曲線補間をONにしておけば、微妙な手ブレを防いでスムーズな曲線を描くこともできる。

 さらに、定規機能として三角定規や雲形定規があるのも面白い。紙に定規をあてて線を描くように、ペイントウィンドウに三角定規や雲形定規の形をした薄い色の枠が現れ、この枠に沿ってマウスカーソルを動かせば直線や曲線をきれいにひくことができるのだ。定規は大きさを変えたり回転させたり裏返しにできるため、タブレットに本物の定規をあてるよりも簡単に思い通りの線をひくことができるだろう。

こんな場合に便利……イラスト素材の作成や4コマ漫画などに

[ペン入れ]で下絵の上に主線を描きやすい  ペイントソフトとしての基本がしっかりしており、これだけでちょっとしたイラストを描くには十分だろう。フリーソフトなので手軽に使えるのもありがたい。ホームページ用のイラスト素材や4コマ漫画などを描く用途によさそうだ。しかしペン先の種類は決して多いとは言えず、範囲選択も矩形に限られるなど、機能的にもの足りない部分も数多くあるのは事実。凝った3DのCGを描くような場合には向いてないし、ペイント系のグラフィックソフトとはいえ、シャープ化やコントラスト調整のように基本的な画質調整を含め、画像のレタッチは事実上できないと言っていいだろう。

使用上の注意は?……レイヤー操作やアンドゥ制限に注意、筆圧感知には未対応

 実際に使ってみて最初につまずいたのが、レイヤーの使い方だ。一度理解できれば支障なく使えるのだが、少なくとも筆者が今まで使用してきた一般的なペイントソフトでのレイヤー操作とはかなり違うために、意図した通りにレイヤーを扱えるようになるには時間がかかってしまった。将来的にはヘルプの説明に実際のサンプル操作を加えるなどしてほしいところだ。また、ペイントウィンドウでのアンドゥは16回まで、マスクのアンドゥは3回までに制限されており、アクティブレイヤーを変更するとアンドゥできなくなってしまう点は不満が残った。やはりメモリが許す限りの無制限アンドゥが望ましい。また、タブレットで利用する場合の筆圧感知にも、ぜひ早期に対応してほしい。

【著作権者】HKR.Jon 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.05

□作者: HKR.Jon
http://www.vector.co.jp/vpack/browse/person/an022173.html

(ひぐち たかし)

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