【第97回】
SLシミュレーター「蒸気機関士」
蒸気機関車の力強い走りを体感!!
(00/08/30)
タイトーの『電車でGO!』が予想以上のヒットを飛ばしてからというもの、列車の運転シミュレーションは新しいジャンルとして確立したといえるだろう。こうした動きは日本国内にとどまらず、聞くところによれば、マイクロソフトも来年早々に列車の運転を行う「トレインシミュレータ」を発売するらしい。すでに定番となった「フライトシミュレータ」に並ぶビックタイトルを目指すというのだから驚きだ。
さて、今回は蒸気機関車の運転をテーマにした『蒸気機関士』という作品を紹介しよう。いまもSLを運行する静岡県の大井川鉄道を、そっくりそのままゲーム化したシミュレーションゲームだ。
蒸気機関車で大井川鉄道を走る!!
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メインメニュー。デモ版では初級コースの一部を試すことができる
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大井川鉄道は、静岡県の金谷駅から大井川沿いをさかのぼり、井川ダムに通じる千頭駅を経由して上流の井川駅まで伸びている鉄道で、接岨峡温泉などの観光地を結ぶ観光鉄道として利用されている。資料によると、昭和26年に電化されてから蒸気機関車はいったんその姿を消したが、昭和51年に復活し、その後も観光用として毎日1~2往復運行されているとのこと。本線の全長は39.5Km。このゲーム『蒸気機関士』は大井川線を丸ごとデータ化し、駅だけでなく周囲の風景までも再現している。登場する機関車は、いまも同線で現役活躍中のC11型だ。
なおこのゲームは処理が重く、相応のCPUパワーとビデオ表示能力が求められる。ドキュメントによると、推奨環境はPentium III 600MHz以上、もしくは同等の処理能力を持つAthlon。メモリは128Mバイト以上。ビデオカードも、nVIDIAのGeForce256が推奨されている。これ以下の環境では動作が極端に遅くなる場合があるので、ご注意を。ノートパソコンのユーザーには、ちょっと厳しいかもしれない。
機関車の操作はゆっくり行うのがコツ
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家山駅を出発するC11 227蒸気機関車の勇姿
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加減弁を調製しながら徐々に速度を上げていく。急に加速すると車輪が空転してしまう
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デモ版のファイルをダウンロードしたら、エクスプローラから実行し、パソコンにインストールする。インストールが完了すると、デスクトップに「SLSimulator 体験版デモ」というアイコンが表示されるはずた。あとはこれをダブルクリックして、デモ版を起動すればいい。メインメニューが表示され“初級コース”をクリックするとゲームがスタートする。解像度や表示精度は“設定”メニューで変更できるが、美しい映像にしようとあまり背伸びをすると、画面表示が極端に遅くなり、とてもゲーム楽しめる状況ではなくなってしまう。無理をせず、ほどほどの設定でプレイしよう。
デモ版での目的は、12時24分45秒に家山駅を出発し、12時30分30秒までに2つ先の笹間渡駅に停止することだ。発車時間になったら加減弁を開いて蒸気機関車を進める。操作方法は以下のとおり。
加減弁を開ける(出力アップ) | [↓]キー |
加減弁を閉じる(出力ダウン) | [↑]キー |
ブレーキ弁の調整 | [←]/[→]キー |
逆転機を正方向に回す | [A]キー |
逆転機を逆方向に回す | [Z]キー |
汽笛を鳴らす | スペースバー |
運転操作パネルのON/OFF | [F1]キー |
視点の切り替え | [F2]/[F3]/[F4]キー |
ステータス表示のON/OFF | [CTRL]+[F1]キー |
回り込んでズームイン | [CTRL]+[F2]キー |
回り込んでズームアウト | [Ctrl]+[F3]キー |
“初級コース”では、状況に合わせて画面に操作案内が表示される。とりあえずは、それを見ながらキーを押していけばいいだろう。蒸気機関車は重量が重く、速度を機敏に変更することができない。キーを押してから実際の走行に反映するまで、時間がかかることを忘れずに。何度もキーを連打するのではなく、結果を見ながら間隔を開けてキーを押すのがコツだ。
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運転操作パネルを消せば、フル画面で映像を楽しめる
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加減弁、減速機、ブレーキをマスターせよ
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ブレーキと加減弁を使って減速
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“初級コース”ではSLの運転がわかりやすくデフォルメされており、加減弁とブレーキ、そして逆転機の操作をマスターできればなんとかなる。完全な我流なので恥ずかしいのだが、筆者がこのゲームで学んだ基本的な運転手順を紹介しよう。
出発時間になったら、まず加減弁を開いて蒸気を送り、徐々に速度を増して行く。加減弁というのは蒸気の流れを制御するためのもので、蒸気機関における出力調整と理解すれば話は早い。加減弁を開けばパワーが得られ、逆に閉じればパワーが失われて徐々に減速するというわけだ。走行中の速度は時速40Kmが一応の目安だが、コースの途中には時速35Kmに制限されている区間があるので、ここではその制限速度を守ること。走行中の速度の調整は、逆転機を使って行う。逆転機というのは蒸気機関におけるトランスミッションのようなもので、前進・後退を切り替えることができるほか、ボイラーの出力を変えずに速度の調整ができる。発車や停車にともなう加速・減速は加減弁を使って行い、走行中の速度調整は逆転機を使って行うのが“初級コース”での基本だ。
停車駅が近づいたら、今度は加減弁を閉じて蒸気の流れを制限し、機関車の速度を徐々に落としていく。続いて段階的にブレーキをかけていき、ホームの停車位置で完全に停止させる。もし停車位置がズレてしまった場合は、逆転機を使って微調整するといい。
蒸気機関車の運転はとっても難しい
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蒸気機関車本体はもちろん、周囲の風景も美しく描かれている
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とはいっても、蒸気機関車の運転はとても難しい。区間を決められた時間どおりに走り、なおかつ無理な加速や減速をすることなくピタリと停車させるのは、ほとんど神業だ。筆者も何度かトライしてみたが、時間を守れば運転が荒れ、運転に気をつければ時間が守れない…といった具合に、なかなか両立させることができなかった。蒸気機関士たちの腕やカンが、いかにスゴイかを痛感されられた。
ちなみに“初級コース”では、ボイラー圧を高めるためのブロワーバルブとシリンダーに溜まった水を排水するためのドレインコック、ピストン内の空気を抜くためのバイパス弁の操作、および投炭が自動化されているが、“中級コース”と“上級コース”ではプレイヤーが自分で判断して行わねばならない。この上さらにもろもろの操作が加わるのかと思うと、その難易度の高さに思わず目が眩みそうだ。
職人的ワザが冴えるすばらしい作品
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カメラアングルや視点の位置を自由にコントロールできるところが楽しい
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実によくできた作品だと思う。筆者は蒸気機関車の運転はもちろん、大井川鉄道に乗った経験もないため、「どこまでリアルか?」という判断は残念ながらできないが、それでもかなり本気で楽しむことができた。一見タイトーの『電車でGO!』と同様のゲームに見えるかもしれないが、シミュレーションとしては、こちらのほうが格段に緻密であると感じた。
映像の美しさもすばらしい。筆者のビデオカードViper V550でさえここまで表現できたのだから、GeForce2などのユーザーなら、もっと美しい画面を楽しめるはずだ。モデリングも精巧で、機関車が全部でいくつのパーツで構成されているのか、ちょっと見当がつかない。河原でカメラを構える観光客や、駅のホームで列車の到着を待つ人々まで配置されている点にも驚く。オタク的といえばオタク的だが、なにはともあれ、久々に職人のコダワリを見た気がする。
製品版には生の音声が多数収録
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笹間渡駅に到着すると6項目+総合評価が表示される。初級とはいえ、かなりシビアだ
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デモ版では、3種類用意されているレベルのうち“初級コース”のみを試すことができる。運転できる区間も、家山~抜里~笹間渡に限られる。走行時間は約6分で、正直、ちょっと物足りない。デモ版のサイズが倍になっても構わなかったから、あと1~2区間走らせてもらいたかったと思う。しかし“初級コース”といっても操作はなかなか大変で、満足のいく評価を得るまで何度も繰り返して楽しめるはずだ。もちろん製品版ではすべての機能、すべての区間を走ることができるほか、大井川鉄道で収録された生の音声を聴きながらプレイできるという。製品版は現在すでに発売中で、価格は10,800円とのこと。
発売元 | スマーツジャパン |
価格 | 10,800円 |
発売日 | 発売中 |
(SLSimDemo-110.exe、25.7MB、ゲームデモ)
□「蒸気機関士」のホームページ
http://www.anaheim.co.jp/(2013/06/13追記:現在の販売元にリンクを変更しました)
(駒沢 丈治)
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