【第108回】

「メルプリI」

eコマースにも! メールを定期的に受信してFAXのように自動印刷する

(00/12/11)

 メールは手軽にペーパーレスでやりとりできるのが魅力だが、郵便やFAXで注文を受けていた商店などがeコマース化によってメールでも注文を受けるようにしたとき、ペーパーレスゆえの不便さを感じると聞く。例えばメールはメールソフトを操作しないと読めないし、万一PCが動かなくなったときに困る、といったことだ。これがFAXなら、受け取る側は何もしなくても自動的にFAX機が受信して紙に出力するし、原則的に出力先は紙なので何度でも簡単に読み返せる。紙であれば誰かに見せたり手渡しするのも簡単だ。そこで今回は、メールをFAXのように紙に出力して利用するソフト、すなわちメールを自動受信し、自動で印刷するというソフトを紹介しよう。

どんなソフト?……FAX感覚でメールを定期的に自動で受信して印刷する

「メルプリI」v0.9.84  「メルプリI(ワン)」は、メールサーバーからメールを定期的に受信し、特定のメールだけを自動的に印刷できるソフトだ。3つまでのメールアカウントを定期的にチェックし、届いているメールをPOP3サーバーから自動的に読み出して、あらかじめ登録しておいた文字列が件名や差出人名などの中に含まれる特定のメールだけを自動的にプリンターで印刷する。たとえば毎日たくさん届くメールの中から、件名に“注文書”という文字列が含まれるメールだけを自動的にプリントアウトすることができるわけだ。逆に、登録した文字列が含まれないメールだけを印刷することもでき、届いたすべてのメールを無条件に印刷することも可能だ。

 「メルプリI」の使い方は簡単。まず「メルプリI」をインストール後、環境設定でメールアカウントの登録を行い、LAN接続かダイヤルアップ接続かといったインターネットの接続方式の設定や、メール自動受信の時間間隔の設定、自動印刷用のプリンター選択などを行う。メールアカウントは最大3つまで登録でき、自動印刷するメールの条件もアカウントごとに設定できる。印刷条件の設定では、メールヘッダーの差出人名、受取人名、件名、メールソフト名(X-Mailer)、および本文について、検索文字列をそれぞれ入力できる。ちょうどメールソフトでメールの振り分けを設定するような感覚だ。このとき複数の文字列を半角スペースで区切って入力し、“全てを含む”、“一つでも含む”、“全て除く”の3種類の検索条件を設定することもできる。

 設定が終われば、正しくメールを読み出せるかチェックしよう。「メルプリI」のメインウィンドウ右側にある[手動受信印刷]のボタンを押すとメールサーバーにアクセスし、メールを読み出してウィンドウ左側に受信したメールをリストアップするはずだ。一覧の中のメールをダブルクリックすると別のウィンドウがポップアップしてそのメールの内容を読むことができる。続いて[手動印刷]ボタンを押して、選択したメールがプリンターで正しく印刷されるかどうかチェックしておこう。メールの読み出しも印刷も正しく行われたなら、[自動受信印刷]ボタンを押し、「メルプリI」を自動受信モードにしておこう。これで、先の環境設定で設定した自動受信間隔に従い、メールサーバーにアクセスしてメールを自動的に読み出し、登録したメール条件に合致するメールだけを自動的に印刷してくれる。

 なお、メールサーバーから読み出したメールは直ちにハードディスクに保存され、次第に一覧リストにたまっていく。内容を読み終えたり印刷して不要になったメールは、一覧リスト上で選択して[メール削除]ボタンを押せば削除できる。自動的に削除は行われないので、ときどき自分で削除するといいだろう。

ここがスゴイ!……重要なメールだけを自動的に紙に印刷して残せる

環境設定でメールアカウントを3つまで登録  「メルプリI」のスゴイところは、FAXの便利さをメールに取り込むという発想と、メールを最終的なアウトプットまで考えて自動化したことだろう。メールがペーパーレスであることや、メールソフトを開かなければ内容を読めないといったことは、メールにすっかり慣れた筆者のような人間には何の疑問もなく至極あたりまえに感じる。しかしずっと紙ベースで仕事や意思伝達をしてきた人にとっては、メールだと受け取って読んだだけでは紙に記録されないということに不安を感じて当然だ。そういう人には、受信したメールを必ず自動的に印刷するようにできる「メルプリI」は重宝しそうだ。また、メールの印刷条件を設定することで大事なメールだけを印刷できるのは、紙の節約という意味でもありがたい。

こんな場合に便利……メール注文を紙で残したいeコマースサイトに、忙しい人に

特定の文字列をメールヘッダーに含むメールだけを印刷  個人経営の商店などでホームページを作り、メールで通販の注文を受付けるようにしていても、最終的に伝票として処理する以上、FAXでの受注と同様に紙に印刷する必要がある。また顧客からのクレームなども、紙に印刷しておけばパソコンが使えない担当者であっても手渡しして処理できるという利点がある。そんな環境にオススメしたいのがこのソフトだ。もちろん商店経営者などに限らず、大事なメールだけを自動的に印刷して紙に“バックアップ”できるという意味では、メールを仕事で使っている人で、バックアップには無頓着な(筆者のような?)人にもオススメしておきたい。パソコンの調子が急におかしくなってWindowsが起動しなくなっても、日頃から大事なメールは常に自動的に紙に印刷して残してあれば安心だ。

使用上の注意は?……複雑な印刷条件の設定とパスワードの保存に注意

 実際に使ってみて気になった点もいくつかある。まず、印刷条件にあまり複雑な設定ができないのが残念なところだ。例えば「件名に“注文”または“Order”の文字列が含まれているメールは印刷」という同じ検索対象項目内でのOR条件は設定できても、「件名に“注文”の文字列が含まれているか、差出人が○○さんからのメールはすべて印刷」のように検索対象の項目をまたいだOR条件は設定できない。こういった印刷条件設定は今後の改良に期待したい。また筆者が試した限りでは、何らかのはずみでメールアカウントのパスワードが正しく保存されず、次回起動時にエラーになって届いているメールを読み出せないことが何度かあった。再現性や再現条件は不明だが、毎日届くはずのメールが急に届かなくなったら注意が必要だ。

【著作権者】なっちゃん 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】0.9.84(00/12/06)

□なっちゃんのフリーソフトの部屋
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/4490/

(ひぐち たかし)

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