【最終回】

Web用ムービーにエンコードして世界に発信!!

(00/12/22)


 フォトレタッチ、3D CG、ビデオ編集…マルチメディア系のオンラインソフト“だけ”でネットアイドルをプロデュースしよう! 窓の杜のネットアイドルだから、略して“杜ドル”だ。歌って踊れるネットアイドルのプロモーションビデオをつくってストリーミング配信するまでの奮闘記!! 今回いよいよ感動の最終回。

 オンラインソフトを使って窓の杜のネットアイドル=“杜ドル”をプロデュースするこの企画。前回、苦難の末オリジナルソング「Going Ahead」のプロモーションビデオがついに完成した。最終回となる今回は、Web用にムービーをエンコードする作業だ。これは杜ドルプロモーション作戦の最終段階であると同時に、世界に向けて発信するための第一歩となる大事な工程。んじゃ仕上げも気合でいってみるぜぇ!

エンコードはファイルサイズとクオリティのせめぎあいだ

 “杜ドル”は“窓の杜のネットアイドル”。だから、活動の舞台はWebページ上。せっかくつくったプロモーションビデオもWebから気軽に見てもらえなければ意味がないわけで、そのために必要になるのは“エンコード”という作業。でっかいDVのムービーファイルからキュッキュッと圧縮のかかったWeb向けのムービーファイルに変換してやらなければいけないのだ。

 この連載では、ビデオプレビュー版、CGプレビュー版、リリース版を「Windows Media エンコーダ」v7でエンコードしたWMV形式のファイルで公開してきた。Windows Media エンコーダ、WMV形式を支えているのは「Windows Media テクノロジー」と名づけられたマルチメディア技術だ。現バージョンのWMV形式のムービーが米Microsoftのホームページで公開されたときには、その圧縮率の高さと、画質、音質の高さにびっくりしたものだ。杜ドルのムービー公開をWMV形式にした理由の第一はこのクオリティの高さ。小さなファイルサイズで高画質っていうのは何物にも優先する。

 でも、実はクオリティ以外にもうひとつ理由があったんだよねぇ。それは「Windows Media エンコーダ」のウィザード機能。元になるソースファイルと出力するムービーファイルの名前、ビットレート、そして公開先サーバーがWebサーバーとストリーミングサーバーのどちらなのかなどを設定した“プロファイル”を選択すれば、最適化されたWMVファイルができあがるというお手軽さだ。締め切りに間に合わせるためにヒーヒーいいながら作業しているモッティ的にはこれもうれしかったりする。実際に公開しているWMVファイルは“広帯域NTSC用ビデオ(384Kbps)”というプロファイルを使ってエンコードしている。「ウィザードでカンタンにできるならそれでいいじゃん」という気もするけど、CG&DTVの現場に首を突っ込むことを生きがいとする“デジタルコンテンツやじうま”のモッティ的にはこのプロファイルというヤツをいじってクオリティを調整しないではいられない。実際、リリース版のWMVファイルのサイズは8.4MB。自宅からダイアルアップ接続している人にはちょっと躊躇しちゃう数字だ。

「Windows Media エンコーダ」v7
「Windows Media エンコーダ」v7
 っつーことで、現実的なサイズのWMVファイルを作るべくエンコード作戦開始。今回のソースはリリース版ムービーから冒頭の1分を切り出した“ミニ版”を使う。まずは、プロファイルに“単一チャンネルISDN用ビデオ(64kbps)”というプロファイルを指定してみる。「Windows Media エンコーダ」v7では64Kbpsのプロファイルを選ぶと、実際のファイルがもつビットレートは45kbps程度に抑えるようになっている。このプロファイルもオーディオに10.2kbps、ビデオに36kbpsという割り当てだ。で、できたWMVファイルを見ると、音はいいけど映像にブロックノイズが盛大に乗ってしまい「ちょっとこれは…」という感じのクオリティ。ビデオは240×176ピクセル、秒間のフレーム数であるフレームレートが15fpsで動いている。ここからオーディオのビットレートを削り、ビデオのサイズとフレームレートを落として画質をかせぐ方針で新規のプロファイルを編集する。

 まずはオーディオ8kbps、176×144ピクセル、10fpsという数値でエンコードしてみた。プロファイルを使ったWMVファイルに比べて音質も聞き取れないほどじゃないし、動きの滑らかさは落ちたけどノイズは減少した。でも横にライン状のノイズが乗るなぁ。インターレースが解除されていないみたいだ。インターレースとはテレビやビデオで使われている画面の表示方式で、画面の横のラインを偶数と奇数と分け、交互に切り替えながら表示するもの。ソースのAVIファイルはDVのフォーマットで、インターレースになっている。これはソースファイルを指定するウィンドウの[ビデオの最適化]タブから[ノンインターレース化]を指定すれば問題解決だ。

 でも、まだ画質的に満足いかないところがある。まのりがネコとたわむれているシーンで、くるっと振り返ったまのりの背中に乗るノイズがイヤな感じだ。つーことでプロファイルの編集ウィンドウの中の[各ビデオストリームの編集]という部分で指定できる画像の品質も調整してみる。0だと動き優先、100だと画質優先という具合だ。初期状態だと0になっているので思い切って100までアップする。お、効果てきめん。ちょっと動きがカクカクするけどこんなもんでいいか。

 ほかにも128kbps、256kbps用のオリジナルプロファイルを作ってみたけど、これは標準のプロファイルで十分かもしれないなぁ。ビデオのエンコードはソースとなるビデオの動きの激しさや色調で結果がガラっと変わってくるから一概には言えないところがあるけど、「Windows Media エンコーダ」はエンコードが高速で何度もやり直しがきくから、設定を変えて試行錯誤するにはもってこいだ。

標準設定の“単一チャンネルISDN用ビデオ(64kbps)”
(240×176ピクセル、385KB)
64kbps、176×144ピクセル、
インターレース解除なし(372KB)
64kbps、176×144ピクセル、
インターレース解除あり、品質0(372KB)
64kbps、176×144ピクセル、
インターレース解除あり、品質100(372KB)

恐るべき進化のスピード 「Windows Media テクノロジー」

 とか何とか言ってるうちに編集部から電話。米MicrosoftからWindows Media テクノロジーの新バージョンが発表になって、エンコード用ユーティリティ「Windows Media 8 Encoding Utility」のベータ版が出ているというのだ。進化の速さが尋常じゃないな。今度の目玉はムービーの内容によってデータの帯域が変わる可変ビットレート“VBR”に対応したこと。「これにも触れておくよーに」との指令だ。

 さっそく米Microsoftからダウンロード。あれ? すぐ終わったぞ? ダウンロード失敗しているわけでもないし。セットアップを開いたら必要なものをダウンロードするタイプか? とか思っている間にセットアップ終了。あらま、コマンドラインツールだったのね。ちゃんとWeb読んどけよ>モッティ。

 さっそくばしばしとコマンドラインに打ち込んでエンコード開始、のつもりだったけど、なにやらエラーが出てソースのAVIファイルを読み込んでくれない。ヘルプを見ると「Windowsの色管理システム(ICM)が解析できるコーデックで圧縮されたAVIか、非圧縮のAVIでないとソースとして使えない」とある。ありゃ? DVコーデックって解析してくれないの?? などと文句を言っていても仕方がないので、ビデオ編集ソフト「MainActor」で非圧縮のAVIを出力して、それをソースとして使うことにする。この辺は正式版で改良されていてほしいなぁなどと強く願う。

 で、固定ビットレートの“CBR”とVBRそれぞれを、読み込んだ時点で変換する1パスと、1度読み込んだ後に変換する2パスの2種類に分けて、計4ファイルをエンコードしてみた。384kbps、品質75%の想定だ。再生してクオリティを確認してほしい。ちなみにシステムのプロファイルを使うと1パスCBRモードでエンコードを行っている。また、VBRでエンコードすると、「Windows Media Player」v7でないとうまく再生できないので注意が必要だ。

1パス、固定ビットレート(2.85MB)
2パス、固定ビットレート(2.81MB)
1パス、可変ビットレート(2.41MB)
2パス、可変ビットレート(2.75MB)

MPEG-1にもエンコードして、いざ公開!

 WMV形式に続いて、MPEG形式にもエンコードしてみよう。MPEGは動画圧縮の国際規格で、MPEGの中でも最もポピュラーなMPEG-1形式のファイルは、最も多くの環境で再生することができる。実はプレビュー版もVideoCDクオリティのMPEG-1でエンコードしていたけど、ファイルサイズが大きすぎてWMVだけで公開したっていう経緯があった。でも、圧縮の方法次第でファイルサイズはもっと小さくなるから、今回はMPEG-1でもダウンロードに差し障りのないくらいのファイルサイズとクオリティを追求してみる。

「TMPGEnc」
「TMPGEnc」
 MPEG-1へのエンコードには「TMPGEnc」を使う。AVI、MOV、BMP、TGAなどの入力に対応していて、ビットレートやVBRの設定、色調補正やノイズ減少などのフィルターなどの豊富な機能をもつ。市販ソフト、オンラインソフトを合わせた中で最強との呼び声が高いフリーソフトだ。プレビュー版のときにも「TMPGEnc」を使ったんだけど、付属するVideoCD用のテンプレートを使っただけでいろいろと設定しなかったので、ファイルが大きくて公開することができなかった。

 さて、ソースはリリース版のAVIファイル。ただし、Windows 98以降に標準で入っているDVコーデックを使ってキャプチャーしたAVIファイルだと読み込めないことがあるので注意。この場合、「MainActor」でDVコーデックのAVIファイルを出力すれば、従来のVideo for Windowsと互換性のあるAVIファイルとなるのでOKだ。「TMPGEnc」の設定ウィンドウの[ビデオ]タブで320×240ピクセルを選び、レート調整モードを“2パス可変レート”に指定した。VBRの平均ビットレートは300kbps、最大値と最小値はそれぞれ450kbps、250kbpsだ。動き検索精度は最高画質。さらに[ビデオ詳細]タブでノイズ除去と簡易色調補正のフィルタをかけて、[オーディオタブ]でサンプリング周波数を32,000Hzに、ビットレートを64kbpsに設定した。

 以上の設定でエンコードしたものが今回公開しているMPEG-1のファイルだ。モッティのCeleron 800MHzマシンでざっと4時間近くかかったが、ファイルサイズは前回公開したWMVファイルと遜色ないまでに小さくなった。画質の方も問題なし。これでより多くの人に見てもらえる。

「Going Ahead」プロモーションビデオリリース版、MPEG-1形式(8.95MB)

 こうしてエンコードしたファイルのWebでの公開方法だけど、ほとんどの場合、普通のWebサーバーからのダウンロードという形になるだろう。専用のストリーミングサーバーを用意するとなると、またひと苦労だしね。見せ方としていちばんシンプルなのは、この連載でもやっているようにサムネイルの静止画の近くにファイルへのリンクを置くというやり方。ちょっと凝ってプレイヤーをWebブラウザーに埋め込んでしまうなんていう手もあるけど、見る側の環境が限定されてしまうので気をつけるべし。

 Web以外のムービー配布方法として多くの人に確実に見てもらえるのがVHSのビデオテープに録画してしまうことだ。エンコード前のDV AVIをDVカメラに出力してそこからダビングすればいい。市販CDライターソフトにはVideoCDを焼くための機能も備わっていることが多いからVideoCDっていうのも選択肢のひとつだ。TMPGEncでエンコードしたMPEG-1ファイルならVideoCDに問題なく焼ける。DVD Videoは制作環境、特にDVD録画環境の規格待ちかな。PCを持っている人に配るならCD-ROMに入れてHTMLファイルからリンクを張っておけばいい。いずれの場合もビットレートに神経質にならなくてもいいから、思った通りのクオリティでムービーが配布できるぞ。

 さてさて、いろいろとすったもんだしたこの連載もなんとか形になった。これも、まのりや音楽制作の岡村氏、過酷な課題を与えつづける編集部、ビデオ撮影のときにお世話になった方々、制作に使ったソフトの作者の方々、そして読者の皆様のおかげです…(涙)。本当にありがとうございました。これからもまのりをよろしくね!! 出演依頼とプロモーションビデオについては編集部まで! でもモッティの経験上、ほっとしたときにこそ危ない。編集部から過酷なミッションが与えられるのだ。こないだ編集部に行ったとき、なんかY副編集長の目がキラーンと光ったような気がするなぁ。今度行くときには十分気をつけとかなきゃ。

■「Windows Media エンコーダ」
【著作権者】Microsoft Corporation
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】7
□Windows Media Home
http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/

■「Windows Media 8 Encoding Utility」
【著作権者】Microsoft Corporation
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】Beta
□Windows Media Home
http://www.microsoft.com/windows/windowsmedia/

■「TMPGEnc」
【著作権者】堀 浩行 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】Beta 12b
□TMPG Enc.
http://www.tmpgenc.com/

(望月 貞敏)


 記事中の映像の制作者は望月 貞敏氏です。映像中の楽曲の作詞者はまのりとその友達、作曲者は岡村 正章氏です。著作権は各氏に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。
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