【第2回】
オークション詐欺から自分を守ろう
(01/01/19)
欲しいものが安く手軽に購入できたり、お店では買えないようなレアなものが手に入るインターネットオークション。実際に体験するとすごく便利で、欲しいものを見つけて入札したり、落札後に出品者とやりとりするのは楽しいものです。しかし、最近では手軽なインターネットオークションを逆手にとった、詐欺事件も横行しています。それでは、詐欺事件から自分を守り、安心してインターネットオークションを利用するためにはどうすればいいのでしょうか。
インターネットオークションは楽しい
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インターネットオークションは楽しい |
インターネットオークションとは、物品を売りたい人(出品者)と買いたい人(入札者)を結ぶサービスです。出品者は売りたい出品物の説明や写真、オークション期間などのデータをオークションサイトに登録します。登録された出品物のデータは誰でも自由に閲覧することが可能で、欲しいと思った出品物があれば、その時点での入札価格よりも高い価格をつけることでオークションに参加できます。人気のある出品物には多くの入札者が集まり、入札競争も激しくなります。最初は自分の払える範囲の価格で入札したのに、他の入札者がさらに高い価格をつけると、ついつい熱くなって最初に予定していたよりも高い価格で入札してしまうこともあります。オークション期間終了時に自分が欲しい出品物を落札できたときは、とてもうれしいものです。落札後は出品者と落札者が直接連絡をとり、出品物の受け渡しをしますが、趣味が共通の出品者とやりとりをすることも多く、趣味などの話をしながら出品物の受け渡しをするのも楽しみのひとつです。
国内のオークションサイトとしては、ヤフーが運営する「Yahoo!オークション」と楽天市場の「フリマオークション」が有名です。「Yahoo!オークション」は、出品件数や登録ユーザー数が国内でもっとも多く、誰でも気軽にユーザー登録してオークションに参加できます。出品者は自由に出品物の写真や説明をオークションサイトに登録して出品でき、入札者は欲しい物を見つけると、入札価格を入力するだけで入札できます。自分が入札したものに対してより高い価格で入札があった場合は、自動的にメールで連絡されるため、さらに高い価格で応札することが可能です。出品期間が終了したときに一番高い価格を付けた人がその出品物の落札者となり、そのときの入札価格が最終的な落札価格になります。落札者には出品者のメールアドレスが通知され、あとは出品者と落札者が直接連絡をしながら出品物の受け渡しをします。
楽天市場の「フリマオークション」も、オークションのしくみはほとんど「Yahoo!オークション」と同じですが、出品する際にクレジットカード番号を登録する必要があることが大きく異なります。そのため、偽名でユーザー登録される可能性がなく、より安全にインターネットオークションを楽しめます。また、自分の出品物を他の出品物と差別化して表示することができ、代わりに出品料金や取引が成立した場合の手数料が発生します。先に説明した「Yahoo!オークション」も、クレジットカードを組み合わせたサービスもはじめるとのことで、今後ますますインターネットオークションは盛り上がっていきそうです。そのほかにも、国内にはさまざまな工夫をこらしたインターネットオークションがあります。
インターネットオークションに潜む詐欺
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オークションを悪用する詐欺も |
インターネットオークションを利用していて気になるのが、詐欺に関する問題です。平成12年2月、北海道警札幌中央署は、Yahoo!オークションを悪用し落札者から代金をだまし取った27歳の会社員を詐欺の疑いで逮捕しました。札幌中央署の調べによると、会社員はYahoo!オークションで「中古のノートパソコンを10万円で売りたい」という虚偽の出品をしました。その結果、大阪府内の男性公務員が落札し代金10万円を会社員名義の銀行口座に振り込んだのですが、会社員はパソコンを発送せず代金をだまし取ったのです。会社員は、このほかにも同様の手口で十数件の詐欺を行っており、インターネット上で被害者が結束し情報を集めたこともあって逮捕されましたが、大部分の被害者はだまし取られた代金を取り返すことができないままとなっています。
実は、恥ずかしながら筆者もオークション詐欺にあったことがあります。落札後、銀行振込で支払いを済ませた途端に出品者と連絡が付かなくなり、出品者に対する腹立たしさと、「なぜ注意を怠ったんだ」という自分に対するいら立ちの気持ちでいっぱいになりました。詐欺にあわないように十分気を付けてつもりだったのですが、出品者から「もっと安くしますので、すぐに入金をしてください。」と言われ、欲が出てしまってついつい詐欺にあってしまったのです。ただ私の場合は、運良く出品者の電話番号を調べることができたので、支払った代金と振込手数料を返金してもらうことができました。結果としては金銭的な被害はありませんでしたが、警察から事情聴取を受けるために時間を費やしたりと、思い出すと今でも腹が立ってくるほどです。
インターネットオークションでは、オークションサイトを通じて出品者と落札者が出会いますが、落札後はすべて個人間での取引となります。そのため、出品者と連絡するのもすべて個人の責任です。また、誰でもユーザー登録ができるので、偽名や架空の住所によるユーザー登録も考えられ、所在の不明なユーザーがいる可能性も否定できません。ヤフーや楽天市場といった有名サイトが提供しているサービスだからすべて安心という考えをもっている人も多く、そこに油断が生まれ、詐欺に狙われてしまいます。
落札すると出品者のメールアドレスが通知されるため、そのままメールでの連絡で済ませようとしがちです。よく耳にするトラブルは、最初はメールで返事がくるのですが、支払いを済ませるとメールで連絡が取れなくなってしまうというものです。この場合、メール以外の連絡先を確認していなければ、二度と連絡することができなくなります。オークションをはじめた当初はいろいろ気をつけていても、オークションを数回経験していくうちに、オークションは安全だと過信してしまうこともあります。また、落札者の気持ちをあせらせるために「あなたより高額で買い取ってくれる人がいるので今日中に入金してくれ」とか、「今日、パソコンショップに行ったら安く売っていたので、今日入金してくれれば安くするよ」などといって、すぐに入金させようとする手口もあります。
詐欺にあったらどうすればいいか?
「詐欺にあってしまった!」と思ったら、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会や国民生活センターなどの機関に相談するといいでしょう。「出品者と連絡がつかない」という状況だけであれば、自分だけでは本当に詐欺事件なのかどうかは判断しにくいものです。出品者がたまたま出張で不在にしていたり、病気で入院してしまったという状況でも、メールでの連絡ができなくなりますし、発送先住所が間違っていて発送が順調に行われていないだけかもしれません。まずは自分の置かれている状況を相談して、どのように対処すればよいかアドバイスを受けましょう。
□(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
http://www.nacs.or.jp/
□国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/
状況もはっきりして、詐欺にあったとわかったら、最寄りの警察署に被害届を出しましょう。いろいろと事情聴取をされますが、落ち着いて具体的に状況を説明しましょう。単独の事件ではなかなか犯人逮捕とまではいかないようですが、泣き寝入りしてしまっては、事件の再発を助長するようなものです。インターネットオークションを安全で楽しいものにするためにも、万が一被害にあった場合は被害の実態を明らかにしようという心構えを利用者全員がもつことが大切です。しかし、警察が捜査して犯人が逮捕されたとしても、振り込んだお金が必ず返ってくるわけではありません。被害を受けたくなかったら、オークション詐欺に引っかからないよう自分で守るしかないのです。
オークション詐欺を未然に防ぐには
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賢く利用して楽しいオークション |
オークション詐欺にあわないようにするためには、もともと出品物が存在しないということがないよう出品物の写真や説明をよく見たり、出品者に質問などをして確認しましょう。オークションサイトに登録ユーザーの評価ページがある場合には、出品者が他の落札者からどのような評価を受けているのかを確認することもできます。ただし、「悪い評価がないから大丈夫」とか「良い評価があるから大丈夫」というように、過信しないように注意しましょう。
落札後は、出品者と落札者はメールで連絡をとる場合がほとんどです。しかし、メールアドレスだけでなく、住所や電話番号も確認をしておきましょう。フリーのメールアドレスや携帯電話の番号は、すぐに解約する一時的なものかもしれません。安心できない場合は、電話して取引について話し合うのも一つの方法です。大切なのは、出品者の所在が確認でき、自分が納得できたところで、出品物の受け渡しを開始しましょう。「早く入金しろ!」と言われても、出品者の都合にあわせる必要はありません。出品物の受け渡しには、銀行や郵便局から振込をしてから出品物を受け取る方法もありますが、心配ならば、出品物を宅配業者から受け取る際に代金を支払う「代金引換」や、出品者と落札者の間を専門の業者が仲介する「エスクローサービス」を利用することで被害は未然に防げます。もし、出品者が近所だったら、直接会って取引するのもいいかもしれません。
エスクローサービスとは、出品者の出品物の発送と落札者の支払いを取り次いでくれるサービスで、最近少しずつ利用者が増えています。落札者は直接出品者に支払うのではなく、いったんサービス業者に対して入金します。入金を確認したサービス業者は出品者に連絡をし、出品者は直接落札者に出品物を発送します。落札者の手元に出品物が届いたことが確認されると、サービス業者から出品者へ支払いが行われるので、代金を支払ったのに出品物が届かないという問題がなくなります。少々手続きが必要なのと、手数料が発生するのが気になりますが、詐欺にあう心配がなくなるうえに、コンビニから支払いが可能になるなどの手軽さもあります。
反対に出品者だって詐欺にあうことがあります。出品物を先に送ったのに入金がないということも考えられます。出品者にとって一番安心なのは、先に入金してもらうことなのですが、これだと先ほども述べたように落札者の不安を招きがちです。大切なのは、出品者と落札者がよく相談して、双方が納得のいく方法を選択することでしょう。
さて、次回はインターネットショッピングでのトラブル防止についてお話しします。いろいろなものがインターネットによって購入できるようになりましたが、商品や購入する相手が直接見られないために、常に不安がつきまとうのも事実です。安心してインターネットショッピングを利用するための秘訣をご紹介します。
(山崎 真裕)