ムービーエンコードソフトで配信準備完了!

インターネット配信に向け、主要4フォーマットの特長をつかめ

(01/03/06)

 自作のムービーを公開するときに、インターネットを使うにしろCD-Rで配布するにしろ、避けて通れないのが“エンコード”という作業。ムービーのクオリティを決定する重要な作業だ。限られた帯域やメディア容量を最大限に活かして、少しでもいい画質で見てもらいたいもの。そこで、今回の特集ではエンコードの概要と、WindowsMedia、RealMedia、QuickTime、MPEG-1という主要な4つのムービーフォーマット用エンコードソフトの特長を紹介する。


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■ そもそも、エンコードって何?

 ビデオ撮影、キャプチャー、編集、特殊効果といったムービーを制作する一連の過程で、最終段階に位置するのがムービーファイルを生成する“エンコード”という作業だ。エンコードはムービーのクオリティを決定する重要な作業である。せっかく制作した高品質なムービーも、エンコードに失敗すると“視聴者”を満足させることはできない。では、エンコードとはどんなことをするのか、なぜ必要なのかを説明していこう。

 ムービーの原理は基本的に“パラパラマンガ”と同じ。静止画を次々と表示して、残像により画面中の物体が動いているように見せる。テレビ放送は秒間30コマ、映画なら秒間24コマで表示している。しかし、秒間30コマもの静止画を表示するためには大量のデータを高速に転送する必要がある。たとえば、640×480ピクセルの24ビットフルカラー画像を秒間30コマで再生する場合には、640×480×3(24ビット=3バイト)×30=27,648,000バイト、約27メガバイトものデータを1秒間に転送しなければいけない。5分間のムービーならファイルサイズは8ギガバイトに跳ね上がる。これでは転送速度的にもファイルサイズ的にも、たくさんの人に見てもらうのは難しい。そこで導入されたのが、データの“圧縮”という考え方。エンコードはすなわちムービーを圧縮することといえる。

 ムービーファイルの圧縮は、LZHやZIPといったファイル圧縮とはわけが違う。圧縮率を最大限に高めるためには、LZHやZIPなどのように情報を損ねることなくサイズを小さくする“可逆圧縮”ではなく、ムービーのクオリティをなるべく損ねないようにデータを間引いていく“非可逆圧縮”なのだ。さらに、ムービー圧縮の手法には二通りある。JPEGのような手段でムービーのひとコマひとコマを圧縮する“画面内圧縮”と、コマの前後を調べて背景のように動かないものは描き換えないでデータを節約する“時間軸圧縮”だ。圧縮されたムービーは再生時にパソコン上で“伸張”される。この圧縮・伸張をつかさどるモジュールは“コーデック(CODEC)”と呼ばれる。DVやMotionJPEGのようにビデオデッキからのキャプチャーやテレビモニターへの出力を前提としたコーデックは画面内圧縮だけのことが多いが、インターネット配信用のムービーに使われるコーデックでは画面内圧縮と時間軸圧縮の双方を行い、圧縮率を高めている。

■ 現在使われている主要4フォーマット用のエンコードソフト

 インターネットでのムービー配信には、Windows Media、RealMedia、QuickTime、MPEG-1の4つのフォーマットのムービーファイルが主に用いられている。ここではフリーソフトやシェアウェアとして公開されている、各フォーマット用のエンコードソフトを紹介していこう。

高い圧縮率をほこる「Windows Media エンコーダ」

「Windows Media エンコーダ」
「Windows Media エンコーダ」
 
Windows Media形式(784KB)
Windows Media形式(784KB)
プロファイル:電子メールおよび
二重チャンネルISDN用ビデオ(128kbps)
 Microsoftが配布している「Windows Media エンコーダ」v7は、Windows Media Video 7(WMV)、Windows Media Audio 7(WMA)形式のファイルを生成できるフリーのエンコードソフト。AVI、MPEGなどのムービーファイル、WAVEなどの音声ファイルをWMV、WMAファイルに変換できるほか、ビデオキャプチャーボードやサウンドボードから取り込んだライブムービーやサウンド、またデスクトップ画像をリアルタイムにエンコードできる。また、エンコードと同時に50コネクションまでのリアルタイムストリーム配信も可能だ。これらのエンコード形式は再生するためにある程度のCPUパワーが必要になるが、圧縮率がきわめて高く、少ないデータ転送量でもスムーズに再生できるという特長がある。

 「Windows Media エンコーダ」では、ムービーをエンコードをするのにウィザードによって作業を進めていく。ソースとなるムービーやサウンドがローカルファイルなのかライブなのかという選択をした後に、28.8kbpsモデムや64kbpsのISDN接続、ADSL接続など再生側のネットワーク環境のほか、ムービーの画面サイズやクオリティを“プロファイル”から選択する。プロファイルはユーザーが編集可能で、ムービーファイルのサイズとクオリティを検討しながら微調整を加えることもできる。エンコード中にソースの画質とエンコード後の画質を同時に並べて表示させることもできるため、仕上がりのクオリティを把握しながら作業を進めることができる。

【ソフト名】「Windows Media エンコーダ」
【著作権者】Microsoft Corporation
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】7

□Windows Media Home
http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/

ストリームの老舗、RealMedia用エンコーダー「RealProducer Basic」

「RealProducer Basic」
「RealProducer Basic」
 
RealMedia形式(709KB)
RealMedia形式(709KB)
Single-rate、Dual ISDN、
Music、Smoothest Motion Video
 「RealProducer Basic」は、米RealNetworksが配布しているフリーのムービーエンコードソフト。AVI、QuickTime、WAV、AUの各ファイルからRealMedia形式のムービーファイルに変換できる。さらにビデオキャプチャーボードやサウンドボードからのライブムービー、音声をリアルタイムにRealMedia形式に変換することも可能だ。

 「RealProducer Basic」もウィザード機能を備え、ソースの選択、再生対象の設定、ムービーとサウンドのクオリティ設定をウィザードにしたがって行えば、RealMedia形式のムービーファイルを生成する準備が整う。オプションでノイズフィルタやインターレース解除などのビデオフィルターの設定も行える。また、生成したRealMediaファイルを公開するWebページの書き出し機能ももっている。ただし、「RealProducer Basic」にはいくつかの機能制限があり、フル機能を使うためには上位バージョンの「Real Producer Plus」が必要になる。Basicバージョンの機能制限のうちもっとも残念なのは、ソースとなるムービーの画面サイズと同じ画面サイズでしかエンコードできない点だ。Webでの配布用に画面サイズの小さなRealMediaファイルをBasicバージョンで作るためには、前もって他のビデオ編集ソフトで画面をリサイズしておく必要がある。なお、ムービー編集ソフトにはRealMediaファイルのエクスポート機能をもっているものも多いので、それを使うのも手だ。

【ソフト名】「RealProducer Basic」
【著作権者】RealNetworks, Inc.
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】8.5

□RealProducer
http://www.jp.realnetworks.com/products/producer/index.html

QuickTimeムービーの簡易編集からエンコードまで対応した「QuickTime Pro」

「QuickTime Pro」
「QuickTime Pro」
 
QuickTime形式(1.05MB)
QuickTime形式(1.05MB)
オプションでビデオサイズを
320×240ピクセルに変更
 Macintosh上の標準マルチメディア技術である“QuickTime”。QuickTimeムービーは、ムービーに字幕用の文字データを挿入したり、MIDI音楽データをミックスするほか、クリックでムービーにエフェクトをかけるなどのインタラクティブ性をもたせることが可能な高機能フォーマット。Windows版の「QuickTime」は拡張子MOVやQTのQuickTimeムービーを再生するためのソフトで、送金すると簡易ビデオ編集やエンコーディングができる「QuickTime Pro」になる。「QuickTime Pro」では、QuickTime、AVI、WAV、AIFFなどのムービーファイルや音声ファイル、BMP、PICT、JPEG、PNG、Targa、TIFFなどの画像ファイルを読み込んで、QuickTimeムービーに変換できる。

 そのほか、ムービーの余分な部分をカットしたり、ほかのムービーとつなげたり、連番ファイル名の静止画を読み込んでムービーにしたりといった簡便なムービー編集機能を備えている。編集したムービーの書き出し時には画面サイズや秒間何コマ表示させるかというフレームレート、高圧縮率な“Sorenson Video”やテレビ電話用の“H.263”などといったコーデックの種類を選択し、ムービーやサウンドのクオリティを細かく設定できる。

【ソフト名】「QuickTime Pro」
【著作権者】Apple Computer, inc.
【ソフト種別】シェアウェア 29.99ドル
【バージョン】4.1.2

□アップル-QuickTime
http://www.apple.co.jp/quicktime/

MPEG-1ムービーを高品位に生成する「TMPGEnc」

「TMPGEnc」
「TMPGEnc」
 
MPEG-1形式(1.44MB)
MPEG-1形式(1.44MB)
320×240ピクセル、15fps
映像:CBR96kbps
音声:Layer-2 32kHz 32kbps
 MPEG-1はこれまでに紹介した3つのフォーマットと違い、世界の規格標準化団体が策定したものであり、もっとも多くのプラットフォームで再生できるムービーフォーマットだ。MPEG-1形式のムービーにエンコードできるソフトは数多いが、生成されるムービーの品質の高さとエンコード設定を詳細にカスタマイズできる柔軟性の高さで人気が高いのが、フリーソフトの「TMPGEnc」。AVI、MPG、QuickTime、ASF、BMP、TargaなどのファイルからMPEG-1ムービーを生成できる。

 「TMPGEnc」は、生成された画像の品質もさることながら、画面サイズ、画質、フレームレート、データ転送量、MPEG特有のデータ構造など、エンコードの詳細をユーザーが自由に設定できるのが特長だ。もちろんVideo-CD、Super Video-CD用の設定はプロファイルとしてあらかじめ用意されている。また、MPEG-1ファイル同士の結合機能やMPEG-1ファイルからサウンドを分離する機能、逆にサウンドのないムービーとサウンドのみのファイルを1ファイルにまとめる多重化機能も備えている。そのほか、「TMPGEnc Professional」というパッケージ版が、MPEG-2ファイルの生成機能も加わり発売される予定だが、現在配布されているフリーバージョンでも、“体験版”として30日限定でMPEG-2ファイルをエンコードできるようになっている。

【ソフト名】「TMPGEnc」
【著作権者】堀 浩行 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】Beta 12d

□TMPG Enc.
http://www.tmpgenc.com/

■ ムービー配信対象でフォーマットを選択しよう

 各ムービーフォーマットの特長を配信対象という点に注目して説明しよう。配信対対象がWindowsユーザー中心なら、“純正”ともいえるWindows Mediaがオススメだ。パソコンにWindows Media Playerが入っていれば、インターネットから自動的にコーデックを入手して再生できる手軽さもよい。ただし、Macintosh用のWindows Media Playerはあまり普及しておらず、クロスプラットフォームという点では疑問符がつく。RealMediaは、サーバーとプレイヤーの間でデータをやりとりしながらムービーを再生する“ストリーミングメディア”としてもっとも普及しているフォーマット。対応OSが多く、音楽配信などでも使われているためプレイヤーの普及度が高い。Windows、Macintosh、各種UNIX向けにストリーミングをしたいときには第一の選択肢となる。

 QuickTimeは、MacintoshはもちろんのことWindowsでもかなり普及しているが、現行のバージョンでは少ないデータ転送時のムービー品質は少々もの足りないものがある。まもなく登場するv5に期待だ。MPEG-1は標準規格のため、多くのプラットフォームで再生可能だが、ストリーミングを念頭においたフォーマットではないので、ダウンロード中心の配布に適している。なお、各フォーマットとも異なる特長をもっているが、どのファイルが絶対ということはなく、Windowsユーザーにとってはプレイヤーさえ入れればどのファイルも再生できるため、配信したいムービーや配信対象の環境ごとに適切なフォーマットを選択するとよいだろう。

 以上、ムービーエンコードソフトとムービーフォーマットに関してざっと眺めてみたが、インターネット上でのムービー配信は、もっとも急ピッチで開発が進んでいる分野。新たなエンコード環境が整ったら、回を改めてもっと使い込んだレポートをしたいと思う。

(文・映像:望月 貞敏/Flash:石岡 友里)

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