【第10回】
オンラインソフト“のろけ話”(後編)
~いつまでも変わらぬ愛用を~
(01/03/26)
前回の前編では、オンラインソフトと長く付き合うことについて、ぼくにとって最も長い付き合いになる「秀丸エディタ」と「AL-Mail」の2本を紹介しながら、あれこれ思うところを書いてみた。今回も引き続き付き合いの長いソフトをいくつかとりあげ、その魅力と良さを紹介し、そして栄枯盛衰が激しいとも言われるオンラインソフト業界で、ソフトがユーザーに長く使い続けられるための条件などを考えてみようと思う。
改めて機能を見直す
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「GO for Windows 9x/2K」で 深いフォルダに素早くアクセス |
さて、「秀丸」や「AL-Mail」に比べるとまだまだ付き合いの歴史が浅いのだが、ぼくが今日まで2年半使い続けて今ではすっかり手放せなくなっているソフトに、「GO for Windows 9x/2K」がある。これは一種のフォルダランチャーで、階層の深い(絶対パス名の長い)フォルダにも素早くアクセスできるようになる便利なソフトだ。たとえば“C:\My Documents\Photo\travel”といったパス名のフォルダがあるとき、パスの最後の「travel」、もしくは「tra」などと入力するだけで、先頭一致でフォルダを開けるようになる。開いたフォルダは履歴として残り、次回はメニューからの選択でさらに開きやすくなる。
ぼくは毎日たくさんのソフトをインストールして試用しているが、インストールのたびにスタートメニューに追加されるメニュー項目は整理せずに放っておくと何百にもなってしまう。そこで普段はスタートメニューを使わず、インストールしたフォルダを開いてからプログラムファイルを直接起動しているのだが、そんなときに「GO for Windows 9x/2K」はフォルダ探しにとても役に立っている。
そんなわけでかれこれ2年半使っている「GO for Windows 9x/2K」なのだが、最近になってようやく気付いた使い方がある。このソフトはそのまま起動するとタスクトレイに常駐し、[Ctrl]+[Alt]+[G]キーでフォルダ検索ウィンドウを呼び出して使うのが基本だ。しかし実は常駐させずに呼び出して使うこともできるのだ。すなわち、ショートカットアイコンにショートカットキーとして[Ctrl]+[Alt]+[G]キーを割り当て、コマンドラインオプションで常駐させない引数を指定すれば、常駐させる場合とまったく同じキー操作で、普段常駐させずに「GO for Windows 9x/2K」のフォルダ検索ウィンドウを呼び出せるようになる。もちろん目的のフォルダを開いた後は自動的に終了する。
「GO for Windows 9x/2K」は常駐させるとシステムリソースを5%くらい消費する。常駐物としては標準的な消費量だが、普段から慢性的なシステムリソース不足に悩んでいるぼくのWindows 98環境では、システムリソースを消費せずに利用できるならそれに越したことはない。常駐させないコマンドラインオプションがあることは昔から知っていたのだが、当時はその価値をわかっていなかったというか、ショートカットキーと組み合わせれば常駐時と同じように使えることに気付いていなかった。2年を経てようやく気付いたというわけだ。我ながら情けない、というより作者に申し訳ない話だが、こういったことは意外と誰にでもあるのではないだろうか。特にソフトとの付き合いが長ければ長いほど、かえって変な思い込みで特定の機能を使わないままでいたり、いつの間にかバージョンアップしてできるようになっていることに気付かないでいるといったことは、結構ありがちかもしれない。
外せないカスタマイズ系ソフト
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IME起動などのキー割り当てを 変更する「AltIME」 |
どんなにリソース不足に悩んでいても、どうしても外せない常駐ソフトというものもある。その一つが「AltIME」だ。窓の杜ライブラリにも収録されているソフトで、[変換]キーだけでIMEを起動できるようにしたり[Ctrl]キーと[英数]キーを入れ替えるなど、基本的にはキー割り当てを変更する定番ツールである。しかしキー割り当ての変更だけでなく、たとえばメッセージダイアログ等の[OK]ボタンを自動で押したり、クリップボードの履歴をとったり、ちょっと変わったところでは一般的なパスワード入力ダイアログで“*******”のように隠して表示される文字列を隠さずに表示する機能があるなど、なかなかユニークな常駐ソフトだ。
あれもこれもと機能を欲張ってつけたソフトはかえって使いにくくなることも多いが、このソフトは設定ウィンドウが基本的に1つしかなく、チェックボックスのチェックをON/OFFするだけなのでわかりやすい。ユーザーがニーズにあわせて必要な機能だけを自由に選択して使えるのも気に入っているし、実際にこのソフトがキーカスタマイズの定番として多くのユーザーに愛用されている理由ではないだろうか。
そのほか、非常駐のソフトだと、Webページの更新をチェックする「WWWC」、辞書ソフトの「PDIC for Win32」、高速画像ビューワーの「IrfanView32」、エクスプローラ風アーカイバの「Explzh」などなど、いわゆる定番系のソフトをぼくは長く使っている。どれも窓の杜ライブラリに収録されているものなのでソフトの詳細はライブラリを見ていただきたいが、同じ分野で新しいソフトが出てくれば乗り換えを検討することも多いし、状況に応じて新しいソフトと併用しているものもある。しかしそれでも完全に乗り換えないでいるのは、やはりこれらのソフトがリリース初期の頃からずっと使っていて愛着があったり、(特に開発当初は)バージョンアップのペースが速くて、ユーザーとして安心して使っていられるといったことが理由としてあげられる。
長く付き合えるソフトの共通点は?
こうして見てくると、長く付き合えるソフトに共通するキーワードには“慣れ”、“カスタマイズ”、そして“サポート”の3つがあるように思う。そのソフトに“慣れ”てしまうことで、他のソフトへの乗り換えがしにくく、乗り換える場合でも“カスタマイズ”によって今までと同様の操作性を実現できるソフトを選びがちになる。また、必要に応じて後からマクロやプラグインなどの“サポート”(支援)ソフトで機能追加できたり、たくさんある機能のON/OFFがしやすいことも、いろんなユーザーのさまざまな需要に応じられるわけだ。もちろん何か不具合が起こった場合でもバージョンアップで比較的迅速に対応してもらえるという意味でのサポート体制も、安心して使っていくためには大事なことだ。その積み重ねがやがてユーザーの愛着心を作り上げていく。
奇抜なソフトや時流に乗った目新しいソフトは、話題性も高くて窓の杜やパソコン雑誌などのメディアでも記事になりやすい。しかし、そういった目新しいソフトが必ずしもユーザーに長く愛用されるわけではないというのも事実だろう。あまり表面的には見えにくいことだが、個性を活かしながらもユーザーのニーズにどこまで応じられるか、その絶妙なバランスを作者の努力でつかんだソフトだけが、いつまでも長く愛用されるソフトに成長していくのではないだろうか。いま定番と呼ばれる多くのソフトは、そうして作者がユーザーと共に育ててきたものであって、決して一朝一夕にできたり、彗星のごとく突如現れたものではないのだ。
なお、ぼくはなにもこれまで名前を挙げてきたソフトを万人にオススメしているわけでは決してないことを最後に書いておこうと思う。実際これらのソフトの中には、単にぼくの好みに合っただけで、パソコン初心者が使うにはどうかと思うものもある。また、古いDOSソフトと同じキーカスタマイズができるといった機能は、これから新規にパソコンを使い始める人にとっては関係ないことだ。しかし、長年連れ添った女房には若い子にない良さがあると言われるように、長く付き合ったソフトには長く付き合った分、手になじむ良さがあり、ちょっと使っただけではわからない発見もある。読者の皆さんは皆さんなりの伴侶的ソフトを見つけて、長く付き合ってみてはいかがだろうか。
といったところで今回のよもやま“のろけ”話は終わりにするとしよう。
【ソフト名】GO for Windows 9x/2K
【著作権者】早瀬 拓 氏
【ソフト種別】フリーソフト【バージョン】2.22(01/01/20)
□Electrical Fireworks
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(ひぐち たかし)