【第13回】

オンラインソフト浦島太郎
~玉手箱をあけてみると~

(01/06/04)

ご無沙汰してしまいました

ケータイ使用禁止だとデータ通信もできない
ケータイ使用禁止だと
データ通信もできない
 月も変わり、九州地方はもう南の方から梅雨入りだとか。恵みの雨とは言うものの、あまり外には出たくない季節が今年もやってくるようだ。読者のみなさんはいかがお過ごしだろうか。一身上の都合でしばらくお休みをいただいていたこの“よもやま話”だが、今月から無事また連載を再開させてもらうことになった。『2カ月近くもの間、何をしていたんだ?』と疑問をお持ちの方もおられるだろうから簡単に説明しておくと、ぼくはずっとインターネットやパソコンのできない環境にいたのだった。

 といっても、南海の孤島でのんびりとバカンスを楽しんでいたわけではない。ちゃんと街なかにいたことは確かだ。『それならノートPCとケータイを使ってモバイルでインターネットができたんじゃないのか?』いや、街なかにもケータイを使えない場所、むしろ使ってはいけない場所があることをお忘れなく。つまり病院という場所だ。一般に病院内では、携帯電話の使用が禁じられている。電磁波の影響で医療機器が誤作動する可能性があるため、電源を切らなくてはならないのだ。まぁ早い話が、身内が入院したためにつきっきりで看病をしていたということになる。

禁断症状?

 それはともかく、学生時代から今年になるまでほぼ毎日のようにパソコンやオンラインソフト、インターネットを使ってきた男が、ある日突然それらを使わない状況に置かれるとどうなるか? 日常的に使っているものを突然取り上げられると人間はどうなるのか? 自分で振り返ってみても、我ながらなかなか興味深いものがある。

 それについて、数カ月前にテレビで面白いドキュメント番組を見た。四六時中ケータイを使って友達と電話やメールのやりとりをしている最近の女子高生から、ケータイを完全に取り上げてしまうと、その女子高生は数日のうちに情緒不安定になり、ついには泣き出してしまったのだ。

 ぼく自身も実際、そんな女子高生と似たような不安感にさいなまれた。1日の大半を病室で過ごすとなると、インターネットはもちろん、今まで当たり前のように利用してきたノートパソコンすら看護のじゃまになるためにほとんどさわれなくなる。それでも最初の数日はどうということもなかったが、3日目くらいからなんとなく落ち着かず、窓の杜やいつも見ていた情報サイト、掲示板などのことが気になって気になって仕方なくなってしまった。まさにパソコン中毒、オンラインソフト中毒、インターネット中毒の禁断症状といったところか。

そして浦島太郎に…

 さて、我が身に起こったのはそれだけではない。2カ月近くもインターネットから遠ざかっていたせいで、我ながらオンラインソフトに関してすっかり“浦島太郎”になってしまったのだ。インターネットやソフトウェアのような情報革命の世界は“犬の時間”と言われる。めまぐるしく進化するため、体感的な時間感覚は、一生が10年そこそこしかない犬なみ、人間社会の7倍のスピードというわけだ。つまりインターネットでの2カ月のブランクは、普通の社会では1年以上のブランクと同じ感覚ということになる。これは大変なことだ。

 POPサーバーに500通以上たまっていたメールを読み出し、とりあえずぼくは自分が休んでいた期間のメール版窓の杜を読み返してみたのだが、やはりオンラインソフトの世界ではこの2カ月にいろいろな進化があったようだ。そこで今回はリハビリを兼ね(?)、この2カ月間のオンラインソフトニュースを読み返して、特に気になるニュースや業界動向をピックアップしておきたいと思う。読者の皆さんも、いま一度見落としがないかどうか、チェックしてみてほしい。

2001年春のオンラインソフト動向

 まず最も目立ったのは、やはりマイクロソフト関連のバージョンアップだろうか。「Windows 2000 Service Pack 2」と「Windows Media Player 7.1」、これらはいずれも日本語版がつい最近リリースされている。このバージョンアップは忘れずに行っておきたい、と言いたいところだが、その前に…。ぼくの友人で「Windows 2000 Service Pack 2」をさっそく導入し、不幸なことにWindowsが起動しなくなって、すべて再インストールという憂き目にあったやつが少なくとも一人いる。さらに、今まで動いていたアプリケーションソフトが動かなくなってしまったという話も聞いている。あわててSP2を入れる前に、念のためバックアップをとって、万一のときは元に戻せる準備をしておくほうがいいようだ。

□マイクロソフト、「Windows Media Player 7.1」の日本語版をリリース
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/24/windowsmedia71jp.html
□「Windows 2000 Service Pack 2」日本語版は6月1日より提供開始
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/29/windows2000sp2.html

 また、大物のバージョンアップということでは「QuickTime 5」の日本語版が先月初旬にリリースされていることも見逃してはならないだろう。特にこのバージョンからMPEG-1ファイルのストリーム再生に対応したことは個人的にも関心が高い。

□アップル、「QuickTime 5」日本語版をリリース
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/10/quicktime.html

常時接続とブロードバンド

常時接続やブロードバンドの環境にはセキュリティ対策が必要
常時接続やブロードバンドの
環境にはセキュリティ対策が必要
 インターネットの“常時接続”と“ブロードバンド”は現在の最も重要なキーワードと言っていいだろう。非常に多くの人が関心を寄せているということは、窓の杜の記事アクセスランキングを見ても容易にわかる。したがってこれらに関するソフトはもちろん見落とさないようにしておこう。特に昨年までの重要なキーワードであった“セキュリティ”と絡め、家庭でファイヤーウォールを構築できるソフトや、外部からの不正なネットワークアクセスを記録するソフトなど、xDSLやケーブル、光ファイバーなどで常時接続を考えている人なら是非ともチェックしておきたいソフトが最近いろいろと紹介されている。

□パーソナルファイヤーウォールソフト「Tiny Personal Firewall」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/14/personalfirewall.html
□侵入してきたハッカーの行動を監視「DummyDaemons」v1.1
(窓の杜メール版5月10日号【今日のお気に入り】より)
□ネットワーク設定をカスタマイズして通信速度を向上させる「NetTune」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/15/nettune.html

新しい圧縮形式

 ファイルや画像の新しい圧縮形式が徐々に広まりつつあることも要注目だ。ファイル圧縮のほうはGCA形式、画像圧縮のほうはWIF形式で、いずれも広く利用されやすいように、GCA形式には解凍用DLLが、WIF形式のほうにはWebブラウザー用のプラグインが、それぞれ公開されている。一般に新しいファイル圧縮形式は、後発である分なかなか普及しにくく、他のソフトでも利用できるようにDLLやプラグインを一緒に公開することは、ほぼ必須の条件と言っていい。特にGCAは、DLL公開にともなってさまざまな圧縮・解凍ソフトでも急速にサポートされつつあり、目が離せない。

 そのほか、GCA形式を含めた数多くの圧縮形式から最も圧縮率の高い形式を自動選択する圧縮ソフトが登場したのも、個人的には注目している。今後、既存の圧縮ソフトが同様の機能をもつようになる可能性も十分ありそうだ。

□画像をJPEG形式よりも高圧縮率とされるWIF形式に変換「PhotoStreak」v3.0
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/25/photostreak.html
□最も圧縮率の高い圧縮形式を自動選択する「A/R/C」v1.00正式版がリリース
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/04/25/arc.html
□高圧縮率のGCA形式で圧縮・解凍できる「GCA」v0.9f
(窓の杜メール版4月19日号【今日のお気に入り】より)

印刷関連ソフトに面白い動き

 印刷関係のソフトもなかなか面白いものが登場しているようだ。印刷ユーティリティソフト「PrintCast」は、印刷プレビューをEXEファイルにして他のPCで閲覧したり印刷できるというもの。例えば「一太郎」のようなワープロソフトで作成した文書をこのソフトでEXEファイルにすると、「一太郎」が入っていないPC上でも文書をプレビューして印刷ができるようになるというわけだ。ちょうど「Adobe Acrobat」で作成できるPDFファイルのような感じだが、市販パッケージの「Acrobat」よりも安価で手軽に入手できるシェアウェアというのがうれしい。またEXEファイルになるので、PDFファイルに対する「Acrobat Reader」のような専用ソフトが必要ないというのもいい。

□印刷ユーティリティソフト「PrintCast」がリリース
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/04/18/printcast.html

 PDFといえば、「Adobe Acrobat」がなくてもPDFファイルを作成できるソフトが複数出てきていることにも注目したい。高度で複雑な機能をもったPDFファイルではなくても、印刷ページを出力する程度の基本的なPDFファイルならこういったソフトで十分かもしれない。上記の「PrintCast」と違って、PDFファイルならMacOSなどでも表示したり印刷できることは大きな利点だ。

□ワープロ文書をPDFに変換する「Scanbox Pro イメージ変換&ページエディタ」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/04/25/scanboxproimage.html
□PDFファイル作成ソフト「Dr.e-printer LE」がシェアウェア公開
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/05/22/dr_e-printer.html

 というわけで、ぼくが気になった最近のニュース記事をざっと振り返ってきたが、いかがだっただろうか。もちろんオンラインソフトに対する興味のあり方は人それぞれだから、今回ここにあげた以外の記事が私は気になったよ、という人もたくさんいるだろう。ともかく自分なりに興味のあるソフト情報を日々追うだけでなく、たとえば季節の変わり目ごとにもう一度振り返ってみて、『あのソフトはその後どうなったかな?』と思い出してみることが、氾濫する新作情報に流されずにオンラインソフトをより楽しむためのコツではないだろうか。

 きれいにまとまったところで(?)、今回のリハビリ版“よもやま話”は終わることにしよう。

(ひぐち たかし)

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