【第138回】
名作RPG「ティル・ナ・ノーグ〈ダーナの末裔〉」
ケルト神話をモチーフにしたRPGが、Windows版で再登場!!
(01/07/04)
今から12、3年前、ようやくハードディスクが使えるようになった程度のパソコンで、筆者は様々なゲームを楽しんだ。どのゲームも、本当におもしろかった。あのころ身震いするほどおもしろいゲームに触れることができたからこそ、筆者はこの世界で…ゲームに近い世界で生きていくことを決めた。現在ゲーム業界で働く人たちの多くが、きっと似たような動機なのではないかと思う。システムソフトのRPG「ティル・ナ・ノーグ」も、その当時人気があった作品のひとつだ。今回はその復刻版、Windows版の「ティル・ナ・ノーグ〈ダーナの末裔〉」を紹介しよう。
ティル・ナ・ノーグが残したもの
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デモ版には3本のシナリオが用意されている。ジェネレート機能はなし
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正確な時期は失念したが、オリジナルとなるPC-98版の「ティル・ナ・ノーグ」が発売されたのは、1988年頃だったと思う。当時はPCゲームのプラットホームがPC-8801からPC-9801に移行しつつあり、16ビットCPU+高精細という新しい環境で各社が様々な可能性を模索していた時代だった。国産のPCゲームが一番元気だった時代…というと、ちょっと女々しいだろうか。とにかく、当時「大戦略」シリーズで勢いに乗っていたシステムソフトがRPGでも独自色を発揮し、その決定版となったのが「ティル・ナ・ノーグ」だったわけだ。
「ティル・ナ・ノーグ」は、その後の国産RPGに大きな影響を与えた。まずひとつは、シナリオジェネレーターによるマップとシナリオの生成機能。「ティル・ナ・ノーグ」は固定のマップやシナリオを持たず、毎回ランダムに作り出すことができた。おそらくヒントは「ローグ」から得たのだろうが、その仕組みをより進化させ、偶然によるおもしろさと意外性をRPGに持ち込むことに成功した。この発想は、その後登場した「トルネコの冒険」や「チョコボの不思議なダンジョン」など、自動生成系RPGのルーツになったと思う。
もうひとつは、ケルト神話をモチーフにしたという点だ。それまでのRPGは「ウィザードリィ」や「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」の影響を強く受けた作品がほとんどで、登場するアイテムやモンスターもこの世界のルールに準じていた。しかし、「ティル・ナ・ノーグ」はケルト神話という日本ではほとんどなじみがなかった世界観を採用することによって、RPGの可能性を押し広げた。中世ヨーロッパ的な設定以外でもおもしろいRPGが作れることを証明したのだ。その後、SF系や学園モノ、古代日本をモチーフにしたものなど、新しいタイプのRPGが登場する下敷きになったと、筆者は考えている。
戦闘は半自動で行われる
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城を訪れて冒険の目的を確認。装備一式も手に入る
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画面のデザインはちょっと古くさく感じるかも。右上に表示されているのが全体図
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では、実際にプレイしてみよう。メインメニューが表示されたら、その中から“シナリオ選択”をクリック。画面に表示された3つの王国の名前が、「ティル・ナ・ノーグ」ではそのままシナリオ名として扱われる。どれか1本を選んでクリックすると、シナリオの背景が説明され、その後プレイ画面に切り替わる。
プレイ画面はマップを真上から見下ろしたデザインで、初期の「ウルティマ」や「ドラゴンクエスト」に近い。現在ならクォータービューを使うところなのだろうが、当時はこのスタイルのほうが一般的だったのだ。キャラクターの移動はマウスを使って行う。進みたい方向にマウスポインタを合わせて左クリックすると、1マス移動。こうしてマップを移動していると突然モンスターに遭遇し、戦闘用の画面へと切り替わる。
戦闘画面もやはり真上から見下ろしたデザインだが、ここではパーティメンバー全員が表示される。戦闘は、各キャラクターが個々に攻撃を繰り返すタクティカルコンバット方式で自動的に行われ、プレイヤーはただマウスのボタンをクリックしてメッセージを読み進めるだけでいい。もっとも、キャラクターの判断に任せたままではうまく戦えない場合もあるので、必要に応じて「攻撃」「魔法」「防御」「撤退」などをパーティ全体、もしくはキャラクター個別に指示することもできる。プレイヤーは戦闘指揮官的な立場で全体を眺め、パーティ全体に適宜指示を与えるというわけだ。
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戦闘は半自動で行われる。必要があれば、個別に行動を指示することも可能だ
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酒場を訪れて仲間を募る
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パーティは最大5名。冒険の途中で新しい仲間が増えることもある
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プレイが始まった直後、パーティは主人公1人だけだ。装備も資金もない丸腰の状態なので、辺りをうかつに歩き回らないこと。スタート地点のすぐ側に城があるはずなので、まずそこを尋ねてみよう。選んだシナリオによって微妙に設定は異なるが、達成すべき目的と装備一式、そして運がよければ100Gの路銀が与えられるはずだ。城を出たらすかさずキャンプを張って、受け取ったロイヤルソード、ロイヤルアーマー、ロイヤルシールドを身につける。
これで裸ではなくなったものの、まだ全く弱い。周囲を眺めて、一番近い村に向かうこと。もしその途中で敵に遭遇しても“撤退”の一手を貫き、絶対に戦ってはいけない。日が暮れるのを待ってから村を訪れ、“酒場”へ入る。“勇者を募る”を実行すると何人か候補者が名乗りをあげるので、その全員をパーティに加えよう。その後“よろず屋”で必要な武器や鎧を買い揃え、パーティ全員に装備させる。一番安いもので構わないから、全員に何かしらの武器を持たせるのがコツだ。同じ武器でも、持たせるキャラクターによって微妙に効果が変わるので、キャラクターの“敏捷さ”や“器用さ”に合わせて一番いい組み合わせを考えること。
無理は禁物、序盤はただひたすら耐えるのみ
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戦闘時のフォーメーションを指定。体力のないものは後衛に回そう
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序盤は相当厳しい。ちょっと情けないが、村の周囲をグルグル回りながら弱い相手とだけ戦おう。負けたらロード、勝ったらセーブを繰り返して資金と経験値を稼ぎ、装備を揃えていく。少なくとも、1時間はこうした地味な修行を続けることになると思う。パーティ全員に武器と鎧、さらには盾が行き渡り、レベルが2になった時点で、ダンジョンに突入だ。最初に入るべきダンジョンの名は、村にある“占い師の家”で聞くことができる。冒険の途中で、新しいキャラクターがパーティに加わりたいといってくる場合があるので、必要ならパーティメンバーを入れ替えよう。ヒューマノイドだけでなく、特殊技能をもつモンスターやシルフなどを加えて、バランスのいいパーティを育てたい。
装備できる武器には様々なタイプがあり、攻撃対象のモンスターによって効果が違う。植物系やスライム系のモンスターにはまるで効果がないものもあるので、パーティ全体の組み合わせに注意しよう。またパーティの中に最低1人、ブーメランや弓などの飛び道具を持たせると、体力が減って逃げ回る敵を楽に仕留めることができる。
たっぷりの懐かしさと、少しの疑問
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村のよろず屋で武器を購入する。キャラクターによって装備できないものもある
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筆者の場合は、まず先に懐かしさを感じたが、初めてこの「ティル・ナ・ノーグ」に触れた人は、どう感じるのだろうか? 10年以上前に初めてこの作品を遊んだときは、シナリオジェネレーターと豊富なアイテムに感動したものだが、それも現在では珍しくなくなった。むしろキツめのバランス設定や単調なダンジョンに、時代の違いを感じる。「RPGはたしかに、しかも驚くほど大きく進化したのだな」と、痛感せざるをえない。いま改めてプレイしても、筆者にとっては十分おもしろい作品なのだが、あのころ「ティル・ナ・ノーグ」や「ブルトン・レイ」に燃えた世代意外の人たち…たとえば3D CGで表現される「ファィナルファンタジー」しか知らないような人たちがどう感じるのか、正直わからない。
復刻された「ティル・ナ・ノーグ」にノスタルジー以上のものがあるのかどうか、それは各自が判断するしかないだろう。
新作の発売も検討中
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ダンジョンの中はこんな感じ。歩いた場所が自動的にマッピングされる
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デモ版では、あらかじめ用意されているシナリオ3本を試すことができる。しかし、新たにシナリオをジェネレートすることはできない。また、各シナリオとも主人公がレベル5になった時点で終了してしまう。…というと、かなり厳しい制限に感じるかもしれないが、実際はレベル5に達するまで最低でも数時間はかかるため、その間たっぷりとプレイできるはずだ。様々なアイテムやパーティの入れ替え、そしてダンジョンの探索など、「ティル・ナ・ノーグ」ならでは世界を体験していただきたい。
製品版は現在すでに発売中で、価格は8,800円。システムソフトはこれに続く新作を検討中で、開発には原作者の竹谷氏も参加するらしい。発売時期など詳しい情報は明らかにされていないが、新しい時代の「ティル・ナ・ノーグ」が作られることに、強く期待したい。
発売元 | システムソフト |
価格 | 8,800円 |
発売日 | 発売中 |
(Tirtry.exe、10.2MB、ゲームデモ)
□「ティル・ナ・ノーグ〈ダーナの末裔〉」のホームページ
http://www.systemsoft.co.jp/game/products/tirnanog.html
□「ティル・ナ・ノーグ〈ダーナの末裔〉」のダウンロードページ
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se196393.html
(駒沢 丈治)
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