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特集

分散型コンピューティングのススメ

あなたもエイズ・癌などの新薬開発や暗号解読、宇宙人探査に参加しよう!

(01/11/08)

 近年のインターネットブームもあり、いまやパソコンは一家に一台という時代になってきた。しかし、メールやホームページ閲覧など1日1時間程度しか使っていないという人も多いのではないだろうか。そんなあなたには“分散型コンピューティング”がおすすめだ。眠っているパソコンの能力をフルに活用できるうえ、宇宙人探査から新薬開発のプロジェクトまで誰でも気軽に参加できる。今日からあなたのパソコンを、科学振興に、社会貢献に役立ててみてはいかが?

■ “分散型コンピューティング”って?

 “分散型コンピューティング”とは、世界中のパソコンの普段使っていないパワーを集め、高価なスーパーコンピューター以上のシステムを作ろうという取り組み。実際には、インターネット上のサーバーからそれぞれのパソコンにインストールされた“クライアント”と呼ばれるソフトがデータをダウンロード、そのデータを解析し、解析した結果をサーバーにアップロードするという仕組みになっている。そのため、データのダウンロードとアップロード時にだけ、インターネットに接続していればよく、ダイヤルアップユーザーでも気軽に参加することができる。

■ 何で注目を集めているの?

 分散型コンピューティングが注目を浴びている要因としては、気軽にボランティアに参加できるということがあるだろう。解析したデータ量のランキングがインターネット上で公開されるのもユーザーの競争心をくすぐっている。チームを組んでランキングに参加することも可能だ。チームで参加する場合は、いかに多くパソコンを参加させられるかがカギとなるため、大学の研究室単位やオンラインソフトのユーザーグループで参加するなどの盛り上がりも見せている。

 新薬開発などを行う企業側も、高価なスーパーコンピューターを購入する必要がなく安価にシステムを構築できるなど、分散型コンピューティングによるメリットが大きい。また、たとえば現在RSA研究所が主催しているRC5の暗号解読コンテストでは、暗号を解読した人に最大2,000ドルの報奨金が用意されているなど、お金稼ぎができるようなプロジェクトがあるのも参加者を惹きつけている魅力の一つといえるだろう。

■ パソコンの動作が重くなったりしないの?

 自分がパソコンを使っている時にクライアントが動作すると、重くなるのでは? と心配する人がいるかもしれないが、その点は大丈夫。ほとんどのクライアントはCPUの空き時間を利用して動作するように設計されているからだ。たとえば、メールソフトを起動してパソコンの負荷が高まればクライアントが自動的に停止し、メールソフトを終了して負荷が下がればクライアントが再び解析を始めるといった具合だ。つまり、パソコンを起動し続けてさえいれば、会議などで席を外している時も、自宅で寝ている間でも解析が行われ、社会の役に立てることになる。

■ 実際に使ってみよう!

暗号を解読すれば報奨金も獲得できる「distributed.net client」

「distributed.net client」
「distributed.net client」
 まずは、古くから分散型コンピューティングに取り組んでいる「distributed.net client」から紹介しよう。RSA研究所などが主催する暗号解読コンテストなどが行われており、現在は“RC5”や“OGR”と呼ばれる暗号や数式の解読プロジェクトが進行している。プロジェクトに参加するには、“DNETC.EXE”を実行後に表示される設定メニューから[1) General Client Options]->[1) Your email address]と選択し、自分のE-mailアドレスを設定、保存すればOK。ランキングの確認や、チームへの参加・新規作成はWebサイトで行える。画面デザインはコンソールベースのシンプルなもので、データ解析の進捗も“.....10%...”などと文字で示される。“View”メニューで“Core Throughput”モードを選択すれば、処理したデータの量を折れ線グラフでリアルタイム表示することができる。

【著作権者】distributed.net
【対応OS】Windows 95/98/NT
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】2.8015.469(01/05/30)

□distributed.net Node Zero
http://www.distributed.net/

ガンに有効な新薬を開発「UD Agent」

「UD Agent」
「UD Agent」
 「UD Agent」は、国内での死亡原因1位とされるガンの治療薬を研究しようというプロジェクトだ。ガンと関係の深いタンパク質に有効と思われる数億種類の分子モデルから、薬として有効なものを検証しようというもので、今後のガン研究に役立てられる。ランキングの確認、チームへの参加・新規作成から、クライアントが動作する時間の設定までをWebサイト上で行うのがポイント。設定するためのメンバーページを表示するにはパスワードが必要で、これは起動時にユーザー名とE-mailアドレスと一緒に指定する。また、画面左側に検証中の分子モデル、画面右側にターゲットとなるタンパク質を表示できるなど、ユーザーの知的好奇心をくすぐる仕掛けも用意されている。そのほか、左側に現在の進捗状況を示すプログレスバー、右側に現在までのスコアとベンチマークのみを表示するシンプルな画面も表示可能だ。

【著作権者】United Devices, Inc.
【対応OS】Windows 98/Me/NT 4.0/2000
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】2.1.2618(01/10/11)

□Projects: Cancer Home - United Devices, Inc.TM
http://members.ud.com/projects/cancer/
□窓の杜 - UD Agent
http://www.forest.impress.co.jp/library/udagent.html

ETが発信する電波を探し出せ!「SETI@home」

「SETI@home」
「SETI@home」
 「SETI@home」は地球外の知的生命体を探査しようというプロジェクトだ。具体的には、自然界では発生しえない電波が観測された場合、地球外の知的生命体が発信した可能性があるという仮定のもと、電波望遠鏡が捕らえた観測データにその電波の信号が含まれていないか探し出すというもの。日本語訳された公式ページのほか、日本語による解説ページが多く公開されており、技術的な背景なども容易に知ることができるだろう。スクリーンセーバーが起動中のときだけ動作させることが可能で、画面上部にはダウンロードしたデータの情報と現在の解析状況が、画面下側には解析中の内容が3次元グラフで表示される。もちろん、タスクトレイに常時待機させておき、CPUの空き時間に動作させることも可能。解析の結果、信号が検出されると、テレビ局やレーダーなど既知の信号源を省き、他のグループによる検証後に世界中の天文学者へ発表されるとのこと。もしかしたら、異星人の共同発見者という形であなたの名前が発表される日がくるかもしれない。

【著作権者】The Regents of the University of California (Regents).
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT/2000
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】3.03(01/04/07)

□SETI@home(in Japanese)
http://www.planetary.or.jp/setiathome/home_japanese.html
□窓の杜 - SETI@home
http://www.forest.impress.co.jp/library/setiathome.html

不治の病“エイズ”に対抗する新薬を開発「FightAIDSatHome」

「FightAIDSatHome」
「FightAIDSatHome」
 「FightAIDSatHome」は、不治の病である“エイズ”に効果のある新薬を開発しようというプロジェクト。現在もなお治療法が確立されていないエイズに、有効な薬を探そうというのがこのプロジェクトの概要だ。参加するにはアカウント作成メニュー内で、ユーザー名とパスワード、E-mailアドレスを入力し、その後表示されるWebページ内で設定したパスワードを入力する必要があるので要注意。登録後は画面上のメンバーIDやチーム名をクリックするだけで、ランキングを確認することが可能。現在解析中のデータが何も表示されないシンプルな設計で、画面左側に「FightAIDSatHome」が動作した時間と、いくつのデータを解析したかが表示される。また、スクリーンセーバーとして動作させた場合は、現在の解析状況を示すプログレスバーのほかに、CPUやHDD、メモリなどの情報を3Dグラフで表示する。そのほか、「SaferMarkets」などの他の3つのプロジェクトに同クライアントを利用して参加することができる。

【著作権者】Entropia, Inc.
【対応OS】Windows 98/Me/NT 4.0/2000
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】2.9.41

□FightAIDSatHome
http://fightaidsathome.org/

アルツハイマー病や狂牛病などの研究を行う「Folding@home」

「Folding@home」
「Folding@home」
 「Folding@home」はタンパク質の異常な折り畳みが起こる過程をシミュレートしようというプロジェクトだ。これは、タンパク質の異常な折り畳みのメカニズムを知ることによって、アルツハイマー病や狂牛病、パーキンソン氏病などのアミロイド形成的疾病の研究に役立てようというもの。Webサイトでは、ランキングのほかに解析中、もしくは予定のタンパク質の分子モデルと説明が英文で掲載されているので興味のある人は見てみるといいだろう。また、現在解析中のタンパク質の名称は、ユーザー名や円状のプログレスバーなどと一緒に画面左側に表示されている。このプロジェクトを実施しているスタンフォード大では、「Folding@home」のほかにタンパク質の構造から、どの遺伝子がそのタンパク質を形成しうるかを解明するプロジェクト「Genome@home」も実施している。

【著作権者】Stanford University
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】2.12

□Folding@home 2.0
http://folding.stanford.edu/
□Genome@home
http://genomeathome.stanford.edu/

(山本 幸広)

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