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【第161回】
アドベンチャーゲーム「Collage」
もつれた糸の如く絡みあう、男女三人の不思議な物語
(03/01/31)
人の出会いとは不思議なもので、ときどき「まさか!?」と思うような場面に出くわすことがある。たとえば親友の彼女が学生時代の同級生だったり、仕事で訪れた会社に昔の友人が勤務していたり、長い間探していた人が実は近所に住んでいることがわかったり…。我々が想像している以上に世間は狭いのか、それとも人間関係というのは我々の想像をはるかに超えて複雑なものなのだろうか。今回紹介する「Collage」は、そんなありそうでなさそうな、しかしなさそうで案外ありそうな、もつれた人間関係をテーマにした作品だ。
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物語はまず、佐々木 由子という女性の視点で始まる |
「Collage」は、実写をふんだんに使ったグラフィカルなアドベンチャーゲームだ。といっても、ゲーム性よりもむしろ登場人物たちの心の内側を読ませるところに重点を置いた作品で、インタラクティブ性を盛り込んだサウンドノベルといったほうが正しいかもしれない。従来のアドベンチャーゲームのスタイルに囚われないハイセンスなデザインと、ポップなBGMを使っているところも大きな特長のひとつだろう。
物語は、三人の男女の独白を中心に展開する。生き甲斐を失い、淡々と日々を繰り返している女性“佐々木 由子”。小説家になる夢を失い、平凡な会社の平凡なサラリーマンとして過ごしている男性“吉村 祐市”。吉村の下で働きながらも、彼に淡い恋心を抱いている女性“西野 ミキ”。ある日、些細な出来事がきっかけとなって三人の男女は互いに知り合い、同じ時間を共有し、そして思いがけない結末を迎える。プレイヤーは同じ時間軸で三人の立場をそれぞれ演じることによって、彼らが口にしたセリフの意味や、その心の内側を知ることができるというわけだ。序盤は恋愛アドベンチャーなのかと思うかもしれないが、物語が進むごとに、このゲームは3人の男女を軸にさまざまな人間の生き様を描くヒューマンドラマだということに気づくだろう。
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選択は二者択一式。ストーリーが展開しそうなほうを選ぼう |
ストーリーの分岐は二者択一式だが、話の流れを把握したうえで、物語が展開していきそうな選択肢を選んでいけば、物語はスムーズに進むようになっている。誤った選択肢を選ぶとすぐにゲームオーバーになってしまうが、事前に謎を解いたり重要な人物に会わなければいけないといったクリア条件がこれといって用意されていないので、行き詰まることもないだろう。もし選択肢に不安を感じる場合は、分岐画面が表示されたところでセーブするとよい。画面を右クリックするとセーブ画面に切り替わり、28カ所まで記録することができる。
ゲームは淡々と流れ、そして淡々と終わる。ホラーでもなければバイオレンスでもなく、ミステリーでもない。アドベンチャーゲームの多くが謎解きや犯人探しを題材にしている中で、実に“変わった”作品だと思う。なのに、すばらしくおもしろい。どこにでもありそうな日常の出来事が絡み合い、すれ違っていたかもしれない他人同士が互いの未来に影響を与える。客観的には“ひとつの物語”なのに、登場する三人の男女にとっては“それぞれ違った物語”であるところも、とても新鮮に感じた。アドベンチャーゲームの新たな可能性を感じる作品だ。
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あるところまで進むと、佐々木 由子の話が終わり… |
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同じ時系列を吉村 祐市の視点でたどることになる |
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そしてさらに西野 ミキの視点で語られ、物語は結末へ向かう |
【著作権者】コミネト 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】0.8
【ファイルサイズ】6.34MB
□Homegorosi PROJECT
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/3968/
(三鷹 昭一郎)
お詫びと訂正:
記事掲載時にソフト名を「College」と表記しておりましたが「Collage」の誤りでした。本文を訂正してお詫び申し上げます。