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【第175回】
アドベンチャーゲーム「second Anopheles」
近未来池袋の都市伝説を追う3部構成の大作アドベンチャー
(03/06/27)
最近は、本格的なミステリーアドベンチャーゲームは減少の一途を辿っている。数が減少していることもあるが、なかなか良質な作品に出会えないのもまた事実だ。そこで今回紹介する「second Anopheles」は、社会の歪みに隠された真実を求めるという、純ハードボイルドスタイルのアドベンチャーゲーム。物語は3つのパートに分けられており、第1部から順にプレイすることで1つの物語が完成していく。本格的な長編ミステリーを求めている人にとってオススメできる作品だ。
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第2部のオープニングで表示される主人公“吉川 和津馬”の姿 |
「second Anopheles」は、コマンド選択式のアドベンチャーゲーム。操作は画面内に表示されたテキストを読み進めて、随所に表示される選択肢を選んで行動を決めるというオーソドックスなものとなっている。舞台は2012年の東京。“遠野 春香”という謎の少女が、秋葉原に事務所を構える探偵の“吉川 和津馬”にある少年を捜してほしいと依頼するところから物語が始まる。プレイヤーは“吉川 和津馬”を操作して、友人のクラッカー“郷井”や警察官“小久保”の協力を得ながら、少年がよく遊んでいたという池袋の街を調べて回る。行動できる場所は主に池袋界隈で、池袋のマップ上から“東池袋”や“明治通り”といった場所を選んで移動するのが、ゲームでのメインの行動となる。そして行く先々で現れる人物との会話や調査から手掛かりを得て、ゲームを進行させていく。また選択肢を選ぶだけでなく、キーワードを直接入力する場面も用意されており、プレイヤー自身で推理をしなければ先へ進めないケースもある。ゲーム画面は実写を加工したものが使われており、随所にムービーも挿入されている。ゲーム内では人物があまり表示されないが、逆にプレイヤーの想像力でリアルな世界観を補完できる点は長所と言えるだろう。
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池袋内のエリア選択後に3~5の目的地を選択して移動する |
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池袋のサンシャイン60。ここも事件の舞台のひとつだ |
ゲームを進めるにあたって注意すべきことは、会話の中から次に自分がどこで何をするべきかを読み取ることだ。会話の内容を把握していないと次の目的地さえ分からなくなり、20カ所以上ある移動先を手当たり次第に調べなくてはならなくなる。また、明らかに危険と思われる状況で行動の選択肢を間違えると、ゲームオーバーになることもある。なお本ゲームにはセーブ機能がなく、ゲームを途中から再開するときは、重要人物との会話の後やイベント後に表示されるパスワードを入力する必要があるので、必ずメモを控えておくようにしよう。
物語は、ただの人捜しから始まるが、調査を進めていくうちに主人公の前に“アノフェレス”という言葉が現れ、気付けば事件はその言葉を中心とした、虚実のはっきりしない都市伝説を巡る大きなうねりとなって主人公を飲み込んでいく。ただ真実のみを求める者、探偵・吉川は事件の核心にたどり着いたとき、何を知るのか? それをプレイして確かめてほしい。また、舞台の中心となる池袋で、主人公の視点から2012年の風景に対する考えが語られるのだが、事件と関係ない場所でも思いがけない言葉が聞けることもあるので、あちこち寄り道をしながらプレイするのもよいだろう。キモとなるストーリーもボリューム感があり、物語の連続性、サスペンス、謎の深さなど、いずれも文句ない出来映えだ。
「second Anopheles」は、Webブラウザー上でFlashファイルが再生される形式のゲームのため、作者ホームページ上でオンラインでプレイすることも可能。ただし、ダウンロード版の方がムービーなどを快適に見られるのでオススメしたい。また、プレイする際はできればパスワードによる中断をせず、一気に通してやり抜いてしまった方がストーリーの繋がりが分かりやすくていいと感じた。3部作というボリュームで濃密に描かれた世界と謎、そして次第に明らかになっていく真のテーマには思わず唸ってしまうことだろう。クリア後にずっしりとした手応えを感じられる作品だ。
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Flashによるムービーでの演出が数多く挿入されている |
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危険を感じる場面での行動は慎重に選択しよう |
【著作権者】御茶ノ水電子製作所
【対応OS】(編集部にてWindows XPで動作を確認)
【ソフト種別】フリーソフト(カンパウェア)
【バージョン】3.3/2.2/2.2
【ファイルサイズ】2.8/4.2/4.9MB
□御茶ノ水電子製作所
http://www.ochaden.net/
(藤井 宏幸)