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宇宙観光旅行へようこそ

パソコン上に小宇宙を再現して謎めく宇宙に迫ってみよう

(03/10/09)

 先月火星が地球に大接近するという天体現象があり、ニュースで聞いた人はもちろん、実際にその光景を見た人も少なくないだろう。地球と火星は、約2年2カ月周期ですれ違うように太陽の周りを公転しており、15年または17年に一度接近するため、接近自体は特に珍しい天体現象ではない。しかし今回は、接近距離が5,576万kmという6万年ぶりの超大接近であったことが注目につながったと言える。今まで宇宙に関心がなかった人でも、実際に自分の目で火星を見ることで宇宙の面白さを少しは感じたのではないだろうか。そこで今回は、パソコン上に宇宙空間や星空を再現したり、宇宙人を探す計画に参加できる6本のオンラインソフトを利用して、楽しみながら宇宙の謎に迫ってみよう。

■ 地球から見た宇宙

 肉眼で見える星は単なる点に過ぎないが、天体望遠鏡を利用すれば美しい星の様子を観察することができる。望遠鏡はその口径が大きければ大きいほど、暗い星や小さな星を見ることができ、星の細かな模様さえも捉えられるようになる。例えば、市販されている口径6cmの望遠鏡で月表面にある物体を判別するには、物体の大きさが4km以上必要となるが、光学望遠鏡としては世界最大の“すばる望遠鏡”を利用すると、400mの物体までが判別可能となる。我が国の科学技術を集結して制作した“すばる望遠鏡”が映し出す星の様子をスクリーンセーバーで見てみよう。

“すばる望遠鏡”の公式スクリーンセーバー「すばるスクリーンセーバー」

“すばる望遠鏡”
“すばる望遠鏡”
 我が国の国立天文台がハワイのマウナケア山に設置した“すばる望遠鏡”の公式スクリーンセーバー。“すばる望遠鏡”は、光学望遠鏡として世界最大となる8.2メートルの口径を有する望遠鏡で、遙か遠くの星雲や銀河などを従来の望遠鏡より鮮明に映し出すことができる。スクリーンセーバーを起動すると、前半は望遠鏡の心臓部である主鏡が機械によって磨かれ、大型トレーラーで輸送されている様子、後半は望遠鏡が映し出したネブラ星雲やアンドロメダ銀河などの様子をスライドショー形式で表示する。また、“すばる望遠鏡”の公式ホームページでは、望遠鏡が捉えた星の画像がたくさん公開されているので、本スクリーンセーバーとともに楽しんでみてはいかがだろう。

【著作権者】国立天文台
【対応OS】Windows 2000(編集部にてWindows XPで動作確認)
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】-

□Subaru Telescope, NAOJ
http://subarutelescope.org/j_index.html


■ 美しい星空

 星空を見上げるだけで、宇宙には無数の星が存在していることが分かるだろう。一概に星と言っても、自らが光を放っている恒星や、恒星に照らされて光っているように見える惑星など種類はさまざまだ。しかし、地上の明かりが強い都心などでは、きれいな星空を見ることは難しい状況にあるため、パソコン上でプラネタリウムを再現できるソフトを利用してみよう。星の名前や位置を知ることで、いつも見ている星空のイメージが変わるかもしれない。

指定した場所・日時の星空を描くプラネタリウムソフト「Stella Theater Pro」

「Stella Theater」v2.20
「Stella Theater」v2.20
 指定した場所・日時における全方角の星空を再現し、時間経過による星の動きをシミュレートできるプラネタリウムソフト。始めに[時刻の変更]メニューで任意の日時を指定し、[観測地の変更]メニューで世界中の主要都市一覧から地名を選択するか、または経緯度と時差で任意の地点を設定しよう。すると、指定した場所・日時の星空がウィンドウいっぱいに表示され、マウスで星空をドラッグすることで全方角の様子を確認することができる。また、ツールボタンで星座名、星座線、季節線、恒星名、銀河、太陽系の惑星などの表示・非表示を切り替え可能。さらに、[自動モード]ボタンを押すと、時間経過によって星空が変化する様子をシミュレートすることができ、南の空を表示しておけば太陽が昇り沈んでいく様子も確認できる。本ソフトを利用すれば、現在自分が見ている星空を再現することはもちろん、海外旅行に行く際に星の位置や名前を事前に覚えておくことができるだろう。

【著作権者】Toxsoft
【対応OS】Windows 95/98/NT 4.0/2000/XP
【ソフト種別】シェアウェア 4,800円(Lite版はフリーソフト)
【バージョン】2.20(03/09/25)

□Toxsoft Home Page
http://www.toxsoft.com/
□窓の杜 - Stella Theater
http://www.forest.impress.co.jp/library/stellatheater.html


■ 月旅行“アポロ計画”

 現在から40年以上も前に、人類は月に降り立つべく“アポロ計画”を開始していた。それまでに人間が乗った宇宙船を宇宙に送り出すことは成功していたものの、宇宙船同士のランデブーやドッキング、船外活動用の宇宙服など、開発しなければならない技術がたくさんあったため、これらの開発を目的に立ち上げられたのが“ジェミニ計画”。では、人類が初めて月に降り立ったときに使用した宇宙船は、いったいどんなものだったのだろうか。

アポロの月着陸船を描いた3Dスクリーンセーバー「アポロ・スクリーンセーバー」

月着陸船“Lunar module”
月着陸船“Lunar module”
 アポロ宇宙船が搭載していた月着陸船“Lunar module”が、月表面近くを飛行する様子を描いた3Dスクリーンセーバー。起動すると、月着陸船が“スラスター”と呼ばれる小型のエンジンを噴射して、あらゆる方向に船体姿勢を変えながら月表面近くを飛行する様子を描いていく。しばらく飛行していると、宇宙空間に浮かぶ青く輝く地球や、眩しく光る太陽がはっきりと見え、月から見た宇宙の様子を堪能することができる。スクリーンセーバーに登場する月着陸船を見ると、『本当にこれが宇宙船なのか』と疑問に思うような頼りない船体構造をしていることが分かるだろう。月着陸船“Lunar module”は、宇宙空間のみを飛行する目的で開発した2人乗り宇宙船であり、SF映画に登場するような流線型の船体は全く見られない。ゴツゴツとした船体にアンテナや着陸用に使用される足のようなパーツが剥き出しで付けられているが、これは宇宙空間では空気抵抗を考える必要がないことから生み出された船体構造と考えられる。また、船体は徹底的に軽量化する必要があり、アルミの骨組みに断熱やごく小さな隕石から船体を守るための金属箔を貼るだけという非常にシンプルな構造だったようだ。

【著作権者】Takeshi Muto 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】00.02(03/02/22)

□飛行機と旅行:Aircrafts and Travel
http://apollomaniacs.web.infoseek.co.jp/
□アポロ マニアックス : アポロスクリーンセーバー
http://apollomaniacs.web.infoseek.co.jp/apollo/apsaver.htm


■ 宇宙ステーションが未来を切り開く

 近年宇宙への足がかりとしてだけでなく、宇宙という特殊な環境における実験や研究を目的とした国際宇宙ステーションが、日本を含む各国により共同開発されている。宇宙ステーションの建設は、モジュールと呼ばれるパーツを段階的に宇宙へ打ち上げ、宇宙空間で組み立てていく方式で、2008年完成予定とのこと。完成した宇宙ステーションは、サッカーの国際試合で使用されるフィールドにぴったり収まる108×73mもの大きさになり、地上から400km上空を地球1周90分という猛スピードで周回する。日本が開発を担当するのは、“きぼう”と名付けられた実験モジュールで、船内と船外に2つの実験スペースを備えているという。実際に宇宙ステーションが完成するまで5年余り残されているが、シミュレーションゲームを利用して宇宙ステーションを一足先に建設してみよう。

宇宙ステーションを建設・運営するシミュレーション「Space Station Manager」

巨大な宇宙ステーション
巨大な宇宙ステーション
 実験・発電施設といった合計16種類のモジュールを自由に組み合わせ、5要素である電力・放熱・生命維持・乗員・利益のバランスを取りながら、地球上空を周回する宇宙ステーションの建設・運営を行っていく3Dシミュレーションゲーム。ゲームは、モジュールを増設して宇宙ステーションを拡張し、収益を増やすことで与えられたミッションをクリアする流れで進行する。ただし、モジュールはそれぞれ役割があり、電力・放熱・生命維持・乗員・利益のバランスを考えて増設しなければ、効率のよい宇宙ステーションの運営は行えない仕組みだ。モジュールを追加するには資金が必要なため、バランスが崩れて赤字経営になると、宇宙ステーションをまったく増設できない状況に陥ることもある。ミッションは、毎月の収益を定額まで増やしたり、モジュールを与えられた数まで増設するなど、基本的に宇宙ステーションの利益につながるように設定されているので、序盤はミッションのクリアを目指してゲームを進めていこう。

【著作権者】Mistaril
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】体験版フリーソフト(ダウンロード販売版は24.95ドル)
【バージョン】1.0.8(03/09/26)

□Mistaril games
http://www.mistaril.com/
□窓の杜 - 【Review NEWS】宇宙ステーションを建設・運営するシミュレーション「Space Station Manager」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/08/21/spacestation.html


■ 宇宙へ出発

 アポロ計画で人類が月に降りたって以来、月はおろか他の惑星へ向けて、人間を乗せた宇宙船は出発していない。よく耳にするスペースシャトルも、人工衛星や惑星探査機などを宇宙に送り出すために地球の低軌道上を周回しているだけであり、いかにアポロ計画が革命的であったかが分かる。やはり、宇宙船に乗って宇宙空間を自由に旅し、惑星を間近で観察したいものだ。

惑星間飛行や天体の動きを再現できる3D天体シミュレーター「Celestia」

月から見た地球
月から見た地球
 指定した惑星や恒星へ向けて宇宙空間を飛行する様子や、天体の自転・公転といった動きを再現できる3D天体シミュレーター。メニューの[Solar System Browser]を選択すると、太陽系の惑星やその衛星が一覧表示されるので、観察してみたい星を指定して[Go To]ボタンを押せば、ウィンドウ内に再現された宇宙空間を高速で移動し、指定した星を間近で見ることができる。また、メニューの[Star Browser]では、さまざまな恒星を目指して宇宙空間を飛行することが可能。さらに、再現された宇宙空間は、グリニッジ標準時間のリアルタイムで時間が経過しており、ゆっくりではあるが星々は自転・公転を行っている。[L]キーを一回押すごとに時間経過のスピードを10倍ずつ上げることができ、[K]キーでスピードを下げることが可能だ。例えば、同じ時間経過のスピードで地球と月の自転周期を見比べると、地球の方が圧倒的に自転スピードが速いことに気付くだろう。

【著作権者】Chris Laurel 氏
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT 4.0/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.3.0(03/04/16)

□Celestia: A 3D Space Simulator
http://www.shatters.net/celestia/
□窓の杜 - Celestia
http://www.forest.impress.co.jp/library/celestia.html


■ 宇宙人発見!?

 人類が宇宙事業に力を注ぐ理由として、地球、そして宇宙誕生の仕組みを解明することが挙げられるが、地球外生命体の存在、つまり宇宙人が存在するかは誰もが気になることだろう。宇宙には、銀河と呼ばれる星の集まりが数千億以上あると推測されており、さらに地球が属する天の川銀河には数千億の恒星が存在している。宇宙から見れば太陽は一般な恒星であるように、地球もごく平凡な惑星の1つであることを考えると、宇宙のどこかに地球と同じような文明が繁栄していると考えても不思議ではないだろう。とはいえ現在の科学技術では、宇宙空間を旅しながら知的生命体を探すことなどまさに夢物語。だが、地球にいながら宇宙人を発見できる手段が存在する。

世界中の個人所有パソコンで地球外知的生命体を探し出す「SETI@home」

データ解析中の3Dグラフ
データ解析中の3Dグラフ
 電波望遠鏡で宇宙を観測し、科学的に地球外知的生命体を探し出すプロジェクトのことを総称して、“SETI(The Search for Extraterrestrial Intelligence)”と言う。1980年にアメリカで設立された惑星協会が中心となり、これまで世界の主要天文台で“SETI”が行われている。しかし、宇宙から地球に届く膨大な電波を解析するには、処理能力が高いスーパーコンピューターを必要とするため、莫大な費用がかかる。そこで、個人所有のパソコンが使われていないときの余力を利用し、複数のパソコンに観測データの解析を一部分ずつ分散することで、スーパーコンピューター並の処理能力を実現しようという計画“SETI@home”が立ち上げられた。この計画のクライアントソフトを利用すれば、プエルトリコのアレシボ天文台が観測したデータをインターネット経由でダウンロードして解析し、その解析結果を再び送り返すことができる。解析中は、ウィンドウ上部にダウンロードしたデータの情報とデータの解析状況、ウィンドウ下部には“高速フーリエ変換”という数学的処理を観測データに施している様子が三次元グラフで表示され、実際に自分のパソコンでデータを解析していることを実感できる。より多くのパソコンユーザーがこの計画に参加することで、我々地球人が異星人とコンタクトする日が近づくかもしれない。

【著作権者】SETI@home, UC Berkeley
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】3.08(03/04/04)

□SETI@home: Search for Extraterrestrial Intelligence at home
http://setiathome.ssl.berkeley.edu/
□窓の杜 - SETI@home
http://www.forest.impress.co.jp/library/setiathome.html

(中井 浩晶)


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