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フリーの日本語フォント「東風フォント」の制作・配布活動が終了
『自由なフォントが欲しい』という開発動機を維持できなくなったとのこと
(03/10/23)
フリーの日本語フォント「東風フォント」の作者である古川 泰之氏は21日、同フォントの制作・配布活動を終了することを同氏のWebサイトにて発表した。活動終了の経緯としては、同氏が同フォントを制作する過程で参考にしたフォントの中に、既存製品の権利を侵害するフォントが含まれることが発覚したことがある。また、権利所有者との話し合いにより、「東風フォント」の開発を継続するためには既存製品の権利を有する会社と新たな契約を結ぶ必要があるという。同氏は、権利所有者のもつ諸権利を尊重したうえでこれらの決定内容にしたがいつつも、同氏の『自由なフォントが欲しい』という開発動機を維持することはできないと判断したため、同フォントの制作・配布活動を終了するに至ったという。
古川氏の制作した「東風フォント」は、フリーの日本語フォントを同氏が複数組み合わせ、全体的な字形を整えるために各種編集処理を施すなど、独自に改良したものだった。しかし元にしたフォントの中に、(株)日立製作所と(株)タイプバンクが共同制作した既存製品「日立-TB 32ドットフォント明朝体」から無断で派生、もしくは無断で複製したフォントが含まれていることが発覚した。これを受け両社は9月29日、プリンターに関わる日立グループのリソースを結集した日立プリンティングソリューションズ(株)のWebサイトにおいて、「日立-TB 32ドットフォント明朝体」の権利を侵害する派生・複製フォントの無断使用を全面的に禁止する意向を明らかにしている。
古川氏のWebサイトに掲載されている情報によれば、今後も「東風フォント」を継続して制作・配布するためには、日立プリンティングソリューションズ(株)と新たな契約を結んだうえで、両社の権利使用の旨を明記し、フォントを非営利使用に限定する必要があるという。しかし同氏は、両社のもつ諸権利を尊重したうえでこれらの決定内容にしたがいつつも、同氏の『自由なフォントが欲しい』という開発動機を維持することはできないと判断したため、同契約を断り、「東風フォント」の制作・配布を終了することを表明したという。なお日立プリンティングソリューションズ(株)によれば、派生フォントの一部が両社に無断でLinuxディストリビュージョンに流用されていたが、Linuxの振興活動を考慮・協力するために、限定した範囲での使用は今後も認めていくという。
□My Linux 日本語化計画(古川 泰之氏のWebサイト)
http://www.on.cs.keio.ac.jp/~yasu/jp_fonts.html
□プレスリリース(日立プリンティングソリューションズ(株)のWebサイト)
http://www.hitachi-printingsolutions.co.jp/topix/release/030929.html
□窓の杜 - 【今日のお気に入り】フリーのフォント「東風明朝」「東風-和田研ゴシック」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2002/06/03/okiniiri.html
(竹元 克己)
お詫びと訂正:
記事初出時の『古川氏が「東風フォント」の制作・配布を終了した理由』について、編集部の記述に誤りがあるとのご指摘を古川様よりいただきましたため、記事の該当部分を訂正させていただきました。古川様を始め、関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。