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【第187回】

ファンタジーアドベンチャーゲーム「時の封土」

時間が静止した世界からの帰還を目指す謎解き型アドベンチャー

（03/10/24）

　人、物、そして場所。人間は、さまざまな出会いと別れを繰り返して生きていくものである。とはいえ、大切なものを失ったときに、思い出の中へ閉じこもってしまいたいと考えたことはないだろうか？　あの楽しかった頃に戻って、そのまま時が止まってしまえばいいのに……と。今回紹介する「時の封土」は、そんな人の心に生じた小さな闇が異世界へ迷い込むきっかけになってしまうという、驚きと恐れ、そしてちょっぴり憧憬の入り混じった切ない物語だ。

育ての親だった恩師の訃報を聞き、主人公が10年ぶりに帰郷するところから物語は始まる

　「時の封土」は、選択肢の中から行動を選ぶことで物語が進行するコマンド選択式のアドベンチャーゲーム。実写の背景やCGで描かれた人物などを画面全体に、会話の内容や現在の状況を画面下側にテキストで表示し、テキストを読み進めながら状況によって表示される選択肢を選んでゲームを進行させる。物語の舞台は、“時の封土”と呼ばれる時間の流れから切り離された異世界。“時の封土”に迷い込んでしまった主人公が、謎の少女“ラーナ”やそこに住む人々と出会い、待ち受ける謎や仕掛けを解き明かしながら元の世界への帰還を目指すストーリー。“時の封土”では、パズルなどの仕掛けが行く手を阻んだり、主人公の命をつけ狙う“時の盗賊”に遭遇するなど、さまざまな出来事が待ち受けている。またエンディングは5つ用意されており、選択した行動の内容によってさまざまな結末へ導かれていく。ただし、“時の盗賊”に遭遇する場面など、特定の場面で誤った行動を選択すると、ゲームオーバーになってしまう場合もあるので注意しよう。

　プレイヤーは、場面に応じて表示された選択肢の中から行動を選んで冒険を進めていく。選択肢には、移動や他のキャラクターに話しかけるものだけでなく、現在位置を調べたり、スイッチやダイヤルを操作するなど、さまざまなものが出現する。注意しなければならないのは、これらの選択肢をただ闇雲に総当たりしても決して先へは進めないということ。キャラクターと会話するときや現在位置を調べるときは、同じ選択肢を何度も繰り返して選択することで、新しい選択肢や展開の出現につながる場合もある。したがって主人公の行動は、表示されるメッセージが変わらなくなるまで同一のものを選択し続けるとよいだろう。また、スイッチやダイヤルを操作することで周囲にあるエレベーターやポンプなどを制御できるが、表示されている画面は変化しないので、常に操作の結果がどう変わったか、メッセージを読んで確認しながらプレイすることが大切だ。

“時の封土”で最初に出会う少女“ラーナ”。彼女からさまざまな情報を得ながら冒険を進めていく

　本作品は、物語の舞台が“精神の森”や“迷いの平原”といったいくつかのブロックに分かれており、一度先のブロックに進んでしまうとそれ以前の場面に戻ることができなくなる。アイテムや謎解きのヒントの入手など、特に必要ないと思われる要素でも満たさないまま先に進んでしまうと、途中で行き詰まってしまうことがあるので注意が必要だ。また、ヒロイン“ラーナ”との何気ないやりとりなど、ゲーム進行上は必須でないものの、エンディングの分岐に大きな影響を与える要素も存在する。セーブデータは8つまで保存できるので、こまめにセーブしながらプレイするとよいだろう。

　現在公開されているリニューアル版「時の封土」は、MAKIO氏が制作したオリジナル版をベースにして、古林氏が内部プログラムなどを一新して見栄えや操作性を向上させたもの。繰り返しのプレイにも耐えるように、謎解きで登場するパスワードも毎回変わるように改良されている。アメリカの田舎町を舞台にしたノスタルジックなオープニングから一転して、寂寞としたファンタジー世界へと転換していく大胆な構成も本作品の大きな魅力と言えるだろう。5つのエンディングをコンプリートするまで、選択肢の選び方を少しずつ変えて何度も楽しんでほしい。

表示される選択肢の中から行動を選ぶ。複数の選択肢を順に選ぶことで作動させる仕掛けも多い		謎解きの難度は高め。ヒントを頼りにきちんと考えて解かないと先に進むことはできない

【著作権者】MAKIO　氏
【作者】古林 寛　氏
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.0（03/10/02）
【ファイルサイズ】2.6MB

□Pleiades Company Homepage
http://pcomp.jp/
□the Lena's Fan Club（リニューアル版開発・配布）
http://www3.sppd.ne.jp/lena/

（肥田 明久）