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週末ゲーム

【第195回】

アドベンチャーRPG「クミとクマ」

少女とクマのぬいぐるみの冒険を描いたハートウォーミングコメディRPG

(04/01/23)

タイトル画面

 RPGは日本で最も売れるゲームジャンルである。そのせいか大衆性を損ねるような、たとえば主人公が戦闘でお荷物になる、宿屋での体力回復に制限が設けられるといったシステム面での実験的な試みは、採用されないことが多い。今回紹介する「クミとクマ」は、そういった市販ソフトでは採用されないようなシステムを導入することによって、独自のかわいいキャラクター性や世界観を構築し、ひと味違う手触り感を楽しめる作品となっている。

主人公の“クミ”は現代に生きる普通の女の子。物語はクリスマスイブから始まる
主人公の“クミ”は現代に生きる普通の女の子。物語はクリスマスイブから始まる
 
しゃべるクマのぬいぐるみ“グレ”は“クミ”の母親の手作り。だけど、ちょっとブサイク?
しゃべるクマのぬいぐるみ“グレ”は“クミ”の母親の手作り。だけど、ちょっとブサイク?
 
序盤は実に頼りないパーティー。ちなみに“グレ”はぬいぐるみなのでレベルアップしない。
序盤は実に頼りないパーティー。ちなみに“グレ”はぬいぐるみなのでレベルアップしない。

 「クミとクマ」は、森や街などを探索したりコマンド選択式の戦闘を行ってストーリーを進行させるアドベンチャータイプのRPG。物語は小学2年生の女の子“クミ”が、クリスマスプレゼントでもらった喋るクマのぬいぐるみ“グレ”と共に、“クリームブリュレ王国”という異世界の国に迷い込んでしまうところから始まる。異世界に迷い込んだ“クミ”は、魔王退治を宿命づけられた王国の姫と間違われてしまい、“グレ”や王国の騎士“ウェハース”などの仲間とともに無謀な魔王退治の旅に出るというストーリー。画面は2Dのフィールドを真上から見下ろすタイプで、プレイヤーは“クミ”を操作して森や街などを探索してゲームを進行させる。街以外のフィールドではモンスターが動き回っており、接触すると画面が切り替わってコマンド選択型の戦闘へと移行する仕組みだ。なお、戦闘でパーティー全員の体力がゼロになるとゲームオーバー。また本作には、日付の概念が設けられており、宿屋などで寝るたびに1日経過する。そして、期日までに魔王を退治できない場合もゲームオーバーとなるので注意しよう。

 戦闘は、各キャラクターごとに“攻撃”“特殊技能”“防御”“アイテム”のコマンドを選択することで進行する。通常のRPGでは、“攻撃”を選択すると簡単にダメージを与えられるようになっているが、本作ではキャラクターの特長を生かしたコマンドを選択しないと、敵を倒すことができない。たとえば、ゲーム序盤の“クミ”と“グレ”では“攻撃”を選択してもほとんどダメージを与えられないので、“特殊技能”を選択するとよい。序盤の“クミ”の場合は、仲間のステータスを上げる“特殊技能”の“応援する”を、“グレ”の場合はモンスターを驚かせて行動不能にする“特殊技能”の“ツッコミ”を活用するとよい。また戦闘中に体力を回復する手段が少ないので、戦闘後はこまめにお菓子を食べて回復しよう。戦闘を繰り返してレベルアップすることも重要だが、街などで本を読むことで“特殊技能”を修得したり、アイテムを入手してキャラクターを強化させることも可能だ。

 また本作では、ただ戦闘で勝利してもお金を入手できない。戦闘終了後にモンスターの死体を調べると毛皮などを発見する場合があるので、それを売ることによりお金が手に入るようになっている。お金がほしいときは、毛皮にできる犬タイプか蛇タイプのモンスターを倒すようにしよう。また、必要以上に宿屋に泊まらないことも重要だ。本作では、イベントクリアのために日数を費やす場合もあるので、レベル上げのために戦闘と宿屋での体力回復を繰り返すのは得策ではない。これは、レベル上げによる力押しのクリアではなく、イベントやクエストに時間をかけてプレイを楽しんでほしいという、制作者のRPGに対する考えが現れているのではないだろうか。

 システムの斬新さが目につくが、本作の最大の見所はキャラクターとストーリーである。ちょっとだけ天然ボケで、ノリノリの主人公“クミ”のかわいさ、周りの人間に汚いぬいぐるみとバカにされながら、関西弁で鋭いツッコミを連発する“グレ”、堅物だが真剣に魔物から“クミ”を守ろうとする“ウェハース”の3人を中心とした、ボケとツッコミを常に忘れないユーモラスなやりとりは最後までプレイヤーを飽きさせない。また、無謀な魔王退治の旅を続けていくことで、“クミ”が“クリームブリュレ王国”に迷い込んだ理由や“グレ”の正体、魔王に勝つための方法といった謎が解き明かされていくのだが、その真相には説得力があり、よく練られている。ひねりの効いたRPGや、ボケとツッコミが大好きな人にオススメしたい。

先へ進むために倒さなければならないモンスターもいるが、その数は多くない   戦闘用の“特殊技能”は“グレ”の“ふかふかする”など変わったものが多い
先へ進むために倒さなければならないモンスターもいるが、その数は多くない   戦闘用の“特殊技能”は“グレ”の“ふかふかする”など変わったものが多い

“クミ”の特殊技能“応援する”は最後まで使える便利な技能だ   戦闘中にはやる気を見せたり、ボケをかましたりと様々な会話が挿入される
“クミ”の“特殊技能”の“応援する”は最後まで使える便利な技能だ   戦闘中にはやる気を見せたり、ボケをかましたりと様々な会話が挿入される

【著作権者】タンクタウン
【対応OS】Windows 95/98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.11(03/12/14)
【ファイルサイズ】4.6MB

□TANK TOWN
http://tanktown.web.infoseek.co.jp/tt/tt_top.htm

(藤井 宏幸)


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