.

【第197回】

サスペンスアドベンチャーゲーム「風の殺意」

風が強く吹く晩に、もつれた人間関係が殺人事件へと発展していく

（04/02/13）

　人間関係とは複雑なもので、たとえるなら波間に漂う氷山に似ているかもしれない。他人から見えているのはほんの一部分に過ぎず、その大半は水面下に隠れている。親しいと思われていた者同士が実は互いに煙たがっていたり、疎遠に思えた者同士が実は深くつながっていたということも珍しくない。今回紹介する「風の殺意」は、そんな人間関係の複雑さを描いた作品だ。

山奥の洋館に集まった放送部員6名。婚約した二人を祝福するはずだったのだが……

　「風の殺意」は、会話などの途中で表示される主人公の行動を選択肢のなかから選んで進行させる、サウンドノベル仕立てのサスペンスアドベンチャーゲーム。主人公は、ある高校の放送部員の少女“原田 涼子”。同じ放送部員の“高見 翔”と“沢井 美佳”の婚約を祝い、6人の放送部員で長野の山奥にある洋館で送別会を開催するというストーリー。しかし、婚約した2人を祝福するための送別会は血塗られた惨劇の舞台となり、もつれた人間関係が疑惑を生む。なぜ事件は起こったのか？　誰が犯人なのか？　共犯者はいるのか？　主人公“原田 涼子”の視点で事件の真相に迫っていく。

　画面は、現在地などを背景にして会話をしている登場人物たちが次々と画面内に表示されていくオーソドックスなスタイル。ゲームの進行にあわせて“原田 涼子”の行動を2～4個の選択肢から1つ選ぶようになっている。主人公がインタラクティブに何かを調べたり任意の場所へ移動することはなく、行動を選択したあとは、自動的に会話や状況説明などのメッセージが表示されゲームが進行する。アドベンチャーゲームというよりはサウンドノベルに近いだろう。とはいえ、物語の内容は決して単純ではなく、同じ選択肢を選んでも過去の行動によって展開が変わる場合もある。また、ある程度謎解きが進むと主人公以外の人物の視点に切り替わり、他の人物同士のやりとりを見ることができる。

表示される選択肢は2～4個。どれを選ぶかで展開は大きく変わる

　事件は、送別会を途中で抜け出した“原田 悠吾”と“倉本 さやか”の騒動がきっかけとなって発生するが、これまでに選択した行動によって、殺される人物や犯行内容が大きく変化するところがおもしろい。また、接点のなさそうな人物が密接に絡んで物語に大きく影響することもあるので、各人物の会話に耳を傾けて互いの人間関係を観察しておくとよいだろう。ちなみにエンディングは全部で21種類用意されていて、その終わり方もさまざまだ。事件らしい事件が起こらないまま合宿が終了することもあるし、鍵となる人物が自殺してしまったり、主人公が何者かに殺されてしまう場合もある。すべての謎が解ける結末はたった1つで、もちろん容易にたどり着くことはできない。本作品では、各人物との信頼関係を築くことがとても重要となるので、複数の選択肢が提示された場合は、仲間の信頼を得られるような行動を選ぶとよいだろう。

　プレイしてまず驚かされたのが、21種類もあるエンディングだ。遊ぶたびに違う結末になるといってもよいほどで、正直、よくここまで作り込んだものだと思う。始まりは同じなのに、悲劇的な結末や明るい結末、おちゃらけた結末などいくつもの終わり方が存在し、シナリオの周到さと幅広さを楽しむことができた。謎解きは謎解きでおもしろいが、敢えて違った結末を狙ってプレイするというのも、また別な遊び方としてオススメしたい。

放送部員の男子学生“桧垣 孝之”と“原田 悠吾”。事件の発生とともに焦りの表情が浮かぶ		エンディングは21種類。悲劇的なものからおちゃらけたものまでさまざまだ

【著作権者】風の殺意制作委員会
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.0（03/12/26）
【ファイルサイズ】7.4MB

□風の殺意トップ
http://kazesatu.kt.fc2.com/
□風の殺意(Windows95/98/Me/ゲーム)
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se313807.html

（三鷹 昭一郎）

---

編集部注： 作者のホームページが表示されにくい場合もございますので、ベクターのソフトライブラリへのリンクを追加いたしました。