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【特別企画】

年末年始に“短編ノベルゲーム”はいかが?

ちょっとした時間で気軽に楽しめる、さまざまなジャンルの8作品をご紹介

(05/12/16)

 物語を、文字だけでなく絵や音楽と組み合わせて描くノベルゲームは、小説のように文字だけの媒体では表現できない魅力をもっている。しかし最近では、市販作品を中心に長編化が進んでおり、1本読むのに数十時間かかってしまうような大作もめずらしくない。

 もちろん長編には長編の魅力があるが、普段ノベルゲームに親しんでいない人が手を出すには敷居が高いし、反対にノベルゲームは好きだけれど時間に追われて読む時間が取れず、足が遠のいている人もいることだろう。

 今回はそんな人たちにも楽しめる短編ノベルゲームを8作品ご紹介する。どの作品も10分から30分前後で読める短くてシンプルな作品ばかりだが、そのぶん分かりやすいので素直に物語に入っていくことができるはずだ。年末年始のちょっとした空き時間に、気軽に楽しんでみてはいかがだろうか。

夜の電車で体験した不思議な出会いをモノクロで綴る「それじゃあ、またね。」

「それじゃあ、またね。」
「それじゃあ、またね。」
「それじゃあ、またね。」
 「それじゃあ、またね。」はモノクロ画面を効果的に使った、短編ノベルゲームだ。選択肢などはなく15分程度で読むことができる。

 街灯の光の下で泣いている“ボク”に差し出された温かい手と、白い煙が絶えることなく焚かれた、小さな部屋に漂う甘い香り。そんな忘れたはずの光景から青年が目覚めるとそこは電車の中だった。夢にうなされていた青年に声をかけた、ボックス席の対面に座る美しい女性の笑顔に、主人公はなぜか懐かしさを覚える。『この路線にまつわるお話をご存じですか?悪霊が出るそうなんですよ』。暗闇を走り抜ける電車の中で起こった不思議な出会いを描いた物語だ。

 切り絵か版画を思わせるタッチで描かれたキャラクターイラストがモノクロ写真の背景に溶け込み、静かに流れるBGMとともに、夜の電車というどこか不思議な静けさをたたえた空間を演出している。画面と同様に淡々と綴られる物語に派手さはないが、心に残る、少し切なく心温まる作品に仕上がっている。


【著作権者】LUNA BLESS
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.0
【ファイルサイズ】17MB

□それじゃあ、またね。:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!]
https://www.freem.ne.jp/win/game/585

壊れた携帯電話がもたらす初恋を描いた青春ストーリー「夏の日のレザナンス」

「夏の日のレザナンス」
「夏の日のレザナンス」
「夏の日のレザナンス」
 「夏の日のレザナンス」は女の子の視点で綴られる、ちょっとSFテイストの入った青春モノの短編ノベルゲームだ。プレイ時間は30分ほどで、途中選択肢などは登場しない。

 子供と大人の境目、そんな微妙な年頃の少女“倉沢 佳澄(くらさわ かすみ)”は、登校中のハプニングで携帯電話を壊してしまう。とぼとぼと歩く帰り道、壊れたはずの携帯電話が動き出し、空中に少女の姿を映像として映し出した。不思議な出来事をとおして出会ったのは、“川原 みなも(かわはら みなも)”と“向井 樹(むかい いつき)”という、姉妹のように仲のよい少女たち。樹に恋心を抱いてしまった佳澄は、3人で会う約束の場所で2人を待つが……。『“ありえない事”っていうのは、“誰に言っても信じてもらえない出来事”ってことなんだと思うよ』。

 見栄えのするアニメ調のキャラクターイラストや、まばたきのアニメーションが目を引く作品。3人の少女たちの出会いと初恋をとおして、少女が大人への階段を上っていく姿を描く。初夏の涼しげな風を感じさせる透明感のあるBGMも印象的。幕間に表示されるモノクロイラストも物語に華を添えている。


【著作権者】彩藤神楽 氏
【対応OS】Windows 95/98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.01
【ファイルサイズ】2.4MB

□- Resonance -
http://www.re-sonance.com/

夜空の下、2人の少女との出会いから始まる不思議な物語「常世の星空」

「常世の星空」
「常世の星空」
「常世の星空」
 「常世の星空」(とこよのほしぞら)は選択肢なしで読み進めていく、伝奇モノの短編ノベルゲーム。プレイ時間は40分前後と、今回取り上げたなかでは最も長い作品だ。

 満月の夜、学校帰りに公園で満天の星空を見上げていた主人公“綾河 紅夜(あやかわ こうや)”は、ちょっと高飛車で泣き虫なアルビノの少女“九条 命(くじょう みこと)”と出会う。命は、体が弱いため外出させてもらえず、夜に抜け出してきていると自らの境遇を語った。翌日の星ひとつない夜、紅夜は真っ黒な服を着た謎の少女と出会う。『今日は良い夜ですね』という少女の言葉に見上げた夜空に雲はなく、“真っ赤な夜空”が広がっていた……。彼女は言う。『警告します。残り、四日です』。

 些細なはずの出会いがもたらした不可思議な物語を、テンポのよいBGMに乗せて描いていく。メッセージウィンドウの横に表示される顔グラフィックと、物語の見せ場を彩る全画面表示の一枚絵は味のあるタッチで、とくにヒロイン“命”の豊かな表情は本作の魅力のひとつだ。


【著作権者】EXTRA
【対応OS】Windows 95/98/Me/NT 4.0/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.00
【ファイルサイズ】27.2MB

□常世の星空の詳細情報 : Vector ソフトを探す!
http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se363812.html

幼なじみとの日常とそこにある幸せを描く学園恋愛ノベル「なつのおわりに」

「なつのおわりに」
「なつのおわりに」
「なつのおわりに」
 「なつのおわりに」は幼なじみとの日常を題材とした、学園恋愛モノの短編ノベルゲーム。プレイ時間は20分ほどで、途中3カ所の選択肢があるが、エンディングには影響しないので気軽に読み進められる。

 涼しかった夏休みが終わり、いまさらになって暑さが増してきた二学期の初日。主人公“紀一郎”が久しぶりに会った幼なじみの“彩夏”(あやか)は、いつもとどこか違って見えた。髪を下ろした幼なじみの姿に違和感を感じる紀一郎。彼を“きっち”と呼ぶ幼稚園の頃からのお隣さんは、昔の失敗を取り上げては『私は、憶えているよ』と彼をからかう。それは変り映えしない他愛なくも楽しいやりとり。しかし、紀一郎は彩夏が引っ越すという噂話を聞いてしまい……。

 当たり前の日常の幸せを実感する夏の終わりの1日を、まばたきのアニメーションつきのキャラクターイラストや全画面表示の1枚絵、軽快なBGMで描いた作品だ。


【著作権者】(猫)milk cat
【対応OS】Windows 95/98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.20(04/06/09)
【ファイルサイズ】2.51MB

□(猫)milk cat
http://milkcat.jp/

古ぼけた手紙からよみがえる父の想い出。家族の絆を描く短編「手紙」

「手紙」
「手紙」
「手紙」
 「手紙」は背景の上の全画面に文章が表示される、より小説に近いタイプのノベルゲームで、プレイ時間は約15分。ゲーム中の選択肢は3カ所ほどで、物語の本筋は変わらないもののちょっとした文章の変化が楽しめる。

 都会での生活にも慣れたある夏の日、主人公“渡辺 貴宏”は一通の手紙を見つける。ボロボロで差出人の名前もない、けれどもどこか見覚えのあるその手紙に導かれるように、貴宏は数年ぶりに遠く離れた故郷を訪れる。彼は懐かしい景色のなか、自分がまだ幼かった頃、父が亡くなった夜のことを思い出していた。父の墓参りをした日の晩、貴宏は散歩中に足を滑らせ、神社の階段から落ちてしまう。翌朝目を覚ました彼は、“たかひろ”という名前の少年と出会い……。

 幼い頃に父を亡くし、心にわだかまりを抱えた主人公と家族とのつながりを描いた本作には、キャラクターイラストは使われておらず、物語は実写による背景と文章で進んでいく。一見すると地味な作りだが、家族という身近な題材を扱うことで、読者の心に広く訴えかける魅力を備えた作品となっている。


【著作権者】P.o.l.c.
【対応OS】Windows 95/98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】-
【ファイルサイズ】3.87MB

□手紙:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!]
https://www.freem.ne.jp/win/game/834

終末の世界でめぐり合った、男女4人の悲しくもやさしい物語「終末によせて」

「終末によせて」
「終末によせて」
「終末によせて」
 「終末によせて」は「手紙」と同様、全画面に文章が表示されるより小説に近いタイプのノベルゲーム。選択肢はなく、30分程度で読むことができる。

 2カ月ほど前に世界の終わりが宣言され、終末を待つだけの世界。自暴自棄になった人々による暴動もほぼ静まり、最後の日まであと1週間となった“桜水道町”が物語の舞台。下宿先のアパートで日がな一日、本を読んで過ごす青年“藤田 稔(ふじた みのる)”。生まれ育った町で最後を迎えようと独り自宅に残り、旅に出た兄を待つ少女“穂積 祥子(ほづみ さちこ)”。弾き語りの旅から帰り、避難所となった母校を訪れた青年“穂積 隆宏(ほずみ たかひろ)”。避難所の音楽室で他人との関わりを避けるように、独りピアノを弾いて暮らす女性“遠藤 由紀(えんどう ゆき)”。偶然出会った男女4人の終末への7日間を描く。

 作中イラスト調のCGは一切なく、実写による背景と要所要所で流れる少し寂しげなピアノの調べに乗せて、終末のなか出会った男女4人の恋模様を淡々と綴った、もの悲しくもやさしい物語だ。


【著作権者】まつ ◆7JCTHumZLY 氏
【対応OS】(編集部にてWindows XPで動作確認)
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】-
【ファイルサイズ】8.92MB

□終末によせての詳細情報 : Vector ソフトを探す!
http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se488145.html

短い夏を謳歌する少女との出会いを描いたショートショート「夏、セミ、少女」

「夏、セミ、少女」
「夏、セミ、少女」
「夏、セミ、少女」
 「夏、セミ、少女」は1回3分ほどで読めるショートストーリー作品だ。選択肢はないが、1度だけ物語の展開に干渉できる仕掛けが用意されている。

 主人公は、夏の日差しが照りつける公園で、足元に転がるアブラゼミを見つける。ふと指を差し出すと、セミは指をはい登りそのまま森の方へと飛び去って行った。それを見送る主人公に、見知らぬ少女が声をかけてくる。『夏は暑い』、そんな当たり前の感覚も知らない不思議な少女に押し切られる形で、主人公は街を案内させられることになり……。

 本作は、ポイントを押さえて効果的に挿入されるオルゴール調のBGMとセミの声が印象的な、ショートショート系の作品だ。物語の結末をすべて見届けるためには、文章に込められた意味を読み取ってあることをする必要があり、読者を一歩踏み込んだ読書体験へと誘ってくれる。初めは戸惑うかもしれないが、プレイするごとにヒントが表示されるので、気楽にチャレンジしてみよう。


【著作権者】KaTana 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.01(05/06/19)
【ファイルサイズ】7.09MB

□言ノ葉迷宮
http://kotonoha-meikyu.net/

“青空文庫”公開のジュブナイルミステリーをノベルゲーム化「贋紙幣事件」

「贋紙幣事件」
「贋紙幣事件」
「贋紙幣事件」
 「贋紙幣事件」(にせさつじけん)は著作権が切れて“青空文庫”で公開されている、ミステリーの大家“甲賀 三郎”作の同名小説をノベルゲーム化したものだ。ゲーム中の選択肢はなく、プレイ時間は15分程度。

 日曜日、主人公の“風岡(かざおか)”少年は、中学の同級生の“森 春男”君と連れ立って、同じく同級生の“飛山(とびやま)”君の住む田舎に遊びにきていた。森君と飛山君はともに学年首席を争う優秀な生徒だ。しかし飛山君は、お父さんが贋紙幣をそれと知らずに使おうとして捕まり、誰かをかばって入手元を隠し拘留されているせいで、成績を落としていた。道の途中、2人は脚を引きずった犬に出会う。犬好きの森君は、犬の脚の爪の間に付いている蝨(だに)を取ってやるが、脚に赤黒いものがベットリとついていることに気付いて……。

 本作の原作は、昭和初期に書かれた中学生の少年を主人公にしたミステリーものだ。影絵風のシルエットで描かれた登場人物と終始控えめなBGMが、時代がかった文章とうまくマッチしており、独特な雰囲気をかもしだしている。古い作品ではあるが、時代背景が現代とは大きく異なっているぶん、かえって新鮮な感覚で楽しめる。


【著作権者】甲賀 三郎(原作)、KaTana 氏(ゲーム制作)
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.00(05/12/03)
【ファイルサイズ】6.05MB

□言ノ葉迷宮
http://kotonoha-meikyu.net/

(霧島 煌一)




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