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【第266回】
ミステリー系ノベルゲーム「鴉の断音符」48のエピソードで綴られる16通りの物語
(06/05/19)
インターネット上で公開されているゲームは、大手メーカーが制作・販売している大作から、個人が趣味で制作して無料で公開しているものまで、ジャンルや価格を問わず、さまざまなものが存在している。しかし、公開されているゲームの数が多すぎて、どんな作品が存在し、どの作品が本当に面白いのかを判断できずに困っている方も多いだろう。そこで『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、殺人現場を偶然目撃した鴉(からす)の視点で、事件の真相や街の人々の様子をマルチエンディングで描くノベルゲーム「鴉の断音符」を紹介しよう。
主人公の“ヤタ”は、過去にとある研究所から脱走した、人間並みの知能をもつはぐれ鴉。ある朝彼が日課として訪れた山のなかで、黒髪の少女が中年男性をナイフで滅多刺しにして殺害する現場を目撃したところから物語は始まる。人という生き物に興味をもっていたヤタは、偶然目撃した殺人事件に好奇心を強く刺激される。『人は、どうして何のためらいもなく仲間を殺せるのか』。プレイヤーはヤタの移動先を選択することで彼を導き、人間たちの観察を通じて事件の真相へと迫っていく。
何者にもとらわれない自由な存在であるヤタは、必ずしも事件の真相ばかりを追うわけではない。容疑者である美耶子や病床の少女早苗との交流や、開発の名の下に山を焼き払う人間の観察などを通して、好奇心のおもむくまま人の心の美しさや醜さに触れていくことでヤタの心は変化し、物語はさまざまな結末を向かえることになる。プレイヤーの選択によっては、鴉たちを率いて人間に反旗を翻すショッキングな展開も……。
ゲームの進め方に迷った場合は、無理に特定のエンディングを目指さずに、何日目にどこで何が起こるのか、ちょっとしたメモを作成してみよう。ひととおりのエピソードに目をとおしたら、目的のエンディングに至るにはどのエピソードをつなぎ合わせるべきかを考えながら、自分で物語を組み立てるつもりでプレイするといいだろう。 本作の魅力はif(もしも)の物語としての結末の幅広さだが、豊富なエピソードを通して登場人物たちの異なる側面を見せることで、人間がもつ多面性を巧みに表現している点も見逃せないポイントだ。また、シリアスなストーリー展開にマッチした、渋めのキャラクターイラストも目を引く。とくに物語冒頭、殺人を犯した女性が周囲をうかがうギョロついた目つきは、キャラクターの心境を上手く表現しておりとても印象的。本作はサスペンスものということでやや後味の悪い結末も少なくないが、自由度の高さのわりに手軽に楽しめるので、難しい推理は苦手という人にもぜひ試してほしい作品だ。
【著作権者】飼育係 氏
□飼育小屋製作委員会 (霧島 煌一)
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