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“Opera Software”CEO、Jon S. von Tetzchner氏インタビュー『携帯電話やTVゲーム機でも同じ“ウィジェット”を動作させるのが目標です』
(06/07/06)
ノルウェーのOpera Software ASAは6月20日、同社製Webブラウザーのメジャーバージョンアップ版となる「Opera」v9.0を公開した。新バージョンではデスクトップ上に配置できるミニツール“ウィジェット”の実行やP2Pファイル交換システム“BitTorrent”に対応するなど、多くの新機能を備えている。今回、来日した同社のCEO、Jon Stephenson von Tetzchner氏にインタビューする機会を得たため、新バージョンの特長や競合ソフトに対する考えなどを聞いた。
「Opera」v9ではウィジェットに対応しましたが、ウィジェットの実行環境はMicrosoftやGoogle、Yahoo!なども提供しています。「Opera」のウィジェット実行機能はどういった点が特長だとお考えですか。
BitTorrent対応の目的を教えてください。「Opera」を使ってくださっているユーザーさんへ、簡単に素早く、効率的にファイルをダウンロードする手段を提供するのが目的です。とくにBitTorrentは、HTTPやFTPと違い、たくさんのユーザーが同時に同じファイルをダウンロードするときに、とても効率的にネットワークの帯域を使うことができる技術です。日本のようにブロードバンド接続が低料金で提供されている国もありますが、まだまだモデムを使ってインターネットにアクセスしている人もたくさんいます。そういった方々でも、これからどんどん大容量化していくさまざまなコンテンツを利用できるようにしたい、という狙いがあります。
「Opera」はv8シリーズでも、BitTorrentに対応したTechnology Preview版が公開されたことがありましたが、v8シリーズでは正式対応されませんでした。v9で対応することができたのは、どういった理由によるものでしょうか。□窓の杜 - 【NEWS】P2Pファイル交換システム“BitTorrent”に対応の「Opera」プレビュー版が公開http://www.forest.impress.co.jp/article/2005/07/07/opera802tp1.html □窓の杜 - 【NEWS】「Opera」v8.02が公開、P2Pファイル交換システム“BitTorrent”は搭載されず http://www.forest.impress.co.jp/article/2005/07/28/opera802.html まず、Technology Preview版というのは、新しい機能を試しに追加してみて、ユーザーさんからの評価をいただき、正式搭載するかどうか決めるために公開しています。ですから、取捨選択の結果搭載されない機能もあります。 また、v8のBitTorrent対応プレビュー版を公開した当時は、BitTorrent自体に違法コピーされたコンテンツをやり取りするための技術というイメージがありました。そのため、「Opera」での対応に対してもネガティブな反応があるのではないかと懸念し、対応を見送ったのも事実です。しかし、その後もBitTorrentを取り巻く状況に注目していましたが、現在はハリウッドも含め、合法的なソフトウェアやコンテンツの配布にBitTorrentを使うという流れが出てきています。そのため、我々としてもv9での正式サポートに踏み切ることができました。
ウィジェットやBitTorrent以外にアピールしたい、「Opera」v9の新機能は?検索バーへ検索エンジンを簡単に登録できる機能の追加や、メール機能の改善など、非常に多くの改良を施しています。たとえばメール機能では、ヘッダー表示の送信者名をクリックして、その人から来たメールだけを素早く絞り込み表示できるようになりました。1つ1つの変更点は小さなものかもしれませんが、使いやすさや生産性を飛躍的に向上できる改善であると思っています。また、コアのエンジン部分でも、SVG 1.1 Basic仕様をサポートしたり、Mozilla FoundationやApple Computerとも共同開発している、Webブラウザー上でより豊かなグラフィック表現を可能にする“canvas”要素に対応するといった改善を行っています。
今年2月に「Opera」v9.0 Technology Preview 2を公開後、開発者ブログ上で毎週最新のプレビュー版を公開する“Weekly build”という試みがなされていますが、この狙いは何でしょうか。□Desktop Team - by Desktop Team(“Weekly build”を公開している「Opera」開発者ブログ)http://my.opera.com/desktopteam/blog/ Opera Softwareは創設以来、ユーザーコミュニティとの関係を大事にしながら開発と会社運営を続けてきました。Weekly buildの提供も、ユーザーコミュニティからの、『もっと頻繁に新機能を試したい』という声に応えたものです。また同時に開発者からも、『もっと頻繁にユーザーからフィードバックをもらいたい』という要望が挙がっていたので、双方にとって利点があったと思います。すでに、v9.01に向けたWeekly buildの提供も始まっていますよ。
最近は「Firefox」がシェアを伸ばしていますが、これについてはどうお考えですか。
また「Firefox」は、「Opera」と同様にWeb標準技術に準拠するように開発されていますので、我々にしてみれば、ユーザーさんがIEを使われるよりは、「Firefox」を使ってくれたほうが、Webブラウザーのユーザーコミュニティ全体としてはよいことだと思っています。というのは、IE上でしか利用できないWebコンテンツがますます減り、「Opera」も含めたWeb標準対応のブラウザー上で利用できるWebコンテンツやWebアプリケーションが増える原動力になるからです。もちろん、ユーザーを獲得するための競争は今後も続けていきますが、「Firefox」が人気を得ていること自体は、「Opera」にとってもよいことだと思います。
IEがv7でタブやRSSなどに対応し、基本的なWeb閲覧機能では差別化が難しくなってくるのではないかと思いますが、これについてはどうお考えでしょうか。最近、『IE 7がついにタブに対応』といった記事などを目にしますが、そこで新しいIEが「Opera」や「Firefox」と比較されることにより、結果的にはIE以外にもさまざまなWebブラウザーがあることを、より多くの人に知ってもらえます。実際に「Opera」を使っていただければ、『とても使いやすい』と感じていただけると思いますから、「Opera」を知ってくれる人が増えるのはよいことです。これまで、「Opera」の機能をほかのWebブラウザーが取り入れることもありましたが、お互いに切磋琢磨しながら機能を向上させていくことは、歓迎すべきことだと思います。ほかのWebブラウザーが「Opera」と同様の機能を搭載するならば、「Opera」はさらに新しい機能の搭載やパフォーマンスの向上を図っていきます。
気が早いかもしれませんが、“次のOpera”の目玉は何でしょうか。ヒントを教えていただけますか?1つの大きなポイントは、Webブラウザーが、単にWebコンテンツを表示するだけでなく、より複雑で高度なアプリケーションを実行するプラットフォームになりつつあるということです。また、Webアプリケーションを実行する環境は、PCだけでなく、携帯電話や各種の組み込み向けWebブラウザーなどにも広がっていくでしょう。Opera Softwareでは、1つのWebアプリケーションをさまざまな機器で実行できる環境を提供することに、会社全体で取り組んで行きたいと考えています。“Opera 10”について具体的なコメントをするには、まだ早すぎますね(笑)。
「Opera」の開発は、何人くらいで行われているのでしょうか。現在Opera Softwareには300人以上の従業員がいますが、そのうち3分の2以上が、プログラミングやテストといった製品開発に直接関わる仕事をしています。携帯電話やゲーム機といったさまざまな機器向けの開発プロジェクトがあることを考えると、決して多い人数ではありませんが、世界中、約30カ国から集まってくれた優秀な人たちが、効率的にプロジェクトに関わってくれているため、開発を実現できています。
昨年4月、『「Opera」v8が4日間で100万ダウンロードを達成したら米国まで泳ぐ』という公約を実行したものの失敗した際、『故郷のアイスランドに寄れなくなったので、母が悲しむだろう』とおっしゃっていましたが、その後ご実家に帰られる機会はありましたか?はい、飛行機に乗って帰りました(笑)。
窓の杜の読者に向けてメッセージをお願いします。まずは、まだ「Opera」を試したことがない人へ「Opera」をアピールしていただけますか。
また、使ってみてもし分からないことがあったら、“Opera Community”という公式のコミュニティサイトがあり、そこでフレンドリーな人たちが質問に答えてくれていますので、そちらもぜひ訪れていただきたいと思います。
□日本語 - 日本語(“Opera Community”内の日本語コミュニティ)
最後に、「Opera」のユーザーへメッセージをお願いします。これからも「Opera」をどんどん改良していき、さまざまなプラットフォームに向けて高機能なWebブラウザーを提供していくことをお約束します。また、これまで同様に、ユーザーコミュニティからのフィードバックに応えていきたいと思いますので、改善点やアイデアがあったら、ぜひ教えてください。改善に向けて努力することをお約束します。
(中村 友次郎)
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