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【第273回】

青春恋愛ノベルゲーム「Begin with you!」

夢の実現をテーマにした等身大の恋愛物語

(06/07/21)
タイトル画面
   

 インターネット上で公開されているゲームは、大手メーカーが制作・販売している大作から、個人が趣味で制作して無料で公開しているものまで、ジャンルや価格を問わず、さまざまなものが存在している。しかし、公開されているゲームの数が多すぎて、どんな作品が存在し、どの作品が本当に面白いのかを判断できずに困っている方も多いだろう。そこで『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、大学受験に失敗し、夢と現実のギャップに悩む主人公の恋模様を描いた、ノベルゲーム「Begin with you! -The story of precious days」を紹介しよう。

作者自身の撮影による美しい風景写真が背景として使用され、物語を盛り上げる
作者自身の撮影による美しい風景写真が背景として使用され、物語を盛り上げる
 「Begin with you!」の主人公“高宮 圭介”は、高校時代ついに果たせなかった駅伝への出場を夢見て、かつての強豪校で自宅からも近い“中央文化大学”入学を目指す浪人生。妹の高校入学を機会に、狭く部屋数の足りない実家を出て、実家近くのアパートで一人暮らしをしている。彼は夢の実現のためとはいえ、嫌いな勉強を続けなくてはいけない毎日に夢と現実のギャップを感じ、くすぶる日々を過ごしていた。季節は秋、成績は低空飛行のまま、受験戦争もいよいよ後半を迎え……。

 本作は『夢』と『恋愛』をテーマにした、ノベルタイプのアドベンチャーゲームだ。文章を読み進めながら選択肢を選んでいくことで、ヒロインごとに用意された複数の物語へと分岐していく。画面は上下に大きく2分割され、上側には各シーンの舞台となる場所の風景写真が、下側には本文を表示するためのメッセージ枠がそれぞれ表示される。メッセージ枠の上部には[SAVE][LOAD][BACK][SKIP]という4つのボタンがあり、ゲームの中断と再開、直前に読んだ本文の履歴表示、既読文章の早送りといった操作が行える。またマウスの右クリックで呼び出せる環境設定画面から、文章の表示速度といった各種設定の変更が可能。


1日の終わりにはカレンダーの×印で、日数の経過が表示される。一気に1週間近く日付が進むことも   ゲーム画面を右クリックすると環境設定画面が開き、BGMの音量や文章の表示速度を変更できる
1日の終わりにはカレンダーの×印で、日数の経過が表示される。一気に1週間近く日付が進むことも   ゲーム画面を右クリックすると環境設定画面が開き、BGMの音量や文章の表示速度を変更できる

ヒロインの1人で幼なじみの“双葉 秋穂”は、気が弱く妹以上に世話かのかかる存在
ヒロインの1人で幼なじみの“双葉 秋穂”は、気が弱く妹以上に世話かのかかる存在
 登場するヒロインは、もの心つく前からの幼なじみで、ひと足先に中央文化大学に通う、大人しく気弱な妹分“双葉 秋穂”、主人公と秋穂共通の友人で、自由奔放かつマイペースな“椎名 恭子”など4人。またヒロインのほかにも、要領がよく世話好きな妹“高宮 比奈子”や、高校陸上部以来の親友“岡森 雄太”、商店街の八百屋の息子で、主人公を『兄ィ』と慕う小学生“荒川 亮平”といった魅力的なサブキャラクターたちが物語に彩りをそえる。本作では、ノベルゲームで定番のキャラクターイラストは一切登場しないが、作者自身の撮影による美しい風景写真と、キャラクターを強く印象づける文章のおかげで、活躍するキャラクターたちの姿を脳裏に思い浮かべることができるはずだ。


ヒロインの1人“椎名 恭子”。マイペースながら気さくで、気の置けない友人だ   商店街の八百屋の息子“荒川 亮平”など、ヒロイン以外にもさまざまなキャラクターが登場する
ヒロインの1人“椎名 恭子”。マイペースながら気さくで、気の置けない友人だ   商店街の八百屋の息子“荒川 亮平”など、ヒロイン以外にもさまざまなキャラクターが登場する

物語の結末に関係する重要な選択肢は数字つきで表示される。選択によっては登場しないヒロインも
物語の結末に関係する重要な選択肢は数字つきで表示される。選択によっては登場しないヒロインも
エンディングリストやシーン回想、サイドストーリーなど、クリア後のおまけも用意されている
エンディングリストやシーン回想、サイドストーリーなど、クリア後のおまけも用意されている
 ゲーム中の選択肢には、★マークがついたものと数字がついたものの2種類がある。★マークの選択肢は、場面展開や台詞のちょっとした変化を楽しむためのものなので、どれを選んでも構わないが、数字つきの選択肢は、物語の結末に関わる重要な選択肢なので、主人公の気持ちになって適切なものを選ぶ必要がある。ただし本作の場合、引っかけのような難しい選択肢や、一発でバッドエンドに行くような選択肢はないので、ノベルゲームに慣れていない人でも安心して遊ぶことができるだろう。またハッピーエンドにたどり着けなかった場合でも、最後に簡単な攻略ヒントが表示されるので参考にしよう。

 ゲームクリア後のおまけが充実しているのも本作のポイント。クリア済みヒロインの物語を月単位で読み返せる[シーン回想]に加え、物語のワンシーンをヒロインの側から描いた[サイドストーリー]などが用意されており、物語の感動を追体験できるのはうれしいところだ。

 本作は『夢』と『恋愛』という青春モノの王道をテーマとした作品だけに、読んでいて思わず赤面してしまうようなセリフが飛び出す場面もあるが、だからこそ、ある人には懐かしく、またある人は共感をもって楽める作品に仕上がっている。

 また本作に登場するキャラクターたちは、極端な性格づけや突飛な行動とは無縁な、実在してもおかしくないような人物ばかりだ。物語の展開も大事件とは無縁のちょっとした出来事が中心で、一見すると地味な作品にも思える。しかしそのぶん、普通の恋愛小説を読む感覚で楽しむことができるのは、本作の魅力の1つだろう。ノベルゲーム好きの人だけでなく、いわゆる“ギャルゲー”のノリはちょっと苦手という人にも、ぜひおすすめしたい作品だ。

【著作権者】あいはらまひろ 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.1(06/05/17)
【ファイルサイズ】10.8MB

□[ Fly me to the sky! ]
http://dreamlibrary.cside.com/game/

(霧島 煌一)




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