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【第289回】

知力で勝負する短編RPG「魔壊屋姉妹。」

コミカルタッチだが手ごわいぞ!

(07/01/12)
タイトル画面
   

 インターネット上で公開されているゲームは、大手メーカーが制作・販売している大作から、個人が趣味で制作して無料で公開しているものまで、ジャンルや価格を問わず、さまざまなものが存在している。しかし、公開されているゲームの数が多すぎて、どんな作品が存在し、どの作品が本当に面白いのかを判断できずに困っている方も多いだろう。そこで『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、戦闘の面白さにこだわった短編RPG「魔壊屋姉妹。」を紹介しよう。

実にシンプルなマップ。歩くと姉妹のグラフィックもテクテク歩く
実にシンプルなマップ。歩くと姉妹のグラフィックもテクテク歩く
イベントシーンでは式神も会話に参加。戦うだけじゃないからこそ愛着もわいてくる
イベントシーンでは式神も会話に参加。戦うだけじゃないからこそ愛着もわいてくる
 「魔壊屋姉妹。」は、魔物を倒す“魔壊屋”という稼業を営む天道宴馬(えんま)、沙魔(しゃま)姉妹が、六道町に大量に出現した魔物を退治しにいくという和風のRPGだ。妹の沙魔は符術と剣の使い手で、姉の宴馬は式神使い。この2人に宴馬の召喚した式神を加えた最大3人のパーティで戦うことになる。キャラクターは3~4頭身のコミカルタッチで、イベント時の会話が楽しい。

 操作はカーソルキーで移動、[Enter]キーで決定、[Esc]キーでキャンセルとメニュー表示となっている。フィールド画面は迷路を上から見下ろしたようなシンプルなつくりで、赤い点で示されたパーティを移動させて進んでいく仕組み。イベントやボス戦が発生するポイントはそれぞれ黄色の点や赤い2重丸で表示されるので、移動に迷ったり、考え込んだりすることはない。

 移動がシンプルな代わりに、戦闘は凝ったつくりとなっている。基本はコマンド選択型で、戦闘が開始されるとパーティメンバーごとに備わった“アクティブゲージ”が伸びていき、フルになったらコマンドを選択できる方式だ。コマンドはパーティーのメンバーごとに個別となっているほか、各種の行動に必要な“SP”というポイントの使われ方もメンバーごとに異なる。

 妹の沙魔は、攻撃力アップや防御力アップなどの特殊効果をもつ剣による攻撃とパーティ全員のHPを小回復する術に加え、装備した“符”に応じたさまざまな術を使用可能。ほとんどの術はSPを消費する。術には攻撃用の“火炎の爆符”、防御用の“水牢の鋼符”、回復用の“水晶結界”などがあり、これらとSPを消費しない剣攻撃を併用するという、一般的なRPGに近い戦い方がメインとなる。

デコピンはたった1ダメージしか与えられないチープな技だ
デコピンはたった1ダメージしか与えられないチープな技だ
式神“鎌鼬”の全体攻撃。鎌鼬は攻撃と回復どちらも得意だがHPが低い
式神“鎌鼬”の全体攻撃。鎌鼬は攻撃と回復どちらも得意だがHPが低い
 一方、姉の宴馬はすべてのコマンドが特殊で、通常攻撃や術による攻撃では、それぞれ3~4種類の攻撃手段がループしていく。通常攻撃は1体を攻撃する“ぶん殴る”、毎回1ダメージしか与えられない“デコピン”、敵全体を攻撃する“旋風脚”の3種類で、攻撃を実行するごとに次の技へ切り替わっていく。同様に術も1体を攻撃する“業炎布”、敵全体を攻撃する“業炎爆熱布”、自分がダメージを受ける“やけど”、次のターンの攻撃力を大幅アップさせる“業炎闘舞”の順でループ。必ず弱い“デコピン”と自分にダメージを与える“やけど”を使わねばならないので、これらをどれだけ余力のある場面で使うかが、戦闘において重要となる。また、宴馬は通常攻撃でもSPを消費するので、なおのこと使いこなすのが難しい。

 さらに宴馬は、SPを消費せずに“鎌鼬(かまいたち)“野襖(のぶすま)”“朧武者(おぼろむしゃ)”という3つの式神を順番に召喚できる。式神は召喚すると3人目のパーティメンバーとなり、姉妹と同じように選択したコマンドに応じて、SPを消費して戦う。式神の特徴は、HPがゼロになると撤退という扱いになり消えてしまうが、宴馬が再び召喚すればすぐに次の式神が現れること。また、HPがゼロになる前でも“霊力返還”コマンドにより主人である宴馬のHPを回復しつつ撤退できるほか、次の式神とチェンジすることも可能。

ボスはHPが20%以下になると怒りでパワーアップ! ここからが正念場だ
ボスはHPが20%以下になると怒りでパワーアップ! ここからが正念場だ
戦闘の要は野襖のこの技。SP回復には不可欠なのだ
戦闘の要は野襖のこの技。SP回復には不可欠なのだ
 また戦闘における特殊なルールとして、姉妹はHPがゼロになると気絶するが、そのまま2ターンが経過するとHP1の状態で復活できる。さらに宴馬の場合は、式神に“霊力返還”を使わせるとHPを回復して復活することも可能。式神を含む全員が気絶するまでゲームオーバーにならないので、この2つのルールを活用し、しぶとく戦おう。ただし、倒した敵も同様に、全滅させない限り2ターン経過後にHP1で復活する。とくにボス戦は要注意で、HPが残り20%以下になったボスは怒りでパワーアップ状態になり、復活時もパワーアップしたままなので油断ならない。

 以上のような一風変わったルールの戦闘において基本となるのは、各種の行動に必要なSPをうまく回復しながら戦うことだ。戦闘中は回復アイテムが使えず、SPを回復する手段は主に式神“野襖”の技、“さよなら野襖たん”に依存する。この技は“野襖”を撤退させるのと引き換えに姉妹のSPを全回復するもの。式神は“鎌鼬”→“野襖”→“朧武者”の順で召喚されるので、“朧武者”“鎌鼬”と共にSPを消費しながら戦い、SPが減少したら“野襖”を召喚してSP回復、というサイクルを組んで戦う形が理想だ。これに宴馬の“デコピン”、“やけど”という無駄な攻撃を使うタイミング、さらには沙魔の剣と符術の組み合わせ方により、多彩な戦術バリエーションが楽しめる。

 筆者の場合は沙魔をほぼ回復専門にし、主に宴馬と“朧武者”で攻撃。沙魔のSPが半減した辺りで“朧武者”から“鎌鼬”にチェンジして“鎌鼬”の全体回復を利用、HPに余裕があるうちに“野襖”に変えてSP回復、というサイクルを組んでみた。比較的安定するものの攻撃力が不足気味で、運悪く式神がやられてしまうと手数不足でピンチになるケースが多々あった。また、こちらの防御力アップなどを打ち消す敵が意外と多かったのも苦戦の原因だ。レベルをしっかり上げれば楽に進めるが、戦闘の難易度はやや高いと言っていいだろう。しかし敵はただ強いのではなく、プレイヤーの工夫で封じることもできる強さなので、ついレベル上げをせずに挑みたくなる。各ボスごとに設定されている目標レベル以下でクリアするとレアなアイテムがもらえるので、腕に自信がある人は狙ってみるといい。

 このように本作は、歯ごたえのある戦闘システムが一番の見どころだが、キャラクターも大きな魅力だ。楽しいことが大好きで飽きっぽい姉の宴馬に、ツッコミ役である妹の沙魔、マジメな“朧武者”、冷静だがどことなくブラックな“鎌鼬”、体を張って姉妹の盾役になるお茶目な“野襖”。敵側も喧嘩っぱやい“ポチ子”、テンションが低い“ぬっぺほふ”などキャラ立ち抜群の面々で、姉妹との掛け合いが楽しい。表情もよく変化し、イベントシーンが楽しみで次また次とプレイし続けてしまう。それでいて、半日あればクリアできてしまうほどコンパクトにまとまっているのが見事だ。2007年のゲーム初めにひとつ、スパッと切れ味の鋭い名作短編を遊んでみてはいかがだろうか?

【著作権者】higa 氏
【対応OS】Windows XP
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.01(06/12/08)
【ファイルサイズ】22.0MB

□ヒガガガ本舗。
http://f4.aaa.livedoor.jp/~higagaga/

(藤井 宏幸)




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