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【第320回】

手応え十分、本格派の長編RPG「魔王物語物語」

“位置取り”が重要な戦闘や“なんでも装備”など、独特のシステムが光る

(07/11/09)
タイトル画面
   

 インターネット上で公開されているゲームは、大手メーカーが制作・販売している大作から、個人が趣味で制作して無料で公開しているものまで、ジャンルや価格を問わず、さまざまなものが存在している。しかし、公開されているゲームの数が多すぎて、どんな作品が存在し、どの作品が本当に面白いのかを判断できずに困っている方も多いだろう。そこで『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、じっくりとやり込める本格派RPG「魔王物語物語」を紹介しよう。

プレイヤー自身が考え、行動することで進めていく長編RPG

プレイ開始直後、話しかけられる人物はこの女性ただ1人だけ
プレイ開始直後、話しかけられる人物はこの女性ただ1人だけ
“ネグラ”にいる人物の部屋にある書物には、彼らの物語が綴られている
“ネグラ”にいる人物の部屋にある書物には、彼らの物語が綴られている
 「魔王物語物語」は、フィールドを探索しながら進めていくタイプの長編RPG。『魔王物語』という未完のお話の結末を探すという目的が最初に提示されるが、その後“○○の村へ行け”“××の洞窟で△△という怪物を倒してこい”といった行動の指針となる情報を与えられることは一切ない。そのためプレイヤー自身が考え、行動することで物語の結末を目指すことになる。具体的には、主人公“ヒマリ”の戦闘能力を上げて探索できる場所を広げていくことと、アイテムの入手や登場人物との会話で行動範囲を広げていくことで物語が進行していく。

 ゲームは、“ネグラ”と呼ばれる小さな洞窟から始まる。ネグラにはいくつかの部屋があるが、最初はセーブポイントがある自分の部屋と、回復用の泉が使えるのみ。外に出て敵と戦ったり、アイテムを入手したり、人物と会話したりしていくうちに、部屋の扉が徐々に開放される仕組みだ。


戦闘はエンカウント時の“位置取り”がポイント

モンスターのシルエットに接近すると戦闘に突入する
モンスターのシルエットに接近すると戦闘に突入する
戦闘終了後、減った気力と体力は黄色いゲージの分だけ自動回復する
戦闘終了後、減った気力と体力は黄色いゲージの分だけ自動回復する
戦闘では、近くに固まっている複数の敵を同時攻撃できる
戦闘では、近くに固まっている複数の敵を同時攻撃できる
 戦闘はコマンド選択式のターン制。フィールド上を動いているモンスターのシルエットと一定距離内に接近すると、エンカウントとなり戦闘に突入する。このとき、エンカウントが確定したあとも数秒だけ移動可能で、その間に近くにいるモンスターと接近すると、そのモンスターも戦闘に参加してくる。

 戦闘では攻撃や防御、アイテムといった行動のほかさまざまな効果をもつ“スキル”も利用できるが、戦闘から逃げることはできない。また体力や、スキルを使うために消費する“気力”を回復するアイテムは回復の泉で入手できるが、持てる数に限りがある。こういった条件により、よほど弱い敵との戦闘でない限り気が抜けない。ただし、戦闘の終了後には“体力”と“気力”を1割ほど自動回復させられるので、手堅く戦っていけば回復アイテムの消費を抑えることが可能。回復のためにあえて弱い敵1体と戦うのも、重要な戦略だ。

 また、複数のモンスターと戦う場合は、戦闘前にモンスターと接近するときの“位置取り”が重要な意味をもつ。戦闘中の画面には、自分を中心としてモンスターがエンカウント時の相対位置で表示される。そして武器には攻撃範囲が設定されていて、ある程度近くにまとまってモンスターがいる場合は、1回の攻撃で複数のモンスターを同時に攻撃できるのだ。

 そのため、複数のモンスターとの戦闘になりそうな場合は、囲まれる形ではなく同じ方向に固めてエンカウントするように敵へ接近すると有利になる。また、経験値を稼ぎたい場合は、1回の戦闘に弱いモンスターを数多く巻き込むと効率がいい。1回の戦闘で倒したモンスターの数が多いと、経験値にボーナスが加算されるからだ。このように、戦闘はエンカウントがキーポイントとなっており、パズル性とアクション性がほどよいさじ加減で効いている。


どんなアイテムも装備できるなどやり込み要素も充実

装備は武器と防具以外に、何でも装備できる枠が3つある。プレイヤーの個性が出るところだ
装備は武器と防具以外に、何でも装備できる枠が3つある。プレイヤーの個性が出るところだ
いくつかの武器と防具は“ネグラ”で販売されている。意外と高性能だ
いくつかの武器と防具は“ネグラ”で販売されている。意外と高性能だ
 本作では、アイテムの装備についてもユニークなシステムが用意されている。装備は武器と防具のほかに3つの“なんでも”枠があり、アイテムであれば何でも装備可能だ。武器や防具を追加で装備してもいいし、回復薬や“キバ”“さるの尻尾”など敵が落とすアイテムでもいい。それらはすべて何らかのステータスアップ効果があり、なかには特定のスキルが使用可能になるものや、“毒耐性”など特殊効果が付加されるものもある。

 また、アイテムには3段階の熟練度が設定されていて、使い続けると効果がアップする。状況によって攻撃力重視、防御力重視などステータスを変えつつ戦えるよう、いろいろなアイテムの熟練度を上げておこう。ちなみにモンスターを倒してもお金はほとんど手に入らないので、落としたアイテムをネグラに持ち帰り、換金することになる。お金の主な使い道は武器や防具の購入と、スキルの修得。序盤は防具を中心に購入していくと、生存率が高くなるのでおすすめだ。

 趣向の凝らされた戦闘や装備システムに並ぶ本作の大きな特徴は、与えられる情報が断片的で、プレイヤーは常に自発的な行動を求められるということ。次に何をすればいいかは、誰も教えてくれない。行ける場所をすみずみまで周り、倒せない敵が居れば、倒せるまで強くなってから再チャレンジする。そのための強さをどう手に入れるかは自由で、レベルを上げてもいいし、装備を充実させてもいい。そうやって少しずつ結末へと近づいていくのが醍醐味となっている。

 与えられたイベントをこなすことでストーリーを追っていくタイプのRPGと違い、自分の知恵と判断で物語を作り上げていくスタイルのRPGは、今では貴重な存在だ。RPGは手強いぐらいがちょうどいいと思っている人にはとくにおすすめしたい。『難しいのはちょっと』という人も、まずはユニークなシステムの数々を体験してみてほしい。


【著作権者】てつ 氏
【対応OS】Windows 98/Me/2000/XP/Vista
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】1.10(07/11/03)
【ファイルサイズ】本体 101MB、修正パッチ 430KB

□カタテマ
http://members.jcom.home.ne.jp/wtetsu/

(藤井 宏幸)




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