|
「Firefox 3」が公開、その内容に迫る『Mozilla史上最高のアップデート』の言葉に偽りなし
(08/06/18)
Mozillaはこれまで、セキュリティアップデートを除き、1年に1回のメジャーバージョンアップを目安に「Firefox」を開発してきた。2004年11月にv1.0正式版を公開し、翌年の2005年11月にはv1.5が、続く2006年10月にはv2.0を公開している。この流れで言えば、v3は2007年の秋に公開……となるはずだったが、結果的にはv2.0から1年半以上が経過してようやくの公開となった。
こうして振り返ってみると、過去のメジャーバージョンアップの内容はそれほど大きいものではなかった。とくにタブ周りの機能強化は、最初から実装されていてもおかしくないレベルのものばかりだ。もちろん、細かな機能強化や仕様変更のほかにもアプリケーション全体の安定性やセキュリティ対策の向上といった改良も施されていたが、やはりもう少し大きな目玉がほしかったのも事実だ。
魅力的な新機能の追加といった内容ではないが、長年の「Firefox」ユーザーにとっては今回の変更内容の中で一番うれしい改良と言っても過言ではない。
Geckoエンジンの更新やメモリ使用量の改善のほか、もちろんいくつかの新機能も追加されている。なかでも代表的なものが、新しいシステムで管理されるようになったブックマーク、過去に見たWebページを簡単に探し出せる“スマートロケーションバー”、文字サイズだけでなくページ全体をズームイン・ズームアウトできる“フルページズーム”だ。ここでは気になる新機能を一つ一つ紹介していく。
まず、もっとも大きく進化したのがブックマーク機能だ。v3のブックマークは従来の管理方法と異なり、“Places”と呼ばれるデータベースで管理されている。このシステムを利用することで、ブックマークや履歴をさまざまな条件で抽出できるようになる。たとえば、ブックマークツールバーの左端には“よく見るページ”というプルダウンメニューが追加されており、ここにはアクセス回数の多いページが自動的にリストアップされる仕組み。
さらに新しいブックマークでは、1つのブックマークに対して複数のタグを付加できるようになった。たとえば、窓の杜のブックマークには“オンラインソフト”“ダウンロード”“ニュース”などのキーワードをタグとして登録しておけば、タイトルだけではわかりづらいブックマークも容易に検索することが可能になる。 ブックマーク管理機能では、タグを付加したブックマークをタグごとに一覧できるほか、Webページの閲覧履歴も統合されている。これにより、ブックマークの検索機能と併せて利用すれば過去に見たWebページを簡単に探しやすくなった。またブックマークは日付ごとに自動バックアップされるようになり、管理画面のメニューから簡単に復元できる。
続いて注目の新機能“スマートロケーションバー”について解説していこう。スマートロケーションバーとは、一般的なWebブラウザーで言うところの“アドレスバー”のことを指しており、v3で大きく機能が強化された結果このように呼ばれている。
これは実際に使ってみると想像以上に便利。ブックマークが増えていくと、いくらフォルダ分けしていてもサイドバーなどから探し出すのに苦労することが多い。またブックマークしているのかどうかすら記憶が曖昧なこともあるだろう。そんなときは、うろうろと探す前にロケーションバーへ直接キーワードを入力してしまったほうが結果的に早く目的のWebページを探し出せるというわけだ。 また、このロケーションバーでは、日本語などのマルチバイトを含むURLがデコードした状態で表示されるようになった。たとえば、Wikipedia内にある窓の杜の記事を従来のバージョンで開くと、“http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AA%93%E3%81%AE%E6%9D%9C”というように表示されていたが、v3では“http://ja.wikipedia.org/wiki/窓の杜”と表示される。 そのほか、Webページの拡大・縮小時に文字だけでなく画像などすべての要素をまとめて拡大・縮小できる“フルページズーム”機能も搭載。設定により従来のバージョンのように文字サイズのみを拡大・縮小することも可能だ。
実用性が微妙なこの機能だが、新たなブックマーク機能を活かす方法として利用できそうだ。たとえば、ブックマーク登録時にWebページ中の選択文字列をタグとして登録する、そんな拡張機能が登場することを期待したい。
セキュリティ面では、まずフィッシング詐欺対策機能が強化された。これまではフィッシングの警告が表示されても、警告を無視してWebサイトを閲覧することができたが、v3では当該サイトのページを一切閲覧できなくなるように仕様が変更されている。これにより、PCやインターネットに詳しくないユーザーが、訳がわからないままに警告を無視し、問題のあるサイトを閲覧して被害に遭うといった危険性を低減することが可能。 またフィッシング詐欺対策に加え、新たにウイルスやスパイウェアといった“マルウェア”を配布しているサイトを検知する機能も追加された。フィッシング詐欺対策と同様に、悪質なWebサイトのブラックリストが登録されたデータベースを頻繁に更新することで、該当するWebページを読み込む前に警告してくれる仕組みだ。
既存機能の強化や不具合修正により、「Firefox」ユーザーにとって長年の不満だった部分も各種修正されている。
拡張機能のインストール手順が簡略化されたのもうれしい改良だ。従来では、XPIファイルのリンクをクリックするとダウンロードの許可を求めるダイアログが表示され、リンク元のWebサイトをホワイトリストへ登録、再度XPIファイルのリンクをクリックするといった手順が必要だった。しかし今回よりこのホワイトリスト方式が廃止され、より少ないクリック数でインストールできるように改善された。その代わり、配布側にはセキュリティの高い配布方法が求められるようになったため、ユーザー側は安心して導入できる。
さらに、日本語環境などIMEを利用するユーザーにとって待ちに待った更新点が、スペースキーでWebページをスクロールする際の問題改善だ。従来のバージョンでは、スペースキーでWebページをスクロールするには、IMEをOFFにしなければならなかった。そのため、検索バーや入力フォームで日本語入力し終わったらすぐにIMEをOFFにするクセがついてしまったという人や、スペースキーを利用したスクロール操作そのものをあきらめてしまっていた人も多いだろう。v3になってようやくこの問題が改善され、IMEの状態にかかわらずスペースキーでスクロールさせることが可能になった。
またスペースキーによるスクロールの件と同様に、こちらも長らくユーザーを悩ませていたのがWebページ中の長いURLを折り返せないという問題だ。Webページ内に記述された、たった1つの長いURLのおかげでページレイアウトが大きく崩れてしまうため、げんなりしていた人も多いのではないだろうか。有志の手により、URLへ強制的に改行を入れるという拡張機能まで登場したほどのこの問題も、ようやくv3で解決された。
多くの機能追加、仕様変更が施されたv3だが、残念ながら印刷機能に関しては手を加えられていないようだ。Webページの一部分が途切れて印刷されてしまう、印刷プレビューを実行するのとしないのとで印刷結果が変わってしまうといった問題は残念ながらv3でも健在。この辺りは今後のバージョンアップに期待しよう。
絶対に自分1人でしか使用しないパソコンであればまだしも、第3者に使わせる可能性がある場合や、会社で利用している場合にはできるだけマスターパスワードを設定しておこう。
“Webブラウザー戦争”と言えば、10年ほど前の「Internet Explorer」(以下、IE)vs「Netscape」の市場シェア争いが有名だ。ここ最近の各Webブラウザーの相次ぐバージョンアップによって再びWebブラウザー戦争が勃発するだろうか。 2年前にはIE7がようやくタブ切り替え型Webブラウザーの仲間入りを果たし、今年3月にはMac OS標準のWebブラウザーとして知られる「Safari」がWindowsに初めて正式対応した。またつい先日には老舗のWebブラウザー「Opera」もバージョンアップし、さまざまな新機能を追加している。 IEはWindows標準搭載というアドバンテージもあり、今現在でも大きなシェアを占めている。「Safari」は、その驚異的なレンダリングスピードに驚かされ、一気に話題の中心となった。老舗の「Opera」も健在。速度はもとより、標準状態での多機能さで言えば群を抜いている。 しかし、あくまで筆者個人の見解だが、今回の「Firefox」v3が登場したことにより、Webブラウザー戦争は再燃しない、あるいは「Firefox」の圧勝であっけなく終了といったところではないだろうか。今回のメジャーバージョンアップはそれほどの衝撃を受けた。 タブ切り替え型Webブラウザーとしては、新参者のIEには負けるわけもない。レンダリングスピードは、今回のバージョンアップにより「Safari」に勝るとも劣らないものとなった。標準で備える各種機能については「Opera」には及ばないものの、「Firefox」には有志の手により世界中で開発される“拡張機能”という存在がある。 とはいうものの、「Firefox」が一人勝ちするとは思っていないし、同時にそうならないことも願っている。このように各Webブラウザーがしのぎを削って、ユーザーがよい意味で選択を迷うという結果になってくれれば幸いだ。
改めて言うことでもないが「Firefox」の魅力は、やはり自由に拡張機能をインストールして自分好みのWebブラウザーにカスタマイズできることだろう。有名どころの拡張機能は「Firefox」v3のベータ版やRC版で動作検証しながら順調にバージョンアップしている。また、v3の新機能を活かした拡張機能もちらほらと登場してきている。 窓の杜では後日、「Firefox」v3に対応する拡張機能の特集を掲載する予定なので、こちらもご期待いただきたい。
□窓の杜 - 【特集】「Firefox 3」対応拡張機能カタログ 第1回
(久保 望)
|
|
|
トップページへ 特集INDEX へ |