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【第366回】
ゲームブック風ダンジョンRPG「Ruina 廃都の物語」魅力あふれる文章と豊富な選択肢、自由度の高いシステムが魅力
(09/02/13)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、豊富な選択肢で物語が進んでいく、ゲームブック風ダンジョンRPG「Ruina 廃都の物語」を紹介しよう。
往年のゲームブックの雰囲気を楽しめる本格ファンタジーRPG
ゲームブックとは、小説形式で描かれた物語を、各シーンに割り当てられた通し番号を手がかりに読み進めていくスタイルの書籍。1つの場面の最後には、たとえば『別れ道に出た。あなたは右の道を行ってもいいし(一二八へ進む)、左の道を行ってもいい(二五六へ進む)。』といった選択肢が書かれており、読者はキャラクターの行動を選択できる。日本では当時まだ珍しかったRPGを書籍の形で表現したもので、読者が小説の主人公になって物語を楽しめるという触れ込みで人気を博した。 本作は、ゲームブックのような小説に準ずる細やかな情景描写と、行動の自由度の高さが最大の特徴。たとえばモンスターに遭遇した際に、攻撃する以外にもこっそり通りすぎたり、逆に奇襲をかける、あるいは話しかけてみるといった選択肢が表示されるという具合だ。 また物語の随所に、謎掛けや番号入力、罠の回避といった頭をひねる場面が用意され、ちょっとした達成感を味わうことができるのも見逃せないポイントと言えるだろう。
町はずれの森で見つけた洞窟から壮大な物語が始まる本作の物語は、主人公が、町はずれの森で見つけた洞窟へ誘われるように足を踏み入れるところから始まる。洞窟の中で魔物に遭遇した主人公は、いったん町に戻り、悪友の“パリス”や幼なじみの雑貨屋の娘“ネル”、昔なじみで隻腕の老剣士“ラバン”たちと洞窟の探索に乗り出すことに。そんなある夜、洞窟の中からあふれ出した魔物が町を襲撃する事件が起こり、これがやがては周辺諸国をも巻き込む大事件へと発展していく。主人公には好きな名前をつけられるほか、“賢者の弟子”“騎士の嫡子”“罪人の遺児”“神殿に拾われた孤児”という4つの生い立ちと性別を選択でき、これによって能力や各種スキルが決定される。どの生い立ちでも物語の大筋は変わらないが、選択によっては町の領主が主人公の父親になったりと、境遇や細かなストーリー展開が異なってくる。
探索の基本はマップ移動、戦闘はコマンド選択型
マップ上には道が崩れていたり、高低差や川などがあって通行できない場所もあるが、このような場所の上にカーソルを合わせた状態でアイテムのツルハシやロープを使用することで、通行可能になるといった仕掛けも用意されている。 マップ上の移動可能ポイントは、一度表示されてしまえば現在地から離れていても選択可能となるため、探索のたびに同じ道筋を再度たどる必要がなく、探索の中断・再開が気軽に行える。RPGにありがちな作業プレイに陥ることなく、快適にプレイできるのがうれしい。また戦闘は、攻撃や防御、魔法といったコマンドを選択するお馴染みの方式が採用されている。
さまざまな探索スキルを活用して障害をくぐり抜けろ
各キャラクターは、魔法や剣技などの直接戦闘に関係するもの以外にも、さまざまなスキルをもっている。たとえば、鍵つきの扉や宝箱を安全に開けるには“盗賊の技”が、障害物をどけたり鍵を破壊するには“腕力”が役立つといった具合だ。このほかにも、古代語を解読できる“古代知識”、サバイバルに役立つ“生存術”など、さまざまな場面で異なるスキルが要求される。このため、ときにはメンバーの入れ換えが必要で、パーティ編成は1日1回町の酒場で行える。
ゲームを有利に進めるには休息のタイミングがポイントに町にある主人公の自宅で休息すると、パーティ全員のHPとMPが回復するとともに、日付が1日進みパーティの再編成が可能になる。また、町の中では自由にセーブを行えるが、ダンジョン内ではセーブのためにゲーム序盤で手に入るアイテムが必要となり、これは1日1回しか使うことができない。キャラクターの成長には2種類の方法がある。1つ目は経験点によるレベルアップだ。経験点は、戦闘以外に各種イベントをクリアすることでも得られるため、会話や忍び足などを駆使して戦闘を回避した場合でもしっかり経験点が入る。また、パーティを組んでいないメンバーも各自勝手に成長していくので、レベル上げのためにいちいちメンバーをローテーションする必要はない。
SPは、CP間を所定の日数以内で通過した場合はボーナスがつくほか、探索を開始してから町に戻るまでの間に得た経験点が一定値を超えた場合にも獲得できる。このため、できるだけ町に戻らずに冒険を続けることで、より有利にゲームを進めることが可能。とはいえ、これらの要素を活用しなくてもキャラクターのレベルを地道に上げれば力押しが利くので、最速クリアを目指すのも、じっくりプレイするのもプレイヤーの好みや技量次第だ。
自由度の高さに加え、壮大なストーリーなど読み物としての魅力も十分
またビジュアルの面でも、派手さこそないものの、敵モンスターのイラストはコンピューターRPGの古典的名作を思わせる雰囲気のあるものになっており、往年のゲームブックを彷彿とさせる文体にマッチしていると言えるだろう。 このように一見ストイックな作りながら、一方で女性キャラクターのイラストは作品の雰囲気を崩さない範囲で可愛らしく描かれているほか、“メイド忍者”や“ツンデレ”といった“いかにも”な設定のキャラクターが登場したり、物語が進むにつれて話のスケールが大きくなっていくストーリー重視の展開など、今どきの国産RPGとしてのテイストもしっかりと盛り込まれている。 ゲームブックファンなら思わずニヤリとしてしまうような小ネタが用意されていたりと当時を知る人には懐かしく、知らない人は新鮮に楽しめる、万人に広くお勧めできる本格派RPGに仕上がっている。RPGやファンタジー作品が好きなら、一度はプレイしてほしい作品だ。
□ダンボールの神様 (霧島 煌一)
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