知られざるNASアプリの世界

 第5回

「テレビ録画の容量不足」をNASで解決、nasneとNASで録画し放題!

PCやスマホのアプリで「どこでも視聴」

テレビ録画を「NAS」でがっつり容量拡張!

ASUSTORのNASアプリは専用の「AppCentral」からインストールする。用意されているアプリは200近く
ASUSTORはASUSグループのNASメーカー。写真は2ベイの個人向けミドルレンジモデル「AS3102T

 ASUSTOR NASを例に「NASアプリの最新事情」をお届けする当連載、今回のテーマは「テレビ録画機器との連携」です。

 ハードディスクレコーダーなどを使ってテレビ放送を録画していると、ディスクがあっという間に一杯になってしまいます。USBハードディスクなどで容量を増やせる機種もありますが、これら増設したドライブもすぐに満タンになってしまい、取っ替え引っ替えしながらやりくりしている人も多いはず。内蔵ドライブの容量が少なく、その不便さに必死に耐えているという人も、少なくないのではないでしょうか。

 しかしASUSTOR NASに、今回紹介するアプリを組み合わせれば、ハードディスクレコーダーなどに録画したテレビ番組をNASに移動させ、容量を空けることができます。さらに、NAS上の録画データをPCやスマートフォン、タブレットで鑑賞することもできるので、テレビ番組の楽しみ方がぐんと広がります。さっそくチャレンジしてみましょう。

 なお、今回のアプリは同社のAS31シリーズとAS10シリーズでは無料で利用できます。このほかのモデルは、別途アクティベーションコードを購入する必要がありますが、価格は「おおむね千円程度」(国内代理店のユニスター)と安価なため、必要であれば購入するのが良いでしょう。

 ちなみに、3月4日現在、アプリそのものは「AS31シリーズ用」とされていますが、対応機種は順次追加予定とのこと。ごく近日にAS10シリーズが、続いてAS61/62シリーズなどが対応し、将来的にはASUSTOR NASの全製品で利用できるようになるそうです。

知られざるNASアプリ:記事一覧
第1回:クラウドストレージ編:OneDriveの容量対策にも! オンラインストレージアプリを使ってみよう!
第2回:ブログ作成編:「自分ブログ」をNASで簡単に作ってみよう、世界標準「WordPress」をインストール
第3回:動画アプリ編:スマホの容量不足も解消OK?NASの動画アプリを使ってみよう
第4回:音楽アプリ編:月額無料の「クラウド音楽」をNASで実現!ハイレゾ音楽も再生OK
第5回:テレビ録画編:「テレビ録画の容量不足」をNASで解決、nasneとNASで録画し放題!
第6回:そのほか編:CD/DVDドライブをNASで共有!PCに無くてもDVDを再生可

録画したテレビ番組をNASにムーブできる「sMedio DTCP Move」

 まずは少しお勉強から。

 地デジなどのテレビ放送を録画したデータには、DTCP-IPという著作権保護技術でプロテクトが掛けられています。そのため、データを外部の機器にダビングする際は、コピーではなく“ムーブ”という仕組みを使って移動させることになります。つまり、録画する機器はもちろん、移動先である外部の機器も、「DTCP-IP対応」である必要があります。さらに言うと、こうした録画データを再生するプレイヤーも、DTCP-IPに対応していなくてはいけません。

「sMedio DTCP Move」。対応するASUSTOR NASは“AS10/AS31シリーズ”で、将来的には全てのASUSTOR NASでの対応が予定されています

 ……といった現状ですが、今回紹介するアプリ「sMedio DTCP Move」をASUSTOR NASにインストールすれば、ASUSTOR NASをDTCP-IP対応機器として認識できるようになります。

 DTCP-IPで保護された録画データは、「普通のNAS」にムーブさせることはできませんが、「sMedio DTCP Move」をインストールしたASUSTOR NASであれば、録画データを移動させられるというわけです。

 ASUSTOR NASに録画データをムーブする利点は主に3つあります。

 ひとつは容量面。録画データをNASに移動させることで、録画した機器のディスク容量を空けることが出来ます。NASは「データをためること」がメイン機能ですから、3万円以下で購入できる6TB HDDを複数導入するなどすれば10TB以上の「保存容量」を確保することも可能です。

 また、もうひとつはNASの強力なデータ保護機能を利用できること。RAIDやバックアップを利用すれば、仮にHDDに不具合が出ても「大切なデータが消える」ようなことを避けられます。

 最後のひとつは、ムーブした録画データをPCやスマートフォンのアプリで視聴できることです。DTCP-IPに対応しているだけでなく、DTCP+にも対応しているため、一昔前の機器ではできなかった「インターネットを介し、自宅外で録画番組を見る」なんてことも可能です。同じsMedio社が作ったDTCP+対応視聴アプリ「sMedio TV Suite」(Windows版1,900円、Android版900円)も用意されているので、「どの視聴アプリを選んだらいいか判らない」といった向きにも安心です。また、もちろん、DTCP-IP/DTCP+に対応したお気に入りの視聴アプリがあれば、それを利用してもいいでしょう。

nasneに録画したテレビ番組のデータをASUSTOR NASにムーブ!

 では早速試してみましょう。

 今回はDTCP-IPに対応した録画機器の代表例として、ソニーの“nasne”を利用します。nasneには500GBもしくは1TBの容量のモデルがありますが、毎日テレビを録画していると、すぐに容量がいっぱいになってしまいます。しかしASUSTOR NASを組み合わせれば、容量をテラバイト単位で追加できますので、まだ見ていないデータを退避させたり、保存用に使ったりと、大活躍するというわけです。

 まず最初に、NASアプリ「sMedio DTCP Move」をASUSTOR NASにインストールします。DTCPのムーブを有効にするためにはライセンスが必要になりますので、アプリを起動したらアクティベートを実行します。この作業は初回のみ必要になります。

 なお、アクティベートに必要なコードはAS31シリーズとAS10シリーズは本体に無料で同梱されています(*1)が、そのほかの機種では購入する必要があります。

 購入手順などは、ASUSTORのWebサイトなどで案内されるそうで、価格は「千円前後」(国内代理店のユニスター)とのこと。

*1 同梱前の出荷分は代理店にて対応するそうです。

アプリの起動とアクティベート

 アクティベートのコードが手元に用意できたら、まず、アプリをアクティベートします。

アプリを起動するとこのような画面が表示されます。まずは左側のメニューから[DMSを有効にする]をクリックします
有効にするためにはライセンスコードを入力してアクティベートを実行する必要があります
ライセンスコードを入力してDMSが利用できるようになりました。これで準備完了です。ちなみにDMSとはデジタルメディアサーバーの略です

 アクティベートが完了したら、さっそく録画データをNASに移動してみましょう。画面右上にある[コンテンツのムーブ]をクリックすると、ネットワーク内にある対応機器が検索され、フォルダーが表示されます。今回のnasneの場合、デフォルトで用意されている“ビデオ”、“ミュージック”、“フォト”の3フォルダーが表示されますので、“ビデオ”を開いたのち、“ジャンル”、“日付”などの分類をクリックして目的の録画データを探します。

 録画データが見つかったら、クリックして選択した上で[選択したコンテンツをダウンロード]ボタンをクリックします。すると録画データがnasneからASUSTOR NASにネットワーク越しにムーブされます。メニューから[実行中]をクリックすると、ムーブの様子を確認することができます。

 完了したらメニューから[ムーブ済みコンテンツの管理]をクリックすることで、指定した録画データがASUSTOR NASに移動できていることが分かります。この時点でnasneの電源をOFFにしてもアクセスできることからも、録画データがASUSTOR NAS上に移動できていることが分かります。

録画番組をムーブする手順
画面右上にある[コンテンツのムーブ]をクリックすると、ネットワーク内にある対応機器が検索されます。複数の機器がある場合は右上のプルダウンメニューで切り替えが行えます。今回のnasneの場合、デフォルトで用意されている“ビデオ”、“ミュージック”、“フォト”の3フォルダーが表示されます
“ビデオ”をクリックして開くと、“ジャンル”“日付”などの分類が表示されますので、目的の録画データにたどり着きやすい分類をクリックして開きます
目的の録画データが見つかりました。移動するにはクリックして選択します。ちなみにこの画面はあくまでも移動するための画面なので、クリックして直接再生することはできません
選択したら[選択したコンテンツをダウンロード]ボタンをクリックして移動を実行します。“ダビングを開始しました”というメッセージが表示されます
左のメニューから[実行中]をクリックすると、移動の進捗が表示されます
進捗が表示されなくなったらムーブは完了です。左のメニューにある[ムーブ済みコンテンツの管理]をクリックしてみましょう
コンテンツが表示されていることから、録画データのムーブが完了したことがわかります
対応機器ではない場合
なお対応機器でない場合は、ムーブしようとクリックしても選択が行えず、nasne上の録画データに表示されていた矢印アイコンも表示されません

ムーブした録画データをスマホで鑑賞!

 では、ASUSTOR NASにムーブした録画データがきちんと再生できるか試してみましょう。録画データの再生には、DTCP-IPやDTCP+に対応した再生環境が必要です。

 今回は、sMedio社が用意したアプリ「sMedio TV Suite」を使ってみます。このアプリはWindows PC版とAndroid版がありますが、以下ではAndroidアプリを例にします。

 ちなみにこの「sMedio TV Suite」、一般的な動画データの再生までは無料で行えますが、今回のようにDTCP-IPで保護された録画データを再生するためにはアプリ内課金でプレミアム機能を有効にする必要があります。インストールしたらまず購入の手続きを行っておきましょう。

 アプリを起動し、[デバイスリスト]をタップすると、ネットワーク内にある対応機器が検索されます。ここではnasne本体のほか、録画データの移動先であるASUSTOR NASが表示されますので、タップして開きます。画面を左右にフリックして“Videos”フォルダーを表示すると、ムーブした録画データが表示されますので、タップすることで再生が行えます。実にカンタン、あっという間です。

「sMedio TV Suite」。NASに移動したテレビ番組を視聴するためのアプリです。今回紹介しているのはAndroid版ですが、ほかにWindows版も用意されています
起動後まずは[デバイスリスト]をタップします
ネットワークに接続されている対応機器の一覧が表示されますので、ASUSTOR NAS(このリストではAS3102T-2C99)をタップして開きます
画面を左右にフリックして“Videos”フォルダーを表示すると、ムーブした録画データが表示されます
タップすることで再生が行えます。一般的なメディアプレイヤーアプリと同様、一時停止や早戻し、早送り、シークバーを使った再生位置の呼び出しも行えます
番組説明を表示することもできます
音声切り替え機能も用意されています

 再生まわりの機能は一般的なメディアプレイヤーアプリと同様で、一時停止や早戻し(10秒単位)、早送り(30秒単位)、シークバーを使った再生位置の呼び出しが可能です。このほか、番組の詳細を表示したり、音声を切り替える機能も用意されています。

 またこの「sMedio TV Suite」は、ASUSTOR NASに保存された録画データだけではなく、nasne内の録画データやほかの対応機器に保存された録画データ、さらに特定のフォーマットを除いてスマホ内に保存されている動画の再生にも対応しますので、メディアプレイヤーアプリを使い分ける必要もなく、これ1本であらゆる動画の再生をまかなえます。詳しい動作確認情報についてはsMedioのサイトに掲載されていますので、参考にしてください。

USBハードディスクと違い、容量をどんどん増やせる!

 今回使用したnasneの場合、容量を増やすにはUSBハードディスクを増設する方法もありますが、最大で2TBという容量制限があるほか、台数も1台のみ、ハブを使っての拡張もできません。nasne以外の機器では、容量を増やすこと自体が不可能な場合もあります。

 その点、NASを利用すれば容量を増やすのも容易です。HDD増設で容量を増やしてもいいですし、NASそのものを増やして「家族別」「ジャンル別」に保存するといったことも可能です。

 大量の録画データに埋もれて困っている人は、ぜひ、NASを活用した快適なテレビ録画環境の構築にチャレンジしてみてください。

[制作協力:ASUSTOR / ユニスター]

(林田 幸一)