【第1回】
新開発環境が無料で登場!
eMbedded Visual Tools 3.0
(00/10/18)
はじめに
Microsoftが提供するWindowsCE用の開発環境といえば、これまではWindowsCE Toolkit というソフトをVisualSudioとともにインストールして使うものだった。これでは、ただでさえ高価なVisualStudioに加え、WindowsCE Toolkitも買わなくてはならず、開発者にとっては二重の出費となっていた。
しかし、今回PocketPCとともに登場する「eMbedded Visual Tools 3.0」はなんと無料! しかもVisualStudioが必要なく、それ単体で開発できるという優れものである。それでいて、いままでに提供されていた開発ツールと全く遜色がない。非常に優れたツールである。これにより開発者は実機さえあればWidnowsCE対応ソフトウェアが開発できることになる。なお、eMbedded Visual Tools には、eMbedded Visual C++ とeMbedded Visual Basic 、それにSDKが含まれている。
開発環境が無償化されたことで一気に開発者が増えるのではないだろうか?。今までWindowsプログラミングはしてきたが、CE用ソフトを作ったことがなかった人、是非この機会にCEプログラミングに参加してみよう。
開発に必要な環境
それでは、まず「eMbedded Visual Tools 3.0」を使って開発するために必要な環境をチェックしておこう。注意が必要なのは対応OSである。Windows98ではSecondEditionでしか動作しない。SecondEditionでないWindows98では、インストール自体できないので注意しよう。Windows98 SecondEditionを導入していない人は、この際、9/23に登場するWindowsMe に乗り換えるのも一つの手だろう。WindowsNTはSP5+IE5.01が必要、Windows2000でももちろん開発できる。
サポートするSDK
WindowsCE Toolkitもそうだったが、CE用の開発ツールはSDKがあってはじめてそのOSに対応したソフトを作ることができる。「eMbedded Visual Tools 3.0」には、以下のSDKが含まれている。
- Microsoft® Windows® Platform SDK for Pocket PC
- Windows CE Platform SDK (H/PC Pro 3.0)
- Windows CE Platform SDK (Palm-size PC 1.2)
よく見るとH/PC2.0用のSDKが含まれていないのがわかる。しかし、H/PC2.0用のSDKを前のToolKitより別途インストールしてみたところ、「eMbedded Visual Tools 3.0」でもH/PC 2.0用のソフトが作れることがわかった。ただし、ReadMe等にはどこにも開発できるとは書いてない。あくまでこちらで試してみたところではあるが、確かに開発できるようだ。
また、「eMbedded Visual Tools 3.0」に含まれている、H/PC Pro3.0用のSDKやPalm-size PC 1.2用のSDKは更新されて新しくなっているようだ。そのため、以前のものをインストールしていても再度新しいものをインストールしなければならない。
入手方法
現在、入手方法はWebから実費(送料と手数料)を支払って、CD-ROMを送ってもらう方法しかない。これは米マイクロソフトのサイトに注文することになる(ちなみに米国以外からの入手の場合、実費は14.95ドルで支払方法はクレジットカード)。しかし、ダウンロードで入手できるように検討中ということであり、MSDNでも配布される模様。私の希望としては雑誌の付録に付けてもらいたいところだ。
ちなみにCD-ROMの注文はこちらから。
http://developerstore.com/devstore/toolboxSelect.asp
Internatinalを選びEnter後、左から「WindowsCE eMbedded Visual Tools 3.0」を選択、次に右にある「WindowsCE eMbedded Visual Tools 3.0 Japanese」を選択する。
インストールの注意
インストール前にはよくReadme.htm を読んでおこう。インストールに関係してさまざまな情報が載っている。問題が起こったときにはこれを見ればほとんどの場合、解決するはずだ。
Readme.htmにも載っていることだが、VCCE6.0を使っていた人は、インストールの最後にエラーが発生する場合があるので注意が必要だ。この場合、旧CE Toolkit をアンインストールした後、cemgrps.dll、cemgrui.dll および cemgr.exe を C:\Windows CE Tools\BIN ディレクトリから削除し、コンピュータを再起動してから eMbedded Visual Tools をインストールすることで解決できる。
使いごごちは?
eMbedded Visual-C++
eMbedded VisualBasic
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では、実際に使ってみよう。使ってみると今までのWindowsCE Toolkitと比べて開発環境としては大差ないことがわかる。あまりに差がないので拍子抜けするぐらいだ。
もちろん、PocketPC用SDKが追加されていることは大きな違いであるが、基本的には今までToolKitと同じである。ToolKitを使ったことがない人には、Visual-C++6.0やVisualBasic6.0と同じような開発環境である、と考えてもらいたい。これほど高度な開発環境が無料で入手できるとは驚きである。
eMbedded Visual-C++ではMFCやATLももちろん使うことができる。ただし、STLは付属していない。このあたりも以前と同じである。
また、eMbedded Visual Tools 3.0はVisualStudioとの共存も可能であるが、WindowsCE Toolkitとは共存できない。
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以前のToolKitとの互換性は?
さて「eMbedded Visual Tools 3.0」で以前のToolKitで開発していたプロジェクトはそのまま使えるのだろうか? 試しに私が開発しているソフト(Visual-C++6.0/MFC)のプロジェクトを読み込ませてみた。結論から言うと、全くエラーなしにビルドできた。Pocket-PC用のSDKにしてビルドしても全くエラーは出なかった。ソースレベルでの互換性はかなり高いようだ。
ただし、eMbedded Visual C++ では、ワークスペースとプロジェクトのファイルの拡張子が変更されている。ワークスペースファイルの拡張子は、*.dsw から *.vcw に、プロジェクトファイルの拡張子は、*.dsp から *.vcp に変更されている。古いプロジェクトを読み込むとこれらの拡張子に自動的に変更されるが、以前のToolKitでは*.vcwや*.vcpは当然読めないので、プロジェクトレベルでの互換性はなくなることになる。
PocketPCは既存ソフトで対応できるか?
ここで開発環境と直接の関係はないが、開発者にとって既存ソフトをPocketPCに対応させるため新しいバージョンを作る必要があるかどうかを考えてみたい。
まず、既存のPalmSize-PC用のソフトであればたいていの場合、PocketPCで動作する。そう考えると一見、PocketPC用に新しいバージョンを作る必要が無いように思える。しかし、一つだけ問題がある。それはメニューおよびツールバーの位置だ。
PocketPCでは、スタートメニューはウィンドウ上部に移されている。そのためPocketPC対応ソフトはツールバーやメニューがウィンドウ下部にある。ちょうどPalmSize-PCの反対になっているわけだ。しかし、既存のPalmSize-PC用のソフトをPocketPCで実行してもツールバーやメニューは相変わらずウィンドウ上部に表示される。これでは操作の一貫性がとれず、ユーザにとっては不満の種になりかねない。
つまり、コマンドバーの部分だけでもPocketPC版を出す必要が出てくるわけである。それ以外にもタスクトレイが通常表示されないためタスクトレイを使うソフトは対応が必要になるし、PocketPCから追加されたタップ アンド ホールド機能(しばらくタップしているとメニューが出る)などにも対応してみたいところだろう。
次回以降は・・・
今回は「eMbedded Visual Tools 3.0」の概要を書いてみた。次回以降はさらに実践的な内容について紹介していきたいと思う。もし、誤り等がありましたら、是非メールもしくは掲示板にご意見等ください。
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===更新履歴===
2000/10/18 作成
(古原伸介)