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Becky! Internet Mail


評価時: Ver1.20 (97/03/07)


窓の杜MLでも利用者の多い高機能メーラ「Becky! Internet Mail」

 3月1日、窓の杜イチ押しメールソフト「Becky! Internet Mail」がVer1.20にアップデートした。実はこのBecky!、窓の杜MLへの投稿を集計したところAL-Mail、Maicrosoft Inernet Mailを引き離しもっとも多くの人に使われていたとの報告もあり([mado-ml 1778])、現在利用者急増中のメールソフトだ。シェアウェア4000円と聞くと「高い!」と感じる人も多いかもしれないが、ではなぜその価格でこれ程の人気を誇っているのか?Ver1.20をもとに、その秘訣を探ってみよう。

 

[充実の基本機能と優れたユーザーインターフェース]Becky! 全景

メール本文にURLやメールアドレスがあった場合にそれをクリックするだけでWWWブラウザが起動して該当ページが表示されたりメール作成画面が開いてそのアドレスにメールがかけてしまうというクリッカブルURL&E-mailアドレス。メールのタイトルに含まれる文字列や差出人などによって、受信時や終了時などに指定のフォルダに選別してくれる振分け(フィルタ)機能。メールヘッダやタイトルを参照して各メールの前後関係を判断し、ツリー状にリンクしてくれるスレッド表示、保存してあるメールから任意の文字列を含むメールを調べる検索機能、uuencodeなどで自動的にエンコード・デコードして簡単にファイルを送ることの出来る添付ファイル機能etc.etc...。

 Becky!はこれらの既にメールソフトの基本と言えるべき機能はすべて用意されている。たとえばクリッカブルURL&メールアドレスなどではDDEを利用していくつも同じアプリケーションが起動しないようになっているし、http:、ftp:などのURLのプロトコル識別子毎に別々のアプリケーションを起動することも可能だ。検索機能はもちろん、フィルタにおいてもand/orなどで複数の条件をつけることが可能になっているし、添付ファイルもドラッグ&ドロップのみで簡単に作成することができ、受信した際はわざわざ保存しなくとも普通のファイルと同じ感覚でダブルクリックするだけで利用することもできる。

 このように、さまざまな機能を緻密に簡単に利用できるようになっているのがまず第一の長所といえるだろう。単に多機能であっても、それを利用する手順が複雑ではとても使う気にはなれない。Becky!は図をみても分かるとおり最近人気のエクスプローラ風のレイアウトをしており、比較的直感的に操作できる。パソコン初心者でも十分利用することは可能だ

 初心者にやさしい機能としては、送信時にタイトルや宛て先に不備が無いか確認ウィンドウが表示できたり(オプションで切り替え可能)、半角カナ文字を全角に自動変換する機能もついている。逆にMicrosoft製品、Natscape製品のメーラーから送られてくる半角カナ文字を復元する機能も備えられた。本来相手のメールクライアントが自分のものと違うときは半角カナ文字は御法度なので、注意をうながして再送してもらうのが筋かもしれないが、相手が仕事上のお得意先などとなるとなかなかそういうわけにはいかない。そんなときには有効だ。また、MS-Internet Mailなどで、2バイト文字のタイトルが長すぎて桁折りが入った場合に起るコーディングの不具合(仕様?)などにも対応し、そのような場合でもタイトルをしっかり読み取ることができる。

 ユーザーインターフェースのなかでも便利なのがスペースキーによる未読の読みすすめ機能である。NetscapeやMS-IEでこの記事を読んでいる人は、ここでスペースキーを押してみよう。画面がスクロールして、下のほうが読めるようになったと思う。WWWブラウザや著名なニュースリーダなどでもおなじみのインターフェイスだが、Becky!にもこれが拡張されたような機能がついており、次々と送られて溜まった未読メールをスペースキー一つでどんどん読みすすめていくことができる。そればかりか、受信時に振分けする機能を利用して各フォルダに未読メールが散らばっている場合でも、フォルダの未読をすべて読みおえたら自動的に次のフォルダに移ってくれる。本当にスペースキー一つだけで未読を読み進めることができ、MLに入っていたり仕事で利用していたりと毎日沢山のメールを処理している人には絶大の効果を示すだろう。未体験の人は是非ためしてもらいたい。 Becky! メール作成画面

 またメール作成周りも同作者によるテキストエディタ「Dana」のサブセットが組み込まれており、自動桁折り機能、発言テンプレート、自動署名などとても使いやすくなっている。また送信箱のほかに作成途中の文書を入れる草稿フォルダも用意されていて、書いている途中のメールをあやまって送信することがないようになっている。メールソフトの基本は何といってもメールの読み書き部分がしっかりしてるかに限る。そう言った点では全く不満を感じさせない十分なつくりだ。

 

[メールの送受信と複数アカウントサポート]

 メールソフトの基本といえば、送受信まわりも外すことはできない。インターネットへの接続には、一般家庭などでのダイヤルアップ方式と、学校職場などでのLAN/常時接続方式とで大きく分けられるが、Becky!はそのどちらでの利用も考慮にいれられており、オプションで自分の環境にあった巡回設定を組むこともできる。

 たとえば、ダイヤルアップユーザーの場合はオフライン時には定期巡回をせずに回線が繋がっているときだけ定期巡回するようにもできるし、メールを作成して送信する際に同時に受信メールのチェックもすることもできる。逆に手動でメールを受信しにいったときに、送信箱に溜まっている未送信メールを同時に送信することもできる。

 反対に常時接続ユーザー向けには、最少化した場合にタスクバーから消えてタスクトレイに常駐する形にできるし、着信があった場合はタスクトレイアイコンの形が変わったり、音を鳴らしたり、あるいはポップアップして表に出てきたりなどといろいろな知らせ方をすることができる。また席をはずしてる最中に勝手に触られないよう、最少化の状態から復帰する際にパスワードを求めるようにすることもできる。

 さて、Becky!の大きな機能のひとつとして、複数アカウントのサポートもあげられる。アカウントの切り替えは再起動する必要など無く、クリック一つで簡単に切り替えられる。アカウント毎に別々のフォルダでメールを管理することも出来るし、同じフォルダで一括管理することもできる。全てのアカウントの pop サーバを一括で受信チェックすることも可能だ。

 

[さまざまな先進機能とサポート体制]

 最近増えてきたものなかに、HTMLメールというものがある。Microsoft製品の設定を誤ってよく送られることがあったが、最近発表されたNetscapeCommunicatorの評価版付属のメーラーもデフォルトの設定がHTMLメールになっていて、一層ふえてきた。いまのところ迷惑なだけなこのHTMLメール、使いこなせば実はなかなか便利なものである。HTMLタグを使って装飾ができるのだから、Microsoftのリッチテキストなどよりもずっと広い範囲で利用することができるだろう。あるいは今後はHTMLメールが普通のメールに取って代わってしまうことだってあるかもしれない。Becky!はこのバージョンからMS-IE3.0xのActiveXコンポーネントを利用してこれらの HTMLメールをインラインで表示することができるようになった。わざわざブラウザを起動する必要がなくなったわけだ。 ボイスメール作成画面

 さらにこのバージョンで新たに加わったボイスメール作成機能は、2Kbytes/秒の比較的小さな音声ファイルで手軽にラジオクオリティの音質のメールのやりとりが可能になった。音声メールの作り方は至って簡単で、メール作成画面でマイクのツールアイコンをクリックし、あとは録音ボタンをおしてマイクから喋るだけ。拍子抜けするほど簡単につくれる。wav形式の添付ファイルとして作成されるため、再生は Windows環境に限られてしまうが、Windows95 標準でサポートされている形式なので、他メールソフトでも添付ファイルを展開解凍すれば簡単に再生できる。

 また最先端の機能としてはPGP関連の機能も紹介しないわけにはいかない。PGPの詳細の説明は米国の暗号化プログラムの輸出規制など複雑な背景があるため省かせてもらうが、端的にいえばメールの内容が改竄されていないと補償する署名機能と、特定の相手でないと解読できないようにする暗号化機能などがある。Becky!では署名の添付/改竄チェック、暗号化複合化、公開キーの送受信などのインターフェースが用意されている。現在のところ、新規鍵ペアの作成がサポートしておらず、お世辞にも初心者にも手軽に PGP を使用することができるとはいいがたい。PGP自体まだ一般には浸透していないが、カード決済や契約などの分野への利用が期待でるため、これからの機能改善が望まれるところだ。

 Becky! のサポートは試用中の人でも参加可能なメーリングリストで行われている。その活気たるやものすごいものである。窓の杜 ML もなかなか一日のメール数の多い ML だか、Becky!のサポートMLはそれに全くひけを取っていない。作者のcartyさんの精力もさることながらML参加者の意気込みもすごい。出される要望もなるほどなと必要性を感じさせられるものが多く、そういった意見がどんどんとりこまれていく。ひとたびβテストなどとなると、それこそ怒涛のレポート合戦である。こういったものを見ていると、Becky!はまさに作者とユーザーが一体になって急成長をとげたソフトのように感じる。おおげさないいようだが、フリーウェア/シェアウェアという精神が体現されているといっても過言ではではないのではなかろうか。残念ながら最近はこういったアグレッシブなオンラインソフトが少なくなってきたような気がする。

 実際、半年前のBeckyと今のBeckyをみると、まったく別物のようである。以前の Becky! ではメールの読み込みの遅さという致命的な弱点があった。メールボックスのなかのメールをすべてオンメモリに読み込んでいたため、少しメールが増えてくると読み込みは遅くなり、メールの削除は時間かかり、別のフォルダに移そうと思えばメモリスワップの嵐に悩まされた。それも、Ver1.10 になったあたりから徐々に改善されていき、このバージョン(ver1.20)でもフォルダ読み込みの高速化がなされて、現在では各フォルダに1000通程度のメールならそれ程苦もなく管理できるようになってきた。最大の弱点を取り敢えず克服したBecky!が、今後ユーザの意見をどのように取り入れ、発展していくのか、楽しみなところである。

 

[現在なお残される問題点]

 もちろん不満に思われる点が全く無いわけではない。まず、ヘルプファイルがきちんと整備されていない。Becky!は他のメールソフトからのインポートをするためのツールが用意されているが、ヘルプファイルが存在せず、F1キーで参照するとエラーが出る。Becky!本体に関しても、トピックヘルプの出せない場面が数多く有る。たとえば、新しく用意されたボイスメールの場合、該当記事は存在するのに[録音]のダイアログが表示されているときに呼び出すことができない。

 またごく希にだが、特殊な状況に陥った場合に一般保護エラーが発生する。一般保護エラーで強制終了してしまっても受信メールを紛失してしまうことはめったに無いようだが、既読判定が保存されないために同じメールを読む羽目になったりする。個人的環境の問題かもしれないが、低速度なメールサーバへの接続が失敗しやすく、その後Windows自体が不安定になることもあったとの報告も有る。

 前述のPGPもまだまだ初心者に使いやいすものでは無いし、その処理にもいくつか細かい不具合がみられるようである。また、これはいたしかたないことかもしれないが、起動してから1通目のHTMLメールをインライン表示する際に、ActivXコンポーネントの読み込みのためかしばし時間を要する。

 これらの諸問題も今後は徐々に改善されていくのだろう。けれどもここまでメジャーになってきて、初心者の利用の増えてきたソフトである。たとえ直感的でわかりやすいとはいえ、ヘルプの整備は優先させるべき事項かもしれない。

 ちなみに利用者の有志による、FAQホームページなどもあるので、導入や利用につまずいてしまった場合は、取り敢えずそちらを参照してみるのもよいかもしれない。

 

 (Reported by 新城雅章 / たけもとかつみ)

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