窓の杜 ふるれびう | |
ペイントソフト比較レビューHyper-Paint, LView Pro, PaintShop Pro | |
評価時: 10/22/97 |
フォトレタッチソフトと聞くと、おそらく「Photo Shop」などの有名アプリを思い浮かべてしまうことだろう。しかし、「デジタルカメラで撮った画像を加工したい」とか、「ホームページなどのちょっとした画像を作りたい」程度ならば、それほど高価で巨大なアプリは必要ないことも事実。自分の用途に合ったソフトを使いたいという方のために、今回は中でも高機能・高性能と名高い「Hyper-Paint v6.5C(HP)」「LView Pro v2.0(LVP)」「PaintShop Pro v4.14(PSP)」の3つの比較を試みた。
ソフト名 | Hyper-Paint v6.5C | LView Pro v2.0 | PaintShop Pro v4.14 | |
対応ファイルフォーマット | 読み込み | BMP, TIFF, Q0, RGB, JPEG, *PIC, *PICT2, *MAG, *XLD4 | BMP(DIB), GIF(Interlaced/Transparency), JPEG(Progressive), PCX, Portable(PBM他), TARGA, TIFF | BMP, CDR, CGM, CLP, CMX, CUT, DIB, DRW, DXF, GEM, GIF(Interlaced/Transparency), HGL, IFF, IMG, JPEG(Progressive), LBM, MAC, MSP, PBM, PCD, PCT, PCX, PGM, PIC, PNG, PPM, PSD, RAS, RAW, RLE, TGA, TIFF, WMF, WPG |
書き込み | BMP, TIFF, Q0, RGB, JPEG | BMP(DIB), GIF(Interlaced/Transparency), JPEG(Progressive), PCX, Portable(PBM他), TARGA, TIFF | BMP, CLP, CUT, DIB, DXF, EPS, GIF(Interlaced/Transparency), IFF, IMG, JPEG(Progressive), LBM, MAC, MSP, PBM, PCT, PCX, PGM, PIC, PNG, PPM, PSD, RAS, RAW, RLE, TGA, TIFF, WMF, WPG | |
フィルター | レリーフ、エンボス、点描、シャープネス、輪郭抽出、ノイズ、モザイク、拡散 | Edge Enhance, Find Edges, Trace Contour, Blur, Soften, Sharpen, Emboss, Despeckle, Median, Erode, Dilate, Add Noise, Mosaic, ユーザー定義 | Edge Enhance, Find Edges, Trace Contour, Blur, Soften, Sharpen, Un Sharpen, Emboss, Despeckle, Median, Erode, Dilate, Add Noise, Mosaic, ユーザー定義 | |
色調調整 | ソラリゼーション、ポスタリゼーション、硬調・軟調、ハイパス、色相・明度・彩度、ネガ、ヒストグラム・トーンカーブ、チャンネル交換、コントラスト、2値化 | Negative, Grayscale, Brightness/Contrast, Gamma Correction, Highperbolic Sine, Exponential De-Contrast, Red/Green/Blue, Hue/Satuation/Value, YUV, ユーザー定義 | Negative, Grayscale, Brightness/Contrast, Gamma Correction, Hightlight/Midtone/Shadow, Red/Green/Blue, Hue/Satuation/Luminance, Histogram, Posterize, Solarize | |
その他特殊効果など | ぶれ、多角形化、ペーパー化、波形化 | Ellipse, Pinch, Punch, Cylinder, Perspective, Skew, Spanning Wheel, Add Borders, Buttonize, Motion Blur, Seamless Pattern, Colorize, Drop Shadow, ユーザー定義 | Pinch, Punch, Cylinder, Perspective, Skew, Circle, Pentagon, Wind, Add Borders, Buttonize, Motion Blur, Seamless Pattern, Drop Shadow, Cutout, Chisel, Hot Wax Coating |
この中で最も異質な存在が、「HP」だ。詳しい機能などは後述するが、本格的なレタッチ・ペイントソフトであるにもかかわらず、これはフリーソフトである。メニューバーが存在せず、操作は全てツールバーから選択するなど、およそWindows用のアプリケーションらしくないインターフェース。GIFや256色モードの非対応はいささか残念ではあるが、それを補って余りある機能の多彩さはフリーソフトとは思えない出来栄えだ。
「HP」は、これら3つのソフトの中で唯一、画像を様々な方法で重ね合わせることのできる「レイヤー」機能を持っている。4枚までという制限はあるが、あまり凝った画像を作るのでなければ、たいていこれで間に合わせられるだろう。
面白いのが、各ツールボックスがフォーカスを失うとそのウインドウが小さくなり、アクティブになると元に戻るところ。画面がそれほど広くない場合でもツールボックスがあまり邪魔にならない。ただし、[ラインスタイル]ツールボックスなどの表示が正常に戻らなくなることがある。通常ウインドウのままにしておくようにも設定できるので、これで使用することをオススメする。
右の画面を見比べてみてほしい。画像に説明がついていなければ区別つかないんじゃないか!? と思えるほど良く似たインターフェースを持つ両ソフトだが、実に操作感も、フィルター設定のダイアログも、できることも、ほとんど同じなのだ。「LVP」がこのようなインターフェースになったのは v2.0でのメジャーバージョンアップからだが、「PSP」では昨年リリースの v4.0 からすでに採用されていたので、「LVP」があえてそれをマネしたのではないかということが想像できる。ともあれ、アプリケーション間で操作性の統一が図られているのは、それがどのような形であれ悪いことではないだろう(著作権等に引っかからなければの話だが
この「LVP」のみアニメーションGIFに対応しているが、Microsoftが提供しているフリーのGIFアニメーションエディタ「Microsoft GIF Animator」と同程度のことしかできない。Jpegの読み込み・表示は高速で、Windows95・MMX Pentium - 233MHz・メモリ 96MB という環境では、2468×1728 pixel、1.04MBのJpeg画像(モノクロ)の読み込み時間が「HP」で約10秒、「PSP」で約5秒だったのに対し「LVP」では約3秒だった。また、最大32回までのUndo/Redo、画像をスライドショー形式で閲覧することができる「カタログ」機能、編集した画像のメールでの即時送信など、「PSP」プラスアルファの部分も多く、単なるマネで終わってはいない。
一方、オンラインペイントソフトの元祖とも言える「PSP」だが、扱えるファイルフォーマット数は読み書きあわせて35種。ここまで対応フォーマットが多くなると、もはやどれがどういうファイルなのか分からなくなってくる。フィルターの種類など機能面でも「Photo Shop」に迫らんとする勢いだ。指定領域のスクリーンキャプチャ、豊富に用意されている「Photo Shop」のフィルタープラグインや「PostScript」への対応など、市販のレタッチソフトに引けを取らない、いや、勝っているとさえ言える高機能を誇っている。多くのユーザーの支持を集めている信頼性と安心感も、他のソフトにない付加機能の一つだろう。
一見すると「HP」のフィルターや特殊効果は少ないように思えるが、実際のレタッチ作業において困るといったことはまずない。これらを工夫して組み合わせることで十分に対応できるからだ。他の2つのソフトでは、それが少ない手数で実現できるというだけのものが多いのである。
前述したように「HP」はかなり”クセ”のあるソフトなのだが、ことフィルターやペンツールなどとなると、スクロールバーを多用し利便性の重視された、軽快かつ容易な操作が可能だ。リアルタイムにフィルター等が適用されるプレビューは視覚的に非常にわかりやすい。
他のソフトにはないツールのうち意外と使えるのが、明度・コントラスト・彩度のパラメータを持った筆。これによって、筆の太さで色調を変化させることができる。写真でいう「焼き込み」などが簡単にできるのである。ブラシ関連のツールが充実しているので、「HP」はどちらかというとペイントソフトとしての使い方のほうが向いているのかもしれない。
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「LVP」と「PSP」の差は、全体的に見てほとんどないと言っても良いのだが、中には同機能でも「LVP」の方が細かく設定できるようなものもある。その一つが[Buttonize]だ。指定範囲に影をつけボタンのように見せる効果で、「PSP」では影となる色を1つしか指定できないのに対し、「LVP」では明るくする部分、暗くする部分の2色の指定ができるため、なかなか立体感のあるボタンを作ることができる。ホームページの部品にそのまま使えそうなものが、本当にすぐ完成してしまう。
「PSP」で便利なのは、[Cutout]という、ホームページでよく目にする、文字などを切り抜かれたように見せる効果である。影の深さはスライドバーを使って感覚的に操作でき、任意の色を指定することも、Blur(ぼかし)をかけることももちろん可能だ。
このほか、「LVP」と「PSP」には[Seamless Pattern]という、まさにホームページの背景作りにうってつけの機能もある。画像の端とその反対側とを自然につながっているように見せかけるもので、3DCGのテクスチャ作成にも威力を発揮しそうだ。そのうえ、「PSP」にはフィルター、「LVP」にはそれに加え色調調整、特殊効果をもユーザが独自に作成できるようになっている。行列や計算式を編集するものであるため、初心者(と数学の苦手な人)にはつらいかもしれないが、これによって無限にフィルターを生み出すことも不可能ではない。
気になるのは、「PSP」で塗りつぶし時などにおけるTolerance(適用範囲)の値が0から200と半端であること。そもそも、たいていのコンピュータで表される色の階調は、ご存知の通りフルカラーのモニタ上でRGB各色8bit。つまり256階調である。201と256では指定値と実際に適用される範囲とにギャップが生じるのではないのだろうか。それほど厳密に考える必要はないのかもしれないが、使っている方としては気持ちが悪い。そして、「HP」ではブラシなどの太さに対する最大値に一貫性がない。もう少しフレキシブルに設定できるようになると、使い勝手、表現力とも一層の向上が望めるハズだ。
これらのソフトを使用した際に、筆者が経験したバグなども記しておく。一部の事項は環境によって左右されることから、概して不具合とも言い切れないため、参考程度にしてほしい。
強制終了してしまうバグはドライバ側のバグなのか、それとも「HP」側のバグなのかはわからないが、EPSON製のスキャナをご使用の方はとにかく最新版のドライバをインストールし、取り込み機器選択で[EPSON TWAIN]を選択してから取り込むと良い。この他、v6.4 から v6.5A へのバージョンアップ時に大量のバグフィックスがあったことから、まだまだ不具合対策は万全でないようである。
これらの現象は、自分の環境で試してみないことには分からないが、NT4.0をメインに使っている人の場合、このソフトは自動的に選択から外れることになるかもしれない。
今のところ「PSP」では目立った不具合は発生していない。ここらへんは老舗のアドバンテージといったところか。
実際のところソフトの選択は個人の志向と好みによるものだ、と言いたいところだが、環境によっては選択肢が減ってしまうかもしれないという残念な結果に終わってしまった。しかし、これら3つのソフトがオンラインレタッチ・ペイントソフトの中でもかなり優秀な部類に入っていることは疑いのない事実であるし、画像を扱う人にとって必ずその助けになってくれることも間違いない。
全てのソフトを使ってみて、それでも不満が出るようなことはあり得ないと言える。3つ合わせたとき、そんじょそこらの高級アプリでさえかなわないような汎用性と表現力を発揮してくれるだろう。その先は使う人の腕次第だ。
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