窓の杜 ふるれびう

Netscape Communicator


評価時: 4.0 Preview Release 3 (4/6/97)


PR3 公開、「Netscape Communicator」は円熟に向かうのか、それとも…

■ おことわり ■

まもなく Internet Explorer 4.0 beta 1(英語版)が Microsoft社から公開される らしいという噂がありますが、以下の文については、まだ IE4.0 が公開されて いないときに書かれたものである旨、ご注意ください。なお、この IE4.0 に ついては、また別途レビュー等の形で報告予定です。


PR3 起動画面

5日、Netscape Communicator Preview Release 3(以下PR3)が Netscape Communications社 ftp サイトから公開された。2月末の Preview Release 2(以下PR2)公開から一ヶ月。セキュリティホールの穴埋めに追われ、バージョン4公開が遅れに遅れている Internet Explorer を尻目に、順調にバージョンアップを続けていると言うべきか、それとも Netscape の意地と見るべきか…。それを見極めるには、PR3の完成度を検証してみることがいちばんだろう。

 

[がっかりの CSSと、Dynamic HTML]

いちどでも Web ページを書いたことがある者なら、イヤでも気になるのがスタイルシート(Cascading Style Sheets; CSS)。ページデザインやフォント形状などをDTPライクに美しく指定できる機能だが、PR2 では「サポートしている」とは言いながら、期待した通りの動作をしてくれなかったっけ…。

期待はまたも裏切られ、PR3でも、変わらなかった。

Netscape での CSS 動作不具合とは、主に;

周辺で期待どおり動作しなくなる、というものだが、特に前者は致命的だ(Webマスターは、しばしばあの青いアンダーラインを消したがるから)。PR3 でも、この不具合は修正されていないようだ。PR2 レビューの時と状況が変わらないので、実行画面はここには出さないが、興味のある方は W3C のスタイルシート関連ページなどを参考にしてみてほしい。

W3C
http://www.w3.org/pub/WWW/Style/

Netscape による CSS の実現は、Internet Explorer などで行われている単純なスタイルシート機能の実現とは、すこし異なる事情があるようだ。それは、Netscapeでは、CSS を Dynamic HTML という技術の枠組みの中の一機能として捉えているところから来ているのだろう。

Dynamic HTML とは、表現力豊かでインタラクティブなページを表現するための新しい技術をいくつも取り込んだ、新しい HTML 技術の総称のようなものだ。Dynamic HTML は、以下のような技術からなる;

つまり、CSS は、Dynamic HTML の中の dynamic style sheets の機能の一部として実現される位置づけになっているわけだ。しかし、前述のとおり、肝心の CSS としての動作自体が怪しい状態だ。これでは、単に他のブラウザでは見ることができない新しい規格を生み出してしまっているだけである。しかも、Internet Explorer では見ることができるページを Netscape では表示できないわけだから、相互非互換でなお悪い。

おそらく、Netscape社としては、CSS の規格策定から実装まで Microsoft 社に先を越されたという感があり、対抗路線として包括的な規格=dynamic style sheets、さらには Dynamic HTML を打ち出したのだろう。しかし、このままでは不統一な規格が乱立するだけだ。まず、CSS 自体の動作を確実なものにすることをユーザとしては望みたいところだ。

そうそう。

Netscape がスタイルシートに完全対応していないために苦汁をなめている Web 業界の人々は、もっぱら TABLE タグで日々しのいでいるのだが、Communicator になって以来、入り込んでしまったこのタグのバグ(?)は、PR3 になってもまだ直っていないようだ。この「不具合」とは、

というものである。実例を見たければ、Internet Wacth など、TABLE を多用している Web サイトを手元の Communicator で表示させ、横一杯にウィンドウを広げたときの動作を Internet Explorer と比べてみるとよい。

もしかして、誰も Netscape にレポートを出していないのかもしれないが、このあたりの奇々怪々な動作も、Communicator ユーザを悩ましている。改善を願いたい。

 

[ユニークな NetHelp、オフライン対応の Collabra]

NetHelpの画面
NetHelpの画面

しょっぱなから悪い評価を浴びせてしまったが、もちろん良くなったところもある。充実しはじめた NetHelp はその一つだ。

NetHelp は、HTML によって構成されるヘルプシステムだ。この機能自体は Communicator 初プレビューリリース時から存在していたが、ごらんのとおり、かなり見栄えのするところまで中身ができてきた。JavaScript を利用して、キーワード検索もできるようになっている。

この NetHelp は、インストールされたディレクトリに実体の HTML ファイルが置かれており、修正すれば自分なりのヘルプを作成できる。ソフトウェアデベロッパでもなければ普通は自分では書かないであろう Windows ヘルプに比べると、経験の浅いシステム管理者でもサイトに合わせたヘルプをつくれるこのシステムは魅力的だと言える。ネットワークで共有しやすいHTMLで書けるというところもポイント。ビジュアル的にも美しいこのような実例が標準添付されていれば、その魅力に気づく管理者も増えるだろう。

オフラインモード移行時の設定画面
オフラインモード移行時の設定画面

ブラウザ本体ではないが、Communicator に統合されたニュースリーダである「Collabra」にも変化があった。オフラインニュースリーディングに対応したのだ。ダイヤルアップユーザなら、ネットニュースサーバからまとめてニュース記事をダウンロードして、電話を切ってからじっくりニュースを読むことができるようになった。まだ、オフラインモードへの移行画面などはぎこちないが…。

ダウンロードする記事数などは、「過去何日分」または「昨日分/一週間分」などとしてカンタンに設定できる。Collabra には、ニュースだけでなくメールも一元化された画面で管理できるといった特徴があるし、使い勝手も悪くない。ダイヤルアップでニュースを購読しているユーザには、とっつきやすいニュースリーダとして、初心者層を中心に今後受け入れられていくかもしれない。


 

[Java 実装の改善]

比較的大きなトピックとして挙げられるのがJava関連で、「Symantec JIT」の搭載だ。メニューから [Communicator - Java Console] を選択すると、Symantecの JIT コンパイラが動作していることを確認できる。これによって、Java アプレットを動作させたときののパフォーマンス向上が期待できる。実際、ベンチマークを行ったところ、幾分か向上が確認されたという報告もある。

注) JITコンパイラ:
Java アプレットのプログラム(バイトコード)をまとめて読み込み、一度に解釈して動くようにするシステム。ふつうにひとつひとつの命令を解釈して動作させるより速くなる。

Java 実装周りの改良点としては、アプレット中のテキスト入力領域(TextArea,TextField)において日本語の直接入力ができるようになったことも挙げられる。日本サンが同社サイトで公開している「JDK国際化機能サンプルプログラム」から動作例(AwtTextTest)を見ると、画面のように PR2 では漢字を直接入力すると化けていたものが、PR3では正常に入力できるようになっていることがわかる。リリースによると、この修正を含めて JDK 1.1 の国際化パッケージは全て取り込まれているという。

日本サン
http://www.sun.co.jp/java.jp/JDK/sample/
AwtTextTest の PR2での動作例AwtTextTest の PR3での動作例
AwtTextTest の PR2での動作例AwtTextTest の PR3での動作例

 

[これからの Communicator に望むこと]

ここで挙げられていない変更点等については、

Netscape Communications社のリリースノート;
http://home.netscape.com/eng/mozilla/4.0/relnotes/windows-4.0b3.html
を参考にしてほしい。

WWWブラウザもう一方の雄・Internet Explorer は、遅れてはいるが 4月中旬にはバージョン4 が公開されると見られている。Active Desktop という、OS 自体を飲み込むような大じかけが、WWW ブラウザ市場に大きな衝撃を与えるのはまず間違いないだろう。

そのような状況下で、迎え撃つ Communicator に必要なものは何だろうか。もち ろん、電子メーラーやネットニュースなどのモジュールの充実も必要だろう。ス ケジューラや、グループウェアとしての実用性をユーザにはっきり提示できるよ うにもしておくべきだろう。オフィスでのイントラネット市場であれば、Internet Explorer との差別化をはかれる。

しかし、同時に、一般に受け入れられつつある技術を確実にサポートする信頼性もなければ、従来からのユーザを失いかねない。こだわるようだが、CSS も市場に期待され、迎え入れられつつある技術の一つだ。期待は大きい。

 

[付記]

PR3は、環境によってはインストール直後に日本語が表示できない場合があるよ うです。以下の二点を確認してください;

ダウンロードはミラーサイトの利用を推奨します。なお PR3 の使用期限は 1997年 6月15日となっているので注意して下さい。

 

 (Reported by しおばらひろあき)

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