レビュー

EDは20通り以上。3人の死刑囚とシスターの交流を描くマルチエンドADV「キュノロドンの牢獄」

3日間にわたる施しの内容に応じて展開や後日談が変化。切なくも真摯な交流が描かれる作品

「キュノロドンの牢獄」

 「キュノロドンの牢獄」は、シスターと死刑囚の交流を描くマルチエンディング型のアドベンチャーゲーム。Windowsに対応するフリーゲームとして公開されており、“ふりーむ!”よりダウンロードできる。

 物語の主な舞台となるのは、とある領土にある“キュノロドンの牢獄”と呼ばれる牢獄。シスターである主人公のエナは、この牢獄に収容されている死刑囚に施しを授ける役目を受ける。エナが担当する囚人は、実直そうな青年クレイオス、人懐っこい少年コキノ、隻眼で飄々とした性格の男ダモンという3人。彼らに食べ物やさまざまな品を渡しながら会話するという、ささやかな交流が描かれる。

主人公のエナ。戦争で夫を亡くしシスターになった過去を持つ
実直そうだがどこか陰のある印象の青年、クレイオス
白髪と赤い瞳が印象的な少年、コキノ
飄々としているが人を寄せ付けない雰囲気も感じさせる男、ダモン

 ゲームの流れは1日1回、街で買い物をしてから牢獄へ向かい、囚人ごとに施すものを1つ選ぶといった形。3日目が終了するとエンディングとなり、それぞれの囚人と牢獄の看守、そしてエナ自身の後日談が語られる。この3日で囚人とどんな交流をしたかによって後日談の内容が変化するほか、死刑執行前に最期の言葉を交わすなど、特別なイベントが発生することもある。

街で買い物をしてから牢獄へ向かい、一人ずつ施しを行っていく

 1周目のプレイ時間は15分程度。以降はメッセージスキップ機能などの活用により、1周数分程度で周回できるだろう。囚人たち自身からその罪について聞くことができたり、その背景となる“この領土を取り巻く状況”が垣間見えるような場面もあり、各囚人の後日談はそれぞれ7通りに及ぶ。後日談の閲覧状況は“EDリスト”で確認が可能だ。

 彼らの想いや抱えているものを知りたいという物語上の興味と、どうすれば違う展開を導けるのか?というゲーム攻略的な興味が絡み合い、周回のしやすさも相まって没入度の高いプレイ感を生み出している印象。設定上、物語は重い結末が宿命付けられているが、そこへ真摯に向き合うエナが囚人たちと心を通わせるような切ない展開も見どころだ。ほかにも囚人ごとに多様な結末が描かれ、その組み合わせによりエンディング後の物語を想像する楽しみもあるなど、余韻を感じさせる作品に仕上がっている。

ソフトウェア情報

「キュノロドンの牢獄」
【著作権者】
pinetea
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7/10
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.00(17/02/11)