今回から5週に渡って、窓の杜とGAME Watchによる初の合同企画、「夏休み! ゲーム祭!!」。この企画は、「夏は思いっきりゲームを楽しみたい!」というゲームファンのために、暑い夏の季節にぴったりな新作ゲームタイトルを、わかりやすく見やすい内容で紹介していくのが目的である。GAME WatchではPCゲームを、窓の杜ではオンラインソフトをそれぞれ取り上げていく予定だ。
さて、この企画では“夏”をテーマに、毎回違ったキーワードで作品を選んでいく。夏といえば合宿。合宿といえば肝だめし。肝だめしといえば暗い夜道…というわけで、ちょっと強引だが、第1回目となる今回は“暗闇”をキーワードに2つの作品を紹介しよう。窓の杜では暗闇の中で斬りあう必殺バトルアクション「宝永噴煙禄」を、そしてGAME Watchでは、暗闇の中をたった一人でさまよう3Dアトベンチャー「アローン イン ザ ダーク ~新たなる悪夢~」を、紹介するので、2本あわせてお楽しみあれ。
【第1回】
暗闇の中で斬りあうバトルアクション
「宝永噴煙禄」
武者や忍者など、5種類の個性的キャラを選んで戦う
(01/07/27)
宝永噴火後の暗闇の世界で戦う
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「宝永噴煙禄」タイトル画面 |
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キャラクターを登録。名前を決めて、 5種類の職業から選ぶ |
「宝永噴煙禄」は、ネットワーク対戦に主眼をおいた多人数参加型のバトルアクションゲームだ。有志のグループによって企画・製作された作品で、フリーソフトとして公開されている。タイトルからも察せられるように、このゲームの舞台となるのは宝永年間、つまり江戸時代中期の日本だ。
宝永4年(1707年)に富士山で大規模な噴火が起こり、100キロ以上離れた江戸城下にも火山灰が降り積もった。空は灰で覆われ、昼間でも灯りが必要なほどだったという。当然農作物への影響も大きく、火山灰による直接の被害とその後発生した土石流によって関東一円は未曾有の飢饉に襲われたと、歴史書は記している。噴火による被害を克服し、農地を再生するまでに30年以上もかかったというから驚きだ。「宝永噴煙禄」では噴火後の暗闇の中で、キャラクター同士が互いの生存権をかけて斬りあう。回りは全部敵。しかも十分な食料すらないこの厳しい世界で、あなたは無事生き残ることができるだろうか?
移動や攻撃のバリエーションが豊富
プレイ画面は、マイキャラを後ろ上方から見下ろす形で表示される。画面左下に表示されているロウソクの長さは残りの体力、炎は余裕を示す。余裕はキャラクターの行動の柔軟さに影響を与えるパラメータで、余裕があればあるほど敵の攻撃がよけやすくなるし、万一のときのダメージも少なくてすむ。
フィールドはひどく暗く、マイキャラの周辺がなんとか見通せる程度。よほど接近しないと、敵キャラの位置すらわからない。暗闇の中をカンと記憶を頼りに移動し、出会った敵と斬りあう遭遇戦の繰り返しが、このゲームの基本となるだろう。マップは3Dで表示され、テクスチャーすらないシンプルな描写であるにもかかわらず、不思議なほどのリアリティを感じる。暗闇の中にぼんやり浮かび上がる白壁や、水辺に浮かぶ小船の描写が美しい。
操作は、キーボードとマウスを組み合わせて行う。マウスで進行方向を決め、カーソルキーで移動するといった具合。攻撃はキャラクターが装備する剣を使って行うが、飛び道具やワナも用意されている。また剣による攻撃にも突きや払いなどいくつかのバリエーションがあり、なかなか奥が深い。どこまで自由に、そして柔軟にキャラクターを操作できるかが、生死を分けるカギになるというわけだ。
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 |
プレイ画面。暗闇の中に浮かび上がる建物が不気味だ |
骸骨兵に遭遇。同時に2体を相手にするのは避け、各個撃破がセオリー |
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ロウソクが燃え尽きてしまうと、その時点でキャラクターは死亡する |
薙刀を背負った僧兵。間合いをつかむのが難しいが、中距離での攻撃力はバツグン |
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武士。バランスがよく、剣はもちろん弓を使わせてもソツがない |
忍者。手裏剣のほか、爆炎玉・火炎玉などの飛び道具を使う |
5種類のキャラクターから好みのものを選ぶ
「宝永噴煙禄」には現在、5種類の職業の異なるキャラクターが用意されており、その中からどれを選ぶかによって戦いかたは大きく変わる。以下がその種類と特徴だ。
武者: |
野太刀を使って戦う接近戦用のキャラクター。防御力、攻撃力ともに最強だが、移動速度と敏捷性に劣る。抜刀勝負に持ち込めば存分にその実力を発揮し、逆に遠距離から弓で狙われると意外に弱い。 |
武士: |
敏捷性、防御力、攻撃力ともにバランスのいいキャラクター。剣だけでなく弓を使った攻撃にも長け、近づいてよし離れてよしの万能タイプ。逆にその個性のなさが欠点でもあるのだが、プレイヤーの操作次第で強さが決まるといえるかもしれない。 |
忍者罠: |
移動速度が速く操作が快適。しかし防御力は最低で、ちょっと攻撃されるとすぐに倒れてしまう。敵との間合いを読み、手裏剣・爆炎玉・火炎玉などの飛び道具を使いこなせるかどうかポイントとなるだろう。 |
武者: |
前述の忍者と変わらないが、巻き菱・仕掛爆・煙幕玉など、ちょっとクセのある武器を使う。ワナを仕掛けて敵をはめることもできるが、そのぶん直接戦闘に弱く、支援的正確が強い。またローカルルールでワナの使用を禁じたマルチプレイセッションも多く、現状では選びにくいかも。 |
僧兵: |
薙刀(なぎなた)を装備した中距離戦向きのキャラクター。移動速度、防御力、攻撃力のバランスもよく、初心者でも戦いやすい。ただし懐に飛び込まれてしまうとなす術がなく、そのままいいように斬られてしまうこともある。 |
筆者ははじめ武者を使っていたが、現在のお気に入りは僧兵だ。十分間合いを取り、
敵がにじり寄ったところで強烈な縦斬りを喰らわせる戦法を使っている。しかし僧兵
を含めて、登場するキャラクターにはそれぞれ弱点があり、どれが一番という結論は
出せない。各自の戦い方によって変わるだろうし、チーム戦で戦う場合は互いにカバー
しあうことも重要だ。
マルチプレイモードで存分に戦う
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「IGM」の噴煙禄チャットには、平日の深夜でも20~30人が集まる |
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マルチプレイに参加するための接続方法を選ぶ。普通はTCP/IPだ |
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自分がホストとなる場合は、利用するマップを指定する |
このゲームには“シングルプレイ”モードと“マルチプレイ”モードの2種類があるが、シングルプレイモードのほうはあくまでも練習用だ。コンピューターが操るキャラクターや固定の的を相手に、戦い方や間合いを覚えるために使う。…とはいっても、基本的な操作をマスターできていなければとても“マルチプレイ”で生き残ることは無理なので、まずはシングルプレイモードでじっくり練習するところから始めよう。
マルチプレイモードでは、誰かが開いたセッションに参加することによって、もしくは自分自身が開いたセッションに参加者を招くことによって、複数のキャラクターと真剣勝負を楽しむことができる。他者を倒すと金銭が2プラスされ、先に10溜めたプレイヤーの勝利。バトルロイヤル的な戦いのほかに、青軍と白軍に分かれて戦う“陣取りチーム戦モード”を行うことも可能だ。
なお、マルチプレイモードでの対戦相手は、オンラインゲーム用のコミュニケーションサーバー「Internet Game Maker」(通称はIGM)上に開かれた「宝永噴煙禄」用のチャットルームで見つけることができる。「IGM」の使い方については、下記ホームページを参照のこと。
□Internet Game Maker
http://igm.ne.jp/
アクション+戦術の妙を楽しむ
暗闇の中で斬りあう殺伐とした内容だが、思っていたよりもずっと奥が深く、また戦術が求められるゲームだった。たしかにキャラクターを操るスキルで生死が決まるのは事実だが、それだけではない。5種類の中からどのキャラクターを選ぶか。敵の位置や行動を、どこまで先読みできるか。複数のキャラクターが入り乱れて戦う中で、いつ誰を相手に戦闘を仕掛けるか。こうした点がとても重要であることがよくわかった。
また、こうした「きちんと遊べる作品」がネットワーク上の有志によって作られ、フリーソフトとして公開されている点についても驚きを感じる。作者ホームページによれば、「宝永噴煙禄」は今後さらに多くの要素を取り込み、食糧危機とサバイバルをテーマにした作品を目指して開発を続けるとのこと。一プレイヤーとして、今後の展開に期待したい。
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城郭合戦に白軍で参戦。敵陣の巻き物を取ったほうが勝ち |
【著作権者】するめ 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】0.965a(01/07/15)
【ファイルサイズ】3.77MB
【対応OS】Windows 98/Me(DirectX 5以上)
□するめ御品書き
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Darts/6388/
□窓の杜 - 宝永噴煙禄
http://www.forest.impress.co.jp/library/hoeifunenroku.html
(駒沢 丈治)