ふと気がつくと、8月ももう下旬。お盆休みが終わり、甲子園の決勝戦が過ぎると、なんだかちょっと寂しい気分になる。子供の頃は、この時期が1年で一番嫌いだった。夏休みも残り1週間しかないというのに、宿題はまだ山積みのまま。「このまま、あと1カ月ぐらい休みが続けばいいのに」なんてせつない思いをしながら、ドリルを開くのが苦痛だった。大人になってうれしいことのひとつは、夏休みの宿題がなくなったことだけど、「夏休み」そのものもなくなっちゃったなぁ。
さて、今回は「ニッポンらしい夏」をテーマに、妖怪ネタで2作品を選んでみた。こちら窓の杜では、横スクロール型の妖怪アクション「退魔心経」を。GAME Watchでは、水木しげる氏描きおろしの花札で楽しむ「妖怪花あそび」を楽しんでみよう。
【第4回】
妖怪退治アクションRPG「退魔心経」
数珠を片手に妖怪退治、和尚の冒険は続く
(01/08/24)
ミッションクリア型のアクションRPG
民俗学者の柳田国男が記した『妖怪談義』によれば、妖怪とは自然への畏怖の現れであるそうだ。怪物というよりはむしろ神に近い存在で、恐怖と同時に信仰の対象でもあったらしい。そのあたりが「怖い」と「親しみやすい」が入り混じる、日本独特の妖怪感につながっているのだという。…いや、どうしてこんな話から書き始めてしまったのかというと、しばらくプレイしているうちに、「退魔心経」が『妖怪談義』をベースにデザインされたゲームではないかと感じたからだ。水木しげる氏が描く世界と重なりつつも、また一味違う、「零落した神々」「荒ぶる神々」としての妖怪たちが登場する。
話が前後してしまったが、「退魔心経」は与えられた使命を果たしながら進むミッションクリア型のRPGで、現在は5本のシナリオが公開中だ。さらに3話が製作中、もしくは検討中とのこと。Windows 95/98/Me/2000でプレイできるが、動作には「クリック&クリエイト」のランタイム版が必要となり、ゲーム本体とランタイムのどちらも、作者のホームページからダウンロードすることができる。
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タイトル画面 |
旅の和尚“王道”が主人公。数珠と念力棒で妖怪と戦う |
キャラを育てながらプレイする楽しみ
ゲームを起動し、会社名とプレイヤー名を登録したら、まず最初に行わねばならないのが、部下の雇用と資金調達。部下というのは管理職のことで、社長であるあなたの命令に従って、土地の購入や建築の陣頭指揮を取る。このゲームでは部下の数だけ命令を与えることができるので、最低でも一人は雇用しなければならない。一方、資金というのは資本金のこと。経営が軌道に乗るまでの運転資金として使われる。返済義務はないので多ければ多いほど好ましく、どれだけ資金を調達できたかによってゲームの流れは大きく変わってしまう。“会社設立準備期間”の間に、できる限り優秀な部下と多くの資金を集められるよう、行動を指示しなければならない。
では、さっそくゲームを始めてみよう。「退魔心経」は、上下の移動もあるものの、基本的には横スクロール型のアクションだ。画面全体のデザインは、なんとなくナムコの「源平闘魔伝」(ちょっと古いか?)を思い出させる。しかし「退魔心経」は単なるアクションゲームではなく、キャラの成長を取り入れた点がおもしろい。戦闘を繰り返すたびに経験値と所持金が手に入るようになっていて、これを使って生命力や攻撃力をアップさせることができるのだ。冒険を繰り返しながら少しずつキャラを育て、より難度の高いシナリオに挑戦できるようになっている。
操作はキーボードを使って行う。キャラの移動はカーソルキー、法術を使った遠隔攻撃は[Shift]キー、念力棒を使った接近攻撃は[Ctrl]キー。ちょっとクセのある配置だが、必要ならカスタマイズすることもできる。もし持っているのなら、ぜひゲームパッドを使ってプレイしてほしい。
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現在は5話まで公開中。第1話「風の声」から始めよう |
隣村との間にある草原で聞こえる、「目が痛い…」という不気味な声 |
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荒谷村で準備を整え、いざ退魔の旅へ!! |
突然“泥田坊”に出くわした。動きは遅いが、慎重に戦おう |
妖怪“がしゃどくろ”を倒せ!!
ゲームの主人公は、“王道”と名乗る旅の和尚。たまたま寄った村“荒谷村(こうやそん)”で魔物の話を聞き、その退治に向かう。最初のシナリオ「風の声」は、隣村との間にある草原で聞こえる「目が痛い…目が痛い…」という不気味な声の主を暴くこと。スタート直後は所持金、経験値ともに少ないのでキャラのパワーアップは難しいが、とりあえず村の茶屋で“薬草(生命力の回復)”と“きのこ(解毒)”を仕入れておこう。
冒険が始まったら、画面の右方向に向かって進む。妖怪に出くわしたら、[Shift]キーと[Ctrl]キーを使って攻撃だ。このシナリオには、“から傘”“泥田坊”“あみきり”などが現れるが、どの妖怪もそれほど強くない。敵の攻撃を避けながら、落ち着いて戦おう。「風の声」には何カ所か仕掛けが用意されていて、その謎を解かないと先へ進むことができない。せっかくの謎解きをつまらなくしてはまずいのでネタバレは避けるが、もし行き詰まってしまったら無理に留まらずに、いったん引き返してみるといいだろう。
必要な条件を全て満たし、最後に王道を待ち受ける妖怪“がしゃどくろ”を倒せば、無事シナリオクリア。所持金と経験値がたっぷり手に入るので、生命力や数珠の攻撃力をアップさせて次のシナリオに備えよう。
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空中を跳ね回りながら攻撃してくる“から傘”。止まったところを一気に叩け |
洞窟の中で待ち伏せする“あみきり”。相手の死角に入って攻撃だ |
雰囲気たっぷりの映像と効果音
ある程度の経験値を手に入れ、所持金も豊富になってくると、様々な選択肢が広がるところも「退魔心経」のおもしろいところ。たとえば、法術に使う数珠と接近戦に使う念力棒のどちらを優先してパワーアップするか? 生命力と精神力のどちらを優先して修行するか? 装備できる法術の巻物も選ぶことができるので、戦術のバリエーションは結構広い。ただ闇雲にパワーアップするのではなく、自分にとってベストな成長や戦い方を考えなければならないというわけだ。
映像や効果音にも味わいを感じる。かすかに聴こえる、風の音や蛙の声。ときおり「チリン…」と響く風鈴の音。ゲーム中で使われている写真は、どこかの観光地で撮られたものなのだろうか? ひなびた雰囲気がこの作品によくマッチしている。画面いっぱいに描かれた、妖怪“がしゃどくろ”の姿も迫力があった。
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妖怪“がしゃどくろ”。頭の部分に攻撃を集中させよう |
横スクロールアクションとRPGの「いいとこどり」
最初は撃って撃って撃ちまくればいい横スクロール型のアクションゲームかと思っていたのだが、さにあらず。周到にデザインされたRPGであることがわかって、すっかりはまってしまっている。落ち着いて考えないと解けない謎や、仕掛けが凝らされているマップが楽しい。しばらく悩んでいるうちに「あ、そうか!!」と解決できてしまう、ほどよい難しさが心地よい。横スクロールアクションとRPGの「いいとこどり」といった感じで、両者の優れたところがうまくミックスされた作品だ。「難しいゲームは苦手」という人でも、気楽に楽しんでもらえると思う。
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シナリオをクリアしたら、道具屋で数珠と念力棒をパワーアップ |
第2話「悲しき沼の荒神」には、“ぬりかべ”や“一反もめん”が登場する |
【著作権者】荒谷 裕己 氏
【ソフト種別】フリーソフト
【バージョン】3.6(01/06/27)
【ファイルサイズ】2.48MB
【対応OS】Windows 95/98/Me/2000
□Musaion~Arayan'sHomePage~
http://www.tk.xaxon.ne.jp/~arayan/
□窓の杜 - 退魔心経
http://www.forest.impress.co.jp/library/taimashingyo.html
(駒沢 丈治)